南座で右近と壱太郎の河庄 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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今年で4年目になった、南座での三月花形歌舞伎に行ってきました。

今回は、近松門左衛門歿後300年にあたり、「河庄」と「女殺油地獄」が上演されます。

 

若手が工夫を凝らして大作に挑み、上方役者がそれを支える。 これは、先月の大阪松竹座と重なる趣向。

そうなると、「曽根崎心中」と同じく、「河庄」の右近と壱太郎による相乗効果に、わくわくします。

 

まずは、仲居の折乃助と翫之、芸妓の千太郎の世間話で、雰囲気が曽根崎の色町になるところから。

そこに、丁稚の吉太朗。 虎之介によく似て、ませた大きな声の演じ方。 今は、色々こなしていい。

 

すっと出てきた紀の国屋小春は、壱太郎。 お初から大人の色気を増して、自分なりの型を工夫している。

それをサポートするのが、音羽屋から参加の菊三呂。 自然な上方味のお庄が、昆布出汁のように滋味深い。

 

小春の客の侍には、隼人。 酸いも甘いも嚙み分けないと、まだまだ手ごわいお役が、ちょっとぎごちない。

太兵衛と善六は、千次郎と千壽。 堅実ながら真面目さが目立って、もったいない使われ方かも。

 

そんな中に、治兵衛の右近が花道からやってくる。 3階から、はよ来いよと言いたくなるくらい、時間をかける。

 

頬かむりのさま、着物の乱れ、おぼつかない足取りと脱げた草履。 これが、舞のように見えてくる面白さ。

しっかりした下半身で、内面に集中させる演じぶり。 端正な顔に、魂の抜けた表情がアンバランス。

 

東西を問わず、好きな役に挑みたいとは、意欲的。 鴈治郎に教わりながら、自分の治兵衛を探っている。

得心したようで、すぐカッとなったり、しょんぼりしながら、急にとびかかったり。 治兵衛の性格がクリア。

 

大阪松竹座でも感じたこと。 アクセントにこだわらなくても、上方言葉のリズム感がしっかり出ています。

小春の客の侍が兄の孫右衛門とわかってからの、一人語りは聴きどころ。 受ける隼人が、すっかりほぐれている。

 

まあ座り、わてにも言わせて、ほんまにええんやな、すっぱりあきらめました、ほないにましょか。。。

アドリブ気味のやりとりに、急に東京の現代ことばが混ざったりして、この鷹揚さが上方狂言の良さ。

 

二人に比べて、動きが少なくじっと耐えているのが、小春の壱太郎。 微妙に細かな動きは、しっかり観たい。

真実を隠して、治兵衛の家を守るいじらしさに味わい。 花形3人の良さが出た、いい「河庄」でした。