不動産投資編 第1回 不労所得にあこがれて | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 ハワイ在住の日系アメリカ人、ロバート・キヨサキ氏が「金持ち父さん、貧乏父さん」を出版したのは、1997年。2000年代初めには日本でもベストセラーとなり、私も、好奇心にかられて読み進めたことを憶えている。

 副題に「アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学」とあるように、同書は「お金持ちになるための指南書」であるが、日本においては、「不動産に投資すべし」と受け止めた人が多かったのではないだろうか。その理由を私的な推測に求めることをお許し願えるなら「大金持ちになるための方策は、どれも実践できそうもないが、不動産投資なら取り組めるかも」と感じた人が多かったということではないかと思う。私がそうだったように…。

 

 私は、その後、不動産仲介という仕事を通じ、数多のプロ、アマ不動産投資家と会い、取引を行い、また、様々な形でビジネスとして不動産にかかわる人たちと交流してきました。中には、欲望につけこむように、へんてこな物件を売りつけて、投資家を泣かせて自分だけいい思いをしている、タチの悪い不動産屋もいて、危うく彼らの手口に巻き込まれそうになったこともありました。

 

 そんな経験を経て、私はこう考えるようになります。

 不動産投資で(金持ち父さんのような)大金持ちになるのは、簡単ではないが老後に不安を抱かず暮らせる程度の暮らしは、時間さえかければ誰でも実現可能だ。

 

 「不動産投資編」では、アパート建築や収益用不動産購入など、不動産投資のあれこれについて書いてみたいと思います。

 

学ばなければ滅ぶ

 はじめに言っておきたいのは、「投資をするなら学ばなければならない」という当たり前のことです。誰かの口車にのって、失敗したとしても自己責任。それが犯罪的なものなら、刑事事件として責任を追及したいところですが、だからといって投資したお金が返ってくることはまずありません。

 

 株や投資信託は、市場が整備され、商品性に関する情報も開示されているし、投資額も少額からはじめることができます。そして、金融商品に投資する人は、「学ぶ」ことに積極的なように思えます。それが証拠に、株式投資をしている人は、チャートを読んだり企業業績を調べたり、PERやROEを比較したり、程度の差こそあれ勉強しています。

 

 ところが、不動産投資に関しては、情報源はアパートの建築業者や不動産仲介業者が作成した「事業計画書」程度で、それがどういう意味を持つのか根本的に理解していないことも少なくありません。一念発起して知識を身につけようとセミナーに参加すると、それは、事実上「自社取り扱い物件へ投資勧誘」だったりして、純粋の学習の場でないことも珍しくありません。

 

 不動産投資はどちらからと言えば、安全な投資です。アパートの賃借人が一斉に退去して、家賃収入がゼロになったとしても、固定資産税だけ納めていれば誰も文句は言わないし、売却すればそれなりの現金が手元に残る。売却金額が購入金額を下回ったとしても、保有期間中の家賃収入もあった訳だし、多少元本割れがあったとしても株式投資のように「会社の倒産で株券が紙くずに」ということはまずありません。

 ところが、たまに失敗して苦しんでいる人がいます。「不動産を担保に借金をして返せなくなった人」です。土地建物を売却して完済できればよいですが、「残債」を下回る金額でしか売却できなければ、土地建物を失った上に借金が残ってしまいます。

 

 「学ばなければ滅ぶ」というのはこのことを指しています。不動産投資の肝は、良くも悪くもファイナンスにあります。現金投資なら無知で良いということではありませんが、借金がなければ不動産投資のリスクはかなり小さいと言えます。

大事な土地建物を失い、最悪の場合は自己破産。そんなことにならないように知識を身につけて欲しいと思います。さもなければ、我田引水のようで恐縮ですが、私のように中立的な立場で助言をするコンサルタント等に相談して的確な助言を受けて欲しいと思います。

つまずきの原因

 モータリゼーションの進展で、地方の商業の中心地は郊外のロードサイドに移っています。ところが、そういった立地で古くからの地主と言われるような人がオーナーの物件は、あまり売買のマーケットに出てきません。それはなぜでしょうか?

 理由は簡単。売る必要がないからです。「困っていない」と言い換えてることもできます。彼らは親の代から所有していた田んぼや畑だったところに道路ができて、人が集まり商業施設が集積したことにより、所有している土地をテナントに貸しているに過ぎない、つまり「借金をしていない」。返済に追われる必要がなく、ただお金が入ってくるだけなら、なにもわざわざそんな「金のなる木」を売る必要もないのです。

 

 ここに二つの例をあげてみましょう。念のため、架空の二人のお父さんの話であることを断っておきます。

 

[A父さんの場合]

 

 地方の町にある戦前から続く農家。自宅を以外にかなりの広さの田んぼと畑を所有する。ご先祖様から引き継いだ大切な土地だ。爺ちゃんが元気だった昭和50年代までは専業農家をしていたが、息子(A父さん)の代になってからは、サラリーマンとの二足のわらじ、兼業農家となった。

 ある日、田んぼの脇を、県道のバイパス道路が通ることになった。道路に面するこの土地の所有者であるA父さんに、さっそく地元のスーパーマーケットが「土地を貸してくれ」と言ってくる。

時は流れて、平成時代、この食品スーパーも大手の攻勢に敗れて閉店。しかし、次は、コンビニエンスストアが虎視眈々と跡地への出店を狙っていた。建物は、A父さんが建築しなければならないが、資金はこのコンビニの本部から「保証金(別名:建設協力金)」という名の無利子貸付として提供された。そうこうしているうちに、今度は別の田んぼをファミリーレストランが借りたいと言ってきた…。

 

 こんな感じで、還暦過ぎたA父さんには、サラリーマン時代の給料や、定年退職後も続ける農業からの収入をはるかに上回る賃貸収入があり、毎年の家族旅行と趣味の車とゴルフを楽しみながら不自由なく暮らしましたとさ…。

 

[B父さんの場合]

 

 地方の町の戦前から続く農家。小泉構造改革が進みつつあった2000年代半ば、某ハウスメーカーがやってきて、「賃貸アパートを建てましょう」という。一緒にやってきた銀行の支店長からは、「35年返済のローンが組める」との説明。金利は年3.5%。「借金すれば相続対策になる」という言葉が決め手となって、お父さんは決断する。「いざ相続となれば奥さんにも子供たちにも感謝される、しかも長期返済のローンにして毎月の返済額を低めに抑えたから、お小遣い程度のお金は残る。多少はいい恰好もできるだろう」そんなふうに考えたのだ。

 

 はじめは、ハウスメーカーの事業計画書通りの家賃が入り、順調だった。ところが、リーマンショックで状況は一変、それまでアパートの半分を借り上げていた派遣会社が解約を通知、家賃収入よりもローン支払額の方が上回るようになってしまった。預金を取り崩して穴埋めするも、長くは続かず返済が滞り始め、そして、ついに…。

 

 この二つの事例は、どちらも特別なものではなく、日本中どこにでもある話です。同じように不動産投資を行ってきた二人のお父さんの身に起きた、全く正反対の結果は、いったい何が原因だったのでしょう。

 立地の良し悪し? 店舗とアパートの違い? リーマンショック? 表面的な理由はいろいろあるにしても、本質的な原因は「借入金」です。さらに言えば、お父さんのファイナンスに対する認識不足、勉強不足、これが失敗の最大原因だと言えます。

 

 不動産投資においては、家賃収入が変動することは想定の範囲内です。家賃収入が減少したとしても、返済計画に影響が出ないように対策をしておくのは基本中の基本です。

 デフォルト(=債務不履行のことです)したB父さんがもし、半分の土地を売った資金で(つまり借金なしで)アパートを建てていたら、先祖から受け継いだ大切な土地すべてを失うことにはならなかった。

 

 では、不動産投資において「借金は悪」なのかといえば、それも正しい理解ではありません。お金は意志を持ちません。借金が悪さをしたのではなく、B父さんがその使い方を知らなかっただけのことなのです。借金をする以上は、借入れを前提にしたリスク・マネジメントが絶対条件であり、そのための知識も戦略もなかったことが、失敗の本質的な原因なのです。

 

 不動産投資のメリットの一つは、借入金で投資できること。ローンによるレバレッジ効果(レバレッジ=てこ)により、現金での投資に比べて高いリターンが得られます。一方で、デフォルトリスクというデメリットを背負うことになります。「デフォルト」とはすなわち返済不能状態であり、不動産の差し押さえや競売の申し立てをされても仕方ないということです。

 

 よくよくみてみれば、A父さんもB父さんも、投資に関してさしたる勉強はしていません。ただ、大きな借金をしたB父さんが、環境の変化に抗えずデフォルトしてしまったということに過ぎません。A父さんは、不勉強でも結果オーライ、つまり運がよかっただけ、このまま知識がないまま不動産投資を続けていると、いつB父さんのようになるかもしれないのです。