南座の花形歌舞伎で若手がきらり | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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南座の三月花形歌舞伎、「仮名手本忠臣蔵」の変則通しは、六段目です。

 

ここでも、注目は右近の勘平。

おかるが身売りするどたばたの中、帰ってきてから、江戸式で浅葱色の紋服に着替える、すっきり感。

 

大小を揃えながら、おかるの身売りを察してうろたえる。 猟師に身を落としながらも、討ち入りに加わることを願う。

そこに生まれる、悲劇。 殺した旅人が舅と知った時の驚き、おかるとおかやへの申し訳なさ。

 

ずっと座りながら、肩と首の動き、微妙な表情の変化、途切れる言葉に、音羽屋の型と右近の工夫が出ています。

じっと耐えたあとの、おかるとの別れ。 絶望の果ての自害と開放。 姿勢が崩れない右近の演技が、印象的です。

 

おかるの莟玉は、清潔な色気。 一文字屋お才は、ちょっと変な京ことばながら、壱太郎がていねい。

母おかやは、音羽屋ベテランの菊三呂が、くどいくらいの演技。 判人源六の荒五郎が、ガラガラ声のいい味。

 

舞台を裁く、数右衛門と弥五郎には、ベテランの吉之丞と、はつらつとした鷹之資。 これは、いいコンビ。

ちょっとふらふらしながらも、見どころいっぱいの、花形による五段目と六段目でした。

 

次は、七段目から十一段目までの名場面を、舞踊で楽しめる趣向の新作。 場所は、山科の大石神社。

芸者の壱太郎、幇間の右近、茶屋娘の千之助らが、男女入れ替わりで由良之助、おかる、平右衛門を演じます。

 

賑やかな総踊りでひとまず幕となり、花道で壱太郎と右近がじゃれ合ったあとは、「雪の討ち入り」。

ここでは、鷹之資と莟玉の達引が見どころ。 莟玉がやや苦しそうながら、同じ体格の二人がシンクロしています。

 

で、大団円。 壱太郎、右近、莟玉、千之助、鷹之資が揃っての、今日はこれギリ。

松岡亮の脚本に沿って、それぞれの家の型を見せながら、若手の魅力を感じさせてくれました。