近所の家々が 目を覚まし始めた
遠くの道路も 起きてきている
空の 冴えてきた 青
でも まだ夜明けではない
彼はまだ 眠っている
鳥に混じる
セミの声
テレビのニュースは 何も言わないけれど
次の季節は もうそこだと
でも まだ夏ではない
彼はまだ 眠っている
濃くなってきた 屋根の影
風は 時を知らせる
朝が 来る
夏が 来る
だけどせめて あと少しだけ
セミよ 静かに
日差しよ やわらいで
彼はまだ 眠っている
閉まっている カーテンが
最後の砦

チロルチョコ。
“男前豆腐店チョコレート”。
また面白いものを出してくれましたね~。(感心)
袋買いして、職場に配ろうかと思ったのですが、包み紙にあふれる「男」字に、躊躇してしまい、結局自分で開けてしまいました (笑)。
実際に男前豆腐を入れているとのこと。食べてみると、まあ普通にチョコの味ですが、豆腐っぽい感じがしなくもないです。うーん、確かにちょっと豆腐かも?
久しぶりに男前豆腐が食べたくなりました。あ、波乗りジョニーでもいいな。
彼らからすれば、私は買い物帰りにお茶をしている、ただの女性でしかありません。背景の一部にしかすぎない。
実際そのとおりです。
くたびれ気味のTシャツ&Gパン。横には安い八百屋の袋。年寄りではなけれど、若くもない。
仕事はしている。でもバリバリのキャリアウーマンではない。
贅沢はしていないし、できないけれど、自分のお菓子や雑貨を買うことくらいはなんとかできる。
そう、よくいる人の一人です。石を投げれば必ず当たる。
だけど。
私がどんな気持ちでいるかは、だれも知らないでしょう。
外側だけは、見れば分かる。
けれど、中は。
先週、彼がプロポーズしました。
私は承諾しました。
このコーヒーショップにいる人たちの誰も、それに気付かないけれど。
うつむいてコーヒーを飲んでいる私は、とても胸がいっぱいなのです。うれしさが体からあふれ出ています。テレパシーがある人なら、遠くにいても自然に伝わってしまいそうな幸福感です。
――私は“私”であり、世界一しあわせな、小さな1粒の人間です――
人生は、ときに過酷で、いっそ放り投げて他人になってしまいたいくらい辛いこともあるけれど。
こういうときもあるのだな。こんな、心がふくらむような、奥底から輝くような感じが。
他の人は何度も経験しているのかもしれないけれど、私にとっては生まれて初めての経験で。
私が感じた、私だけの幸せ。ボーナスのようにやって来た、ここ数日。
感情。このコピーすることも、移動することもできないもの。牢獄のようでもあり、ギフトのようでもある。
人生の宝物。
BGMが流れています。
サラリーマンのお兄さんは、起きてアイスコーヒーを飲むと、文庫本を出して読み始めました。
眼光鋭いサングラスの初老の男性は席を立って、どこかへ歩いていきました。
女性2人は、話がまだ尽きないようです。男の子は足をぶらぶらさせています。
私は、もう少しこのあたたかい時間を味わっていましょう。
BGMがそばによりそって、いっしょに歌ってくれています。
仕事の帰り道、裏通り。
八百屋から駅に向かう途中に、小さなコーヒーのチェーン店があります。間口が狭いので、どれだけの広さがあるのか分かりません。
看板にあるチョココロネが、いつも気になっていました。
八百屋での買い物が思ったより多かった日。
一息いれるという名目で、入ってみました。
なんとも狭い店内です。幅が両手を広げたくらいしかありません。まさにウナギの寝床。
受付のレジで、コーヒーと、売りらしいチョココロネを注文しました。
お金を払い、トレイを手にテーブル席のほうへ向かっていくと、どういう構造なのか、途中から、幅が倍になりました。奥行きも意外にあります。
よく見ると、テーブルやイスもなかなかしゃれています。
素敵な、ウナギの寝床でした。
壁際のソファに座って、荷物を脇に置きます。ああ肩が軽くなった。
コーヒーをひと口。苦味と甘みが気持ちを落ち着かせてくれ、温かみが体を楽にしてくれます。
ソファに背中をもたせかけ、ゆっくりと店内を見回します――。
右手には、首を落としてうたた寝をしている若いサラリーマンがいました。アイスコーヒーは飲みかけのままです。
左のテーブルにいる40代くらいの女性は、化粧室に立ちました。残った同年代らしい女性が、子供(メガネをかけている)に、
「いい人でしょ? ママは昔は頭が良かったんだよ」
と言っています。友達との再会なのでしょうか。
前の奥のカウンターでは、アイスコーヒーを前にしているサングラスの初老の男性。両の手を軽くにぎり、まわりを一心に見ています。首がかすかに回っています。どういう人で、何を考えているのでしょう――。
そんな人たちにまぎれて、私もコーヒーを飲んでいます。
チョココロネは思ったほどではなく、少しがっかりしながらかじります。
それでも、とても幸せなコーヒータイムです。

先日、職場に半休をもらって、町に出ました。税金や光熱費などの支払いのための、銀行回りです。
その中に、初めて支払うものがありました。
アパートの更新料です。
***
「こんなもの支払うの?」
アパート住まいが初めてだった私は、突然の請求書にびっくりしました。敷金と礼金は知っていましたが、更新するのにもお金がかかるとは。
子供の頃からアパートで暮らしていた彼は、更新の書類にも、おお来たか、と慣れたものでした。
「2年たったんだな」
感慨深そうにうなずいています。
「ここ、最初は何もなかったよなあ」
「そうねえ」
言われて、私もまわりを見回しました。
「ひとつひとつ、そろえていったのよね」
2年前、がらんとした空間だった室内は、いまや物であふれ、歩くのにもひと苦労です。ただんでいない洗濯物や、雑誌の切り抜きがあちこちに散らかっています。
「俺達も2年になるんだな」
「そうねえ……」
私達は、しみじみと互いの顔を見合わせました。
更新する?
する、する。
言葉にしない会話をして。
もうひとつの更新手続きをしました。
書類も、手数料もないけれど。

今週は、梅雨明けかと思うような暑さでした。
職場は、30度を超えないと、冷房を入れないという規則があります。
そして、どうやら私のいるフロアは、それに独自の規則を加えているようで、あきらかに30度を超えているにもかかわらず、誰も冷房を入れようとしません。
うちわであおいでも限界があります。頭がボーッとしてしまったので、売店にアイスを買いに行ってきました。
シャッターが下りていました。
休憩時間でした。
フラフラしながら席にもどり、……これで熱中症で倒れたら、労災になるかな? などと真剣に考えながら、終業時間まで仕事をしました。
それが金曜日。
こういう週の終わりだと、ちょっとくらいおいしいものを食べても、バチは当たらないでしょう。
ハーゲンダッツの、ちょっと高めの“ドルチェ”。味はティラミス。
ふだんはスーパーでそれを横目で見ながら、100円アイスをカゴに入れているのですが。
買ってしまいました。
クリーミーなチーズの風味、コーヒー味のスポンジ。
んー、本当にティラミスですね!(笑)
おいしいものを食べると、ぜいたくな気分になります。
「一週間、よくがんばったね」
自分で自分にごほうびです。
明日からまた仕事です。冷房はやっぱり止まったままに違いありません。
アイス、買い置きして、職場の冷蔵庫(の冷凍庫)にしまっておこうかな?
あ、ドラッグストアで、シッカロールも買っておかなくちゃあ。(^^;;;

彼は、職場で一日仕事をしていて、昼食を取らないことが、たまにあります。
ちゃんと食べないと体に悪いよ、と忠告すると、
「忙しく仕事をしていたら、いつのまにか昼食の時間が終わっていた」
とのこと。
働いている人なら、誰でも昼休みは取っていいはず。時間がずれてもいいから食堂に行けばいいのに、と思うのですが。
「あまり遅いと、食堂が閉まってしまうんだ」
のんびりしたものです。
じゃあ、売店でパンを買ったら?
「パンを食べながらPCに向かうのはちょっと……」
そう言いながら、夕飯を普段よりかっこんでいる彼を見て、仕方ない人だなぁと、おかずをちょっと足してあげたりしています。
困ったものです。
昼ごはんを食べないときは、どうしたらいいだろう?
そこで、考えました。
彼のカバンに、お菓子をしのばせておこう。
立派なものではありません。食べかけのおせんべいの袋から1つ2つとか、マリービスケットの小袋とか、そんなお菓子です。
それから。
彼は、相変わらず職場でお菓子は食べないみたいですが、帰宅途中、歩きながらむしゃむしゃやっているようです。たまにカバンのポケットからお菓子がなくなっています。
最近は、帰るなり「腹がへった」と口を開けることがなくなりました。
今朝、カバンに入れたのは、ブランというお菓子。ドラッグストアなどで見かける、ちょっと固めでザクザクした歯ごたえのものです。含まれている植物繊維がお腹の中でふくらむのか、食べると小腹がうまる感じがします。素朴な味もいいですね。
さて、私も仕事に出かけなくちゃ。
それじゃあ、お先に。行ってきまーす。

ハルタさんとお茶をしました。
会うのは約半年ぶりでしょうか。
以前は結婚式の準備で忙しそうだった彼女も、もう新婚さんです。
久しぶりに見た彼女は、以前より落ち着いた感があり、髪型を変えたせいもあるかもしれませんが、より女らしくなっていました。
雨だったので、駅のそばの喫茶店でランチ&ケーキ。
ハルタさんは半年のブランクを感じさせない親しさで、色々な話をしてくれました。
仕事に家事にがんばっている毎日。優しいご主人、見守ってくれている実家や新しいご両親。結婚式の思い出と、それをきっかけに知り合った人々との、その後の交流……
それは、半年前には未知の世界で、立ちはだかる壁のように見えたに違いありません。その前でハルタさんがすくんでいたように感じられました。
でも今、テーブルの向こうで笑っている彼女は、幸せそうです。きっと真摯に向き合い、ひとつひとつの壁を乗り越えていったからでしょう。しなやかな強さを感じました。
これからも壁は出てくるかもしれません。また悩むかもしれない。そのたびに深く物事を考え、ひとまわり成長していくでしょう。
あなたならきっと大丈夫。応援していますよ。
駅のホームに消えていくハルタさんの後姿に、エールを送りました。

新しい職場の女性たちは、お菓子を配る習慣はあまりないようです。小さなグループで昼食をした後、おしゃべりの時に1、2度おせんべいをもらったくらいです。
それでも、いただいてばかりでは悪いので、たまにはお返しを。
お近づきのしるしと、いつもお世話になっているお礼も兼ねて。
コンビニで見つけたチロルチョコ。
「ポンジュース」
(また面白いものを出しましたね!)
仕事のあいまに、机にちょこんと置いていきます。女性たちはお菓子をもらうのに慣れてないのか、一瞬おどろいた表情になりますが、すぐにチョコに笑いはじめます。
「どうぞ、小腹がすいた時にでも」
「ありがとう」
この職場に来て半月以上。だいぶ慣れてきましたが、まだまだ教わることばかり。これからもよろしくお願いします。

実家に咲いていたのと同じ花が、アパートの玄関わきに咲いていました。
あたりに、この花がある家はありません。
たぶん私が、実家の庭から、種を連れてきたのでしょう。
新しい土地で、まだなじんでいないかもしれないけれど。
今日もここにいます。花も、私も、彼も。