神尾真由子のサラサーテに技と情 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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ロームシアター京都での、ロームミュージックフェスティバル。

今日は、神尾真由子のヴァイオリン名曲選に行ってきました。

 

お聞きするのは、8年前のチャイコフスキー以来。

肩にぐっと力を入れて、技を惜しみなく披露しながら、クールな情がある人。 聞く方も気合が必要。

 

ピアノは安定した田村響で、まずはガーシュインの「ポーギーとベス」から。

ムード音楽らしさを期待していたら、「サマータイム」でフリーっぽいアルペジオをピアノが繰り出す。

 

そこに、自由にメロディーを奏で始めるヴァイオリン。 あらら、別々の演奏を重ねて聞いているよう。

これがハイフェッツ編曲の特徴。 「そんなことはどうでもいいさ」と突き放されて、「ブルースのテンポで」波長が合って来る。

 

ここから、サラサーテが続きます。 まずは、「スペイン舞曲集」とは、浮き浮きしながらも隠し味がありそう。

ヴァイオリンが、超絶技巧で華麗なメロディを紡ぎ、ピアノが控えめにスペースを埋める。

 

おお、これこれ。 マルゲーニャ、ハバネラと陽気な曲が続きながらも、深い醒めた情がある重厚さ。

これが神尾真由子の特徴。 能天気な明るさは控えめで、技に流されない楽器の響きが心地いい。

 

次の「カルメン幻想曲」も、同じように。 スペインのからっとした陽気な悲劇が、湿り気ある神尾ワールドに。

今日は、これが私よという曲を、自分で選んだよう。 こんな、コンサートもいいかも。

 

締めの「ツィゴイネルワイゼン」は、自由奔放に技巧を出しながら、そこに旋律に秘めた意味を浮き彫りにする。

これには、サラサーテも満足か。 楽譜を忠実にたどりながら、その隙間にある詩を奏でているよう。

 

アンコールは、ポンセの「小さな星」。 ああ、ここで肩の力が抜けて、頬がゆるんでいるのに気づきました。