翌朝、娘が
「あれ、オンマは?」
「昨日から外泊」と私、
「男と?」
「..........」
絶句する私。
神戸と京都の姉さん達が東京に上ってきた。その宿泊先のホテルに駆けつけたストロベリーちゃん。
そして東京にいるもう一人の姉さんも今日合流している、恐ろしい事である。
結婚以来20年間、
私の事を姉さん達にディスり続けているストロベリーちゃん、
私は密かに我が家のサンケイ新聞と呼んでいる。
この四姉妹が日本の首都で集結している、
充分に共謀罪の疑いがあるではないか!
日本の警察は一体何をしているのか?
ヨン様の一大危機ではないか!
ヨン様転覆の一大事ではないのか?!
この四姉妹、
鋼鉄の団結力で結ばれている、
お互いを「ミッちゃん」「キョーミちゃん」「ゆーこちゃん」「ふーちゃん」と呼び合っている。
が、しかし、その呼称を外部の人間が呼ぶ事を一切許さない鉄の不文律があるのだ。
この呼称を許されているのはこの四姉妹とその母親だけなのだ。
以前彼女の実家で私が
「ふーちゃん(福美だからふーちゃん)」と思わず呼んでしまった時の事である。
ズワー‼️‼️‼️(まじで音が鳴った)
という視線の凍りついたナイフに私の身体はメッタ刺しにされた。
「なんやコイツ、よそ者の分際で」と言うあの恐ろしい視線を今でも夢で見てうなされる。
2番目の姉さんは同級生で大学も同じ、
数年前の同窓会でビールを注ぎに行った時のあの薄い薄いリアクション、
「いつもお世話になってます、
さあ、どうぞ一杯注がせてください」
(いつも敬語の私)
「ごめんなさい、私ワイン飲んでいるので」
「あ、ああ〜、そうですよね、そうですよね、ワイン飲んでますね(スゲー大量の汗が噴き出る)」
その後の返しがゼロ。
が、しかし、
その高い聖域の壁を軽々と乗り越える人物が現れた。
その人を我々店のスタッフは全員「師匠」と呼んでいる。
「ふーちゃん、とりあえずビールちょうだい」
ふーちゃん、い、いや、ストロベリーちゃんも今では当たり前のように、ハーイ、とか返事をしている、
しかもストロベリーちゃん自身もその人を「師匠」と呼んでいる。
職人さんで日本人のその「師匠」は老朽化した朝鮮学校の修理なんかも度々経験して在日の知り合いも少なくないらしい。
しかも、後で知って驚いた事に、
「師匠」は映画「月はどっちを向いている?」で主演した女優のルビー モレノさんの最初の夫だという事実が判明したのだ。(本人の了承を得ています。)
もうね、
まさに、人生の師匠、
「師匠」が店に来出して以降
店に客が来るようになった。
数々の奇跡を起こした「師匠」、
もしかしてイエス様って「師匠」の事なのか?
「師匠」が「ふーちゃん」と呼んでも絶対にノーと言わないストロベリーちゃん、
やっぱり「師匠」はイエス様かも知れない。
ストロベリーちゃんの携帯にかける、
かけてもかけても応答無し、
どうやら四姉妹の間で白熱した謀議が進行中のようである。
「師匠」が言う
「結婚生活ってのはな、修行だからな、
耐えて耐えて耐えて、たまに嬉しい事がある、そしてまた耐える、それが幸せってもんよ、嬉しい事ってよ、たまにしかねんだよ、だから嬉しいんだよ」
やっぱりイエス様かも、、、