試合前の南北選手の練習風景を絶対に見たかった私は1時には競技場に着いて券を買って入場し最前列の席で練習風景をガン見。
赤と白のジャージで全員ショートカットの朝鮮代表と水色のジャージでポニーテールが主流の韓国代表が同じグラウンドで試合前のウォーミングアップ、もうね、なんていえばいい?!
スゲー高揚した気持ちと二つに分かれて戦わなきゃならない残念で悲しいこの気持ち。
練習中北の選手のミスキックでボールが大きくハーフラインを超え南の選手達が練習するところに落ちる、
南の男子コーチが無言で蹴り返す。
おい、なんか一言声かけてもいいんじゃん?と思ったりする。
南の選手がハーフラインを少し超えて立っていると北の男子コーチが指をさしながら何事か言うと南の選手がハーフライン内に戻る、ちょっとした休戦ラインの陣地争奪戦みたいだなと思ったり、今回は友好ムードよりも勝負に対する緊迫感の方が強いなあと思ったりしたわけなんです。
てゆーか言葉思いっきり通じてるよなあ、当たり前だけどと今更ながら思う。
キックオフが迫ってきて事件は起こりました。
「必勝朝鮮」「공격전」(攻撃戦)「만리마」(万里馬)「속도」(スピード)「이겨라 조선」(勝て朝鮮)の横断幕。
え?それを言うなら「준마처녀」(駿馬ガール)も入れなきゃダメでしょ!
今一番流行ってるのに!
とか1人つっこみを入れながらサポーター席に向かうと柵が私の前に立ちはだかって行く手を阻む。
え〜?!
まさに、え〜?!みたいな
柵の向こうの楽園に同胞達が沢山いるのに行けねー!
係員に訴えたよ泣きながら、私を同胞の元へ行かせてと、私は1人では生きていけないと、この軍事境界線を撤去せよ!と。
「一般チケットでは向こうに行けません、北朝鮮サポーターのチケットは一般入手出来ません」
(北朝鮮、北朝鮮言うな!国連に加盟して140カ国以上と国交がある国に対して経緯を払え!おれは韓国籍だけどとか心の中で呟きながら)
え〜?!それも制裁の一環かよ?!
(よくわからないけど、多分違うと思う)
入場ゲート近くの柵まで行くと偶然、ほんとに偶然、普段から世話になっているカン君のパートナーのYスンさんが通りかかる!
思わず叫びました、天使に見えました、彼女ならこの不幸な私を救ってくれるのではないかとすがりました、
鉄格子を掴みながら
「Yスンさん!ここから出して下さい!私を同胞達のいる楽園に連れて行って下さい!」
私を楽園に連れて行ってって薬師丸ひろ子かよ!
柵の鉄格子を掴みながら泣きながら哀願する私、
まさかの蘇我に38度線‼️
気が付けばまるで朝鮮映画「クミ(錦姫、或いは金姫)とウニ(銀姫)の運命」みたいになってる私。
(双子の姉妹が南北に離れ離れになってしまうとっても悲しい映画、続編で2人の姉妹が再開する脚本が用意されている為、続編は朝鮮が統一されない限り製作されないと当時の担任の先生から聞いた私達はとっても悲しい思いになったものです。
ちなみに貧しい南に残されたウニはとても苦労するのですが近年の韓国の目覚ましい発展でおそらく今ではそれなりに豊かに暮らしているのではないかと思うと私の心も多少軽くなる反面、「苦難の行軍」時代を経験することになる北のクミの事がその後どうなったのかと思うと心配で夜も眠れません。)
何故我々は離れ離れにならなければいけないの?
しかしエンジェルYスンさんの係員との粘り強い交渉の末に遂に天国へのゲートは開かれ我々は同胞達の胸に抱かれながら念願のサポーター席に到達することが出来たわけなんです。
私は今後Yスンさんの事をエンジェルと呼ばせていただきます、そしてエンジェルパイを食べる度にあなたの事を思い出す事でしょう。
てゆーか、この脱出劇がほとんどこの日のメインみたいになってますけど!
(ちなみにこの時の係員のお二人はとても親切で献身的でした。ありがとうございます。)
次回に続く