【店長のうんちくコラム その12・コーヒーの価格上昇について part2】 | 丸市珈琲~銀座駅前の隠れ家カフェ~

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おしゃべり好きな銀座のコーヒー屋店長が、仕事では伝えきれないコーヒーについての思いやうんちくや、たまにコーヒーとは関係ないネタ話などをアップします。
コーヒーとアソブ楽しさ、みなさんに届きますように。

台風が来て雨が降っても気温が下がらないお盆時期…

気温が高すぎると牛乳を使ったアイスカフェオレやアイスミルクティーの注文がさっぱり入らなくなります。

後口スッキリが好まれるのか、ひたすらアイスコーヒーの注文が入るこの1週間ですが、イートイン限定アイスシェケラートもおすすめですよ。

エスプレッソに近い濃度で抽出したコーヒーに甘みを少量加え、シェーカーで一気に急冷したものです。

キンッキンに冷えた濃いコーヒーを一気にきゅっと飲むのも美味しいです。

※この写真を撮ったのは3月あたりなので、背景が今とは違います…

 

今回は、7月に最もアクセス数があったテーマ「コーヒーの価格上昇について」を、より深く掘り下げて書きました。

少し難しいテーマなのと、比較的長文になってしまったので、興味がある方は時間のある時に読んでくださいね。

 

ちなみに8月のアクセス数の1位はアイスコーヒーについてでした。

これは以前に詳しく解説したので、気になる方はリンク先を見てみてくださいね。

・アイスコーヒー1

 

・アイスコーヒー2

 

・アイスコーヒー3

 

・アイスコーヒー4

 

 

【店長のうんちくコラム その12・コーヒーの価格上昇について part2】

〇コーヒー豆の値段を決めるもの

コーヒー豆の価格の基準(いわゆる市場価格)は「先物取引」といわれる手法を使って決定します。

その年に収穫される量などで販売価格の変動が大きい作物などの「将来の価格」を予想し、最終的な値段に先んじて「仮の価格」を決定、商品の「取得権」を取引するものです。

そのため、たとえば不作が見込まれる場合は価格が上昇し、豊作予想の場合は下落します。

その中でもコーヒー専門店の多くが使用している品種「アラビカ」の指標を出しているニューヨークの先物取引所が、最も影響力のある基準になっています。

 

ではその市場価格は何で変動するか。

大まかに大別すると3つ挙げられます。

 

〇要因1.コーヒー産地の生産状況

まずは天候不順や自然災害が価格の変動に大きな影響を与えます。

たとえば干ばつや大雨などの被害によりコーヒーの供給量が明らかに減少する見込みの場合は、明確に市場価格の上昇が見られます。

ニューヨーク先物取引所のコーヒー銘柄の名称に「コロンビア マイルド」というものがありますが、その名の通りコロンビアでの生産量が価格にとても大きな影響を与えることもあります。

 

自然災害以外にも、コーヒーの木に病害・虫害が広がったときや、バイオマス燃料が注目された時に起こった作付けの変更(コーヒーからトウモロコシに変更する流れが加速した時期がありました)など、さまざまな影響で生産量の増減が見られます。

また、下の「要因3」の項目とも関連しているのですが、情勢不安や治安悪化により生産量が減る場合もあります。

 

〇要因2.投機

世界規模でコーヒーが消費される量が増えたことから、コーヒー豆を輸入したい国の需要と、コーヒーを生産している供給のバランスが徐々に拮抗してきており、先物取引の価格が乱高下するようになりました。

これは投資対象としては好条件のため、普段コーヒーに携わることのない投資家も多く関わってきています。

そのためか、コーヒーの収穫量に一見関係ないような政治や経済のニュースも影響することが増えてきています。

 

さらに、投機とは安いうちに買い付け、高い時に売る、という性質があります。

実際にコーヒー豆を入手したい業者が買い付けをするタイミング(市場価格が比較的下落した状況)で投機筋の買い付けが入ってしまうこともよくあり、想定していた以上の価格でしか取引できないという事態に陥ることも多く起こっています。

 

〇要因3.世界情勢

市場価格に影響を与える世界情勢には、収穫量にかかわるものと、流通にかかわるものとがあります。

たとえばかつてのアフリカ・ルワンダのように内紛が起こった場合は明らかに収穫量が減少します。

 

流通にかかわるものでは、コロナやウクライナでの戦争が挙げられます。

コロナ禍ではコーヒーを運ぶコンテナが世界的に不足してしまい、コーヒー豆の流通量が減少したため市場価格が高騰しました。

逆にウクライナでの戦争においては、戦地や近隣でのコーヒー需要が下がり供給増が見込まれたため市場価格は下落しました。(反面、南米ではウクライナ産の肥料を使用している農園が多いため、今後は価格が上昇する予想が多いです)

 

〇現状の問題

ここまでコーヒーの市場価格について解説してきましたが、では現状はどうなっているかというと、ブラジル産コーヒーの3年連続の減産予想(要因1)、ウクライナ戦争で下落した市場価格の反発(安くなったタイミングで、買い付けが一気に増加)(要因2)、原油価格の高騰による輸送費用の増大(要因3 注※市場価格ではなく、輸入業者からの購入価格に反映されます)、さらに日本では円安が急速に進んでいること、この4つが挙げられ、さらにこれら全てが早期に解決する見込みは立たず、それゆえにコーヒーの販売店は値上げせざるを得ないのです。

 

それこそ10年前までは100g千円以上のコーヒーは高級品だと言われていましたが、今では当たり前のように他店でも、当店でもラインナップに加わるようになりました。

当店は特別な高級コーヒーよりも、普段使いしてほしいコーヒーを中心に販売しているため、できる限り市場価格が落ち着くように日々願っております。