いかに揚げるのは、もう二十年以上も前に書いた詩だ。わたしはこれを、今までに書いたものでは一番出来が良いと思っている。このブログにまだ揚げていないと思うので、ここに収めておきます。

  スサノオ賛歌-長歌風

   三森至樹

 黄泉の神、闇の神。
 わだつみ知らす
 海の神。
 スサノオノミコトよ、汝(な)がために
 凶事(まがごと)さわに
 四方(よも)に災いありとし言えど。

 荒ぶる神、荒らす神。
 叢雲(むらくも)佩ける
 雷(いかづち)の神。
 スサノオノミコトよ、汝がために
 日の神隠れ
 常夜(とこよ)往き
 凶事さわに
 四方に災いありとし言えど。

 語り伝えたる物語は嘘。
 まことは、

 と預言者の媼(おうな)語りき。

 まことは、
 スサノオノミコト
 悪鬼・悪神・悪魔にたばかられて
 罪を問われ
 千位(ちくら)の置戸(おきど)を負いて
 黄泉の国に閉じ込められたり。
 そのときよりこのかた
 凶事さわに
 四方に災い起こりて
 偽りと暗がり多き世とはなれり。

 積もり積もれる罪穢れに
 大地はもはや堪えず
 血の叫びは
 全天に満つ。

 時は今ぞ。時は今ぞ。
 スサノオノミコトよみがえり
 悪鬼・悪神・悪魔を退治て
 大本のすがしき世に還すは今ぞ。

 三千世界。一度に開く梅の花。
 スサノオノミコト黄泉より還りて
 この世を立て替え立て直す
 その時は今ぞ。

 かく預言者の媼(おうな)宣(の)りてより
 はや幾年ぞ。

 嗚呼(ああ)
 鬼神はいまだよみがえらず
 物語はいまだ隠れたり。

 (反歌)

 むらくもはわだつみ覆いとよめども
 雨はいまだし風はさやげど