浪曲名人会に新風と伝統が | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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国立文楽劇場での浪曲名人会の続き、後半はいよいよ立体掛合浪曲で、「安珍清姫」です。

ん、それって何なん? ご安心を。 若手4人が台本を読み分け、演台を置かずに立って口演。

 

これが、掛合と立体。 幸枝若が演じた台本を、幸太がアレンジ。 幸乃、幸太、すみれ、麻衣と並びます。

順に、節と啖呵を担当する趣向。 まずは、雲月の弟子で行儀のいいすみれが、才女らしい語り。

 

恵まれた体躯からの爽やかな声との幸乃は、柔軟さが目立つ。 小柄な麻衣は、三原家伝統の情が魅力。

全体を仕切るのは幸太。 背景がくるくる入れ替わる演出の中、初月と初雪に乗って、道成寺の鐘まで進みました。

 

次は、月子、すみれなどの弟子はもちろん、東西の若手を隔てなく育てているビッグママ、天中軒雲月。

今日は喉の調子が、と言いながら、「中山安兵衛婿入り」をていねいに語る。 高田の馬場の後日談です。

 

仇討ちの際の縁で、堀部家に婿養子に行くことになった安兵衛。 中山家再興のため、呑んだくれて離縁を図る。

それを承知で、婿を信じる弥兵衛。 ぴりぴりしそうな筋を、ゆったり大きく、笑顔で語る雲月に聴きほれます。

 

ぐれかけた安兵衛も、やっと居場所を見つける。 まかせて安心の雲月に、身を委ねる気持ちよさ。

曲師は、関西初お目見えの沢村博喜。 琵琶法師風の容姿で、安定した音程とリズムで支えてくれました。

 

トリは、京山幸枝若。 朝はよから来て、4時過ぎにやっと出番。 しんどなったら、途中でやめます。

とは、いつものつかみ。 ちょうど時間となりました、までたっぷり、お願いします。 大入り満員の客席もしゃきっ。

 

今日は、得意の任侠ものながら、国定忠治話から、河内弁を封印しての「忠治と火の車お萬」。

病み上がりで、侠客姿を隠して年始挨拶に出かけた忠治。 偏屈屋との看板を見かけて、床屋に入る。

 

ひげ剃ってもらってよろしいか。 客やったらそれらしゅうせんかい。 下手に出て断られ、出直す忠治。

忠治は関東ことばなのに、へんこつの床屋のおっさんがばりばりの河内弁。 このアンバランスが幸枝若の味。

 

そこにやって来た女侠客の、火の車お萬。 器量を見極めたろうと、忠治が乗り込んだ賭場で、いかさま破り。

やんわりした忠治が、突然のすごみ。 対するお萬の器量。 これぞ名人、幸枝若。 ちょうど時間となりました。