国立劇場に二つの小宇宙 | 宗方玲・詩人が語る京都と歌舞伎

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東京での仕事の合間に、国立劇場に行きました。

 

「二つの小宇宙 めぐりあう今」との、特別企画公演です。

伝統と現代、音と身体、歌舞伎と文楽、コンポラダンスと声明などが出会う、一期一会の舞台です。

 

 

いつもながら、国立ならではの大上段ですが、とにかく楽しんでみましょう。

第一部は、「変化と人間と 羽衣伝説」です。 能「羽衣」を題材に、出会いはそこにあるんか?

 

薄暗い舞台の上手に、雅楽演奏集団の、神々楽伎座の面々。

中央には、勅使河原茜の広がりある、いけばなオブジェ。 その上に、武田双雲の、豪快な「不二」の書。

 

これは、いい設定です。 何が始まるのか、わくわくします。

「阿知女 おおおお」、「隠されし衣 得たれば 今ぞ帰らん」。 そこに、透明な歌声が流れてきます。

 

作・演出は、大和田文雄。 詞章には、能、風土記、御神楽、朗詠などを使ったとか。

更に、そこに雅楽演奏家の、東野珠美の詞が。 音で語ることで、「響きの羽衣」を織り上げたんですね。

 

なるほど。 雅楽、いけばな、書、詞章などが、共に響きあい、織り上げられた美を感じます。

 

「天の原 振りさけ見れば 霞立ち 家路まどひて 行方知らずも」

いけばなの陰から、すっと現れたのが、雀右衛門の天女。 主役なのに、浮き上がらないような演技。

 

「柔らかきこと 軽きこと 言ふべからざる 織女の機のものか」

もう一人の主役は、伯龍。 これが、なんと吉田玉男による、文楽人形。 首は、前髪のある若男。

 

この二人が、舞台と両花道を、音楽に合わせて行き来する。 振付の花柳源九郎の、アイデアがいい。

どちらが人で、どちらが人形か。 二人が役割を果たし、舞台の一部になっているのが、この演出の特徴。

 

 

「げに妙なるおがたまの 鈴の音清か笛の音は 籠の内に鳴く 夜の鶴」

美しい日本語にうっとしりているうち、天女と伯龍が舞い納めました。