学生時代、はじめて美術の便覧で見た時にどうしようもない位に惹かれた…という人は多くいるのではないでしょうか。
オーブリー・ヴィンセント・ビアズリー
25歳という若さでこの世を去ったイギリスの若き天才画家。
悪魔的な鋭さを持つ白と黒のペン画で鬼才と謳われた、とwikiにはありますがまさにその通りであると感じます。
ビアズリーは絵画だけでなく、音楽の天才とも言われており彼がもっと生きながらえたらどれだけの作品、芸術をこの世に生み出す事ができたであろう…と惜しくもあります。
そんなビアズリーの代表作ともいえるのが、オスカー・ワイルド作「サロメ」の挿絵です。
私はこのサロメの、ヨナカーンの首を切り落として盆に乗せられているものを掴み上げるサロメの絵を見て、なんて凄い絵を描くのだろう!と子供心に強い衝撃を覚えた事を記憶しています。
これまで絵画といえば、色があるのが当たり前でどんな名画にも必ずそこの色彩がありました。しかしビアズリーの作品は細かな線がまるでテキスタイルパターンの様に緻密かつ美しく描かれており、見る人をただただ圧倒します。
そして彼の絵には麻薬のような力があるのだと思わずにはいられません。
彼の絵を見て、かのウィリアム・モリスが剽窃呼ばわりをしたという経緯があるそうですが、あれだけ著名なモリスにそう言わしめたのはある意味凄い事ではないかと思うのです。
前振りが長くなってしまいましたが、そんな天才ビアズリーが挿絵を手がけた「サロメ」を元に、実はサロメにはこんな逸話があったのでは??という話を書かれたのが原田マハ先生の「サロメ」です
「サロメ」原田マハ:著
子供の頃から病弱な青年だったオーブリー・ビアズリーは、イギリスの作家で男色家のオスカー・ワイルドにその才を見いだされ、『サロメ』の挿絵で有名画家になります。
そのオーブリーと彼の姉であり駆け出しの女優であるメイベルのビアズリー姉弟は、ワイルドとその恋人アルフレッドを巻き込み四つ巴の愛憎関係に発展します…
面白すぎて一気に一日で読了してしまいました。
読みやすく、さらにあのサロメの裏側にこんな秘話があったのなら?!というIFが実話のような説得力と存在力があり、夢中で読みふけりました。
そしてやはりビアズリーの作品は「蠱惑的である」この言葉以上にしっくりくる形容詞が見つかりません。見るものに至っては刺激が強すぎるような、しかし見る事をやめるという選択はできない…そんな天才の秘め事が書かれた一冊でした。
おしまい
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