歌舞伎座で團十郎の幡随長兵衛 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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歌舞伎座の團菊祭、昼の部のキリは、「極付幡随長兵衛」です。

音羽屋中心だったり、團十郎の襲名が延期したりで、変則的だった團菊祭に、やっと役者が揃いました。

 

重厚な吉右衛門と、人間臭い先代團十郎の印象が強い、この演目。 久しぶりに観る当代は、どうなのか。

 

その前に、劇中劇の「公平法問諍」です。 江戸は村山座での、合戦の菩提と念仏の功力を巡る芝居。

市蔵、吉弥、玉太郎などが揃い、これだけ独立して観てみたいような芝居。 大薩摩と附打も揃います。

 

そこに、酒に酔って暴れ込む白柄組の中間、それをなだめる舞台番、収まったはずが公平の末裔が乱入。

いつの間にか、客席から長兵衛の登場。 3階席から見えなくても、客席がざわつくので、わかります。

 

ご見物のお客様のご迷惑にならねえよう、お静にねげえやす。 おお、この声量と目力、そうして存在感。

大きな器量を感じる團十郎。 騒ぎの遺恨を長兵衛に告げる、菊之助の水野十郎左衛門。 いい場面です。

 

二幕目は、花川戸長兵衛内の場。 子分に、歌昇、右近、廣松、男寅、鷹之資、莟玉、蔦之助が揃う新鮮さ。

役者の個性が分かりにくいのが、もったいないところ。 出尻をすっかりお役にした、男女蔵はいつもながら。

 

出で圧倒されながら、慣れてくると同じ調子が気になる團十郎。 ここは、死を覚悟で水野邸に出向く場面。

女房、倅、子分とのやり取りが、少し平坦。 右團次の唐犬とも空回り気味。 ちょっと微妙な場です。

 

これが、水野邸座敷の場になると、ぐっとこらえた感情と、湯殿で覚悟を露わにするところが、しっくりする。

上から目線の白柄組に、礼節を守りながら、剣術でやり込めるところは見事。 團十郎の沈着さがいい。

 

そうして、「湯殿の長兵衛」と言われる名場面。 姑息に襲い掛かる手下を、柔術であしらう團十郎の技。

長兵衛を殺す菊之助の水野は、あくまでクール。 これで團菊が揃って、次の時代が見えました。