国立文楽劇場に一条戻り橋の鬼女 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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国立文楽劇場での、開場40周年記念の文楽公演。 いよいよ、第三部のキリで「増補大江山」です。

人気の「酒呑童子」ものをベースにした、常磐津舞踊「戻橋」を、黙阿弥が文楽にうつした作。

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「去んゆる頃より洛中へ、悪鬼現れ人を取り、夜は行き来の人もなし」

災いをなす悪鬼を退治しようと、一条戻り橋にやってたのは、渡辺綱。 お供は、右源太と左源太。

 

いかにも怪しげな雰囲気ですが、コンパクトな文楽の劇場では、少し迫力不足かも。

そこは、綱を遣う玉助が、存在感たっぷりに見せる。 右源太と左源太は、玉誉と簑太郎。

 

「今宵の空の定めなく、降らぬうちにと思へども、ここは一条戻り橋」

そこに、夜道を一人で歩いてくる、若い女。 ここから五条まで行くって、もうあり得ないシチュエーション。

 

ほなわしが送っていこか、よろしゅうたのんます、とは言いませんが、その若菜を送っていく綱。

どろどろどろ。 と、川面に映る、悪鬼の姿。 ムゝ今、水中に映りし影は、、、エゝ、、、

 

若菜のかしらは、角出しのガブ。 ちらっと見える正体が、こわい、こわい。 遣う一輔が、しっかりと。

ここから、文楽ならではの舞台転換。 下手から上手に橋が動いて、月明かりの野原へと。

 

「それがしは未だ舞を見たることなし、一差し舞を見せられまいか」、「拙き業とお叱りはたゞ幾重にも」

夜の野原の真ん中で、舞を披露する若菜。 妻になってほしいと口説く、綱。 またまたありえないシチュエーション。

 

「見目よき女に化するとも、その本性は悪鬼ならん」、「我が隠れ家へ連れ行きて引き裂きくれん」

綱に詰め寄られて、悪鬼の姿を現す若菜。 せっかく、優雅な舞でいい雰囲気だったのに、もったいない。

 

それはともかく、祠の後ろに隠れての、鬼女の姿での早替りはみごと。 二人の立廻りもみごと。

黒雲を幕に見立てて、その隙間で鬼女の片腕が吹っ飛ぶ演出。 アクロバティックさはなくても、みごと。

 

織太夫、靖太夫、咲寿太夫、薫太夫の4人が掛け合い、三味線に八雲琴が入って、大盛り上がりでした。