我が家の日常 | Multiplex world

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頭の上で何かが鳴いている・・・・。いや、正確にははやし立てている。

頭に響く甲高い電子音は、まどろむ意識を早く現実世界へシフトさせろと言っているようだ。それも命令形で・・・。

だが俺はそんな命令に屈するほどのお人よしでもなければ聖者でもない。どちらかと言えばロックな魂を受け継いだ漢だ。そんな生易しい命令には断じて屈しない。屈してやるものか。

俺は俺の意思を貫く。誰にも邪魔はさせない。現代社会に翻弄され、ただ言われるがままに生きていくような人生なんてまっぴら御免だ。

そう・・・。これは戦いなのだ。現代社会へ反旗を翻し、我が夢の園を。約束されし楽園を取り返すための聖戦なのだ!

未だに鳴き続ける「ヤツ」の生命活動を止めるべく、俺は重く鈍い腕を高々と振り上げる。

あとはこの腕を重力に任せて振り下ろすだけ。簡単な事だ。それで「ヤツ」の生命活動を完全に。完膚なきまでに止めることが出来る。


ゴスッ


鈍い音と共に、辺りには再び静寂が取り戻された。

振り下ろされた俺の腕は、さながら死神の鎌とでも言うべきか。あの耳障りな音で鳴いていた「ヤツ」の命を刈り取った。

勝った・・・。なんとも呆気ない最後だ。後に残るのは空しさだけ。戦いの後と言うものは決まってこうなのだ・・・。

しかし、俺は勝ち取ったのだ。我が夢の園を。約束されし楽園を!

その優越感と、達成感。そして俺の身を包み込む暖かな温もりに意識を沈め、どこまでも深く潜っていくのだ。

これを至福と言わずになんと言うだろうか・・・・・


「そうは問屋が卸しません」


・・・・・・俺が勝ち取った楽園は、たった一歩踏み出した所で無慈悲にも略奪された。布団とともに・・・・


「さよなら・・。僕の楽園(エデン)」


俺は楽園に最後の別れを告げた。・・・素っ裸にされたミノムシのように丸まりながら。

あぁ・・・。子供の頃に遊び半分でミノムシの衣を剥いだ俺に対する罰なんだろうかコレは?

ミノムシさん・・・・ごめん。


「そんな安上がりな楽園に身を溺れさすな若者よ」


「そうは仰いますが空(そら)さん」


「はいはい。なんですか優風(ゆう)さん?」


「僕達から夢や希望。そして楽園までもを奪い去った現代社会が、なんの保障や対策も行わずにただ放置しているだけのこんなご時世に、生きる意味や自分の存在価値を見出せないままで居る若者が、身近にあるほんのささやかな楽園に没落するのを咎める権利を、誰が有しているというのであろうか?」


「布団の次は身包みを剥がれたいようですね。優風さん」


「犯されるぅ~」


ビスッ!


鈍い音が聞こえたのと同時に、額がジンジンと痛み出す。どうやら空さんお得意のデコピンを食らった模様・・・。


「莫迦な論争はこれにて閉幕。ほら、早く起きなさい。着替えに洗顔。朝食に学校の準備。急がないと遅刻しちゃうぞ優風ちゃん」


「ヤー(了解)」



我が家の空さん。分類で言うところの俺の姉貴。

現在親が居ない我が家では親代わりも勤める唯一頭の上がらない存在である。

さっきみたいな御ふざけの時は例外として、俺は「姉ちゃん」と呼んでいる。いや、「呼ばされている」と言うべきだろう。

この歳にもなって姉の事を「姉ちゃん」と呼ぶのには抵抗がある。しかしそう呼ぶのには理由があった。

中学に入ってすぐの頃だったか。俺は一度だけ「姉ちゃん」ではなく「姉貴」と呼んだ事があった。

そしたら姉貴は激怒した。つーより泣かれた。号泣だった・・・・。

『優風ちゃんが不良になったぁーっ!』と・・・・。

呼び方を変えたくらいで不良あつかいされたのは心外であったが、泣かれるのは困るので結局は元の鞘に収まる形となった。

まぁしかし。俺にも一応意地というものがあるわけで、心の中でだけは姉貴と呼んでいる。・・・・我が事ながら情けなさ大爆発だ。

そんな我が家の空さん。我が麗しき姉貴がどういう人物かというと・・・・・


「優風ちゃん。朝ごはん出来たよー!」


まぁ、それはおいおい語るという事で・・・・・・




発作的に何書いてるんだろう俺・・・・

どうしよコレ_| ̄|◯