むぎめ va

おかかおにぎり

「あれ、小枝さんの紹介がなかったなあ」

ツリーの枝にはもう誰も残っていない。


小枝

「ここですよ」

おかかおにぎりがきょろきょろ見回すと、香草をクッションのようにふかふかと盛り上げた一角に、ちょこんと腰かけた小枝がいた。


小枝

「紹介が始まったので、枝から降りて見学してたんです。華やかで素敵でしたね」

おかかおにぎり

「枝から降りてたら、小枝さんが紹介されないままじゃないですか」

小枝

「うーん。来たばかりなのに目立つのは、ちょっと照れくさいですし」


汗をふきながら、SHINHWAオーナメンツの6人が近づいてきた。

SHINHWAオーナメンツのミヌ

「名簿にあるのにいないと思ったら、小枝さん、そうだったんですね」

SHINHWAオーナメンツのチョンジン

「小枝さんがミヌ兄さんより背が高いから、すねたのかと思った」

SHINHWAオーナメンツのミヌ

「おい、お前だって低いだろ。エリックも、ここでは、みんな同じ背の高さだぞ」

SHINHWAオーナメンツのチョンジン

「私たちは」

SHINHWAオーナメンツ

「SHINHWAオーナメンツです!」


おかかおにぎり、小枝

「わあ、みなさん、さすが、息ぴったりですね」


むぎめ va

クリスマスの贈り物の時間になった。

贈り物を配るのは、全国を仕入れに回っているキティたち。


キティたち

「5年くらい前から、ファミリーマートに勤めているんです」


クリスマスランドに来た1人ひとりのために特別に準備された贈り物を、靴下から次々、取り出した。

この大きさの靴下の中に、みんなの贈り物が入っているなんて、本当に不思議。


キティたち

「おかかおにぎりさんには、これ。紫黒米(しこくまい)の『朝紫(あさむらさき)』。白米3合につき1袋、炊く前に混ぜて炊いてください。紫色の赤飯になりますよ。栽培しやすいように、インドネシアのバリ島在来の紫黒米に、日本の改良品種をかけあわせてつくられたんです」


むぎめ va

キティたち

「それから、これ。オーロラの光をたっぷり吸わせた石鹸」

「おかかおにぎりさんに、これから、たくさん素敵なことがありますように」


おかかおにぎりは、さっそく、朝紫の赤飯を炊いて、旅のお弁当にすることにした。

炊き上がるまでの間、ツリーの裏側を抜けて、ぐるっとクリスマスランド一周散歩。

歩いていると、雪だるまたちに会った。


むぎめ va

おかかおにぎり

「こんにちは、ツリーを飾っていた雪だるまさん。そして、あなたは」


むぎめ va

鏡餅ゆきだるま

「後ろ姿は、鏡餅です。どうぞ、よろしくお願いします」

おかかおにぎり

「ああ、もうすぐ、新年ですねえ。どうぞ、よろしくお願いします」

ツリーにいた雪だるま

「私たち、3人、似てますね。おかかおにぎりさん、3人で雪だるまデビューしませんか」


むぎめ va

朝紫の赤飯が、ほっこりと炊きあがった。

旅のお弁当にするんだから、やっぱり、おにぎりにしなきゃね。


むぎめ va

25日が終わると、クリスマスランドとは、来年までお別れ。

お祝いに集まってきた棚の住人たちは、船乗りクマのかご船で、それぞれの棚へ。

ツリーと、特別なクリスマスの飾りたちは、来年まで休むために、「パンの街つくば」のつくばエクスプレス(TX)に乗り込んだ。


「さよなら」

「さよなら」

「また、会おうね」

「合言葉は、来年のクリスマスだね」

むぎめ va

「さあ、今年のツリーを飾ったメンバーを紹介する時間です。準備はいいですか」


いきなり、空から声が降ってきたので、おかかおにぎりは、そりかえって、目を凝らした。

まぶしい空にそびえるツリーのてっぺん近く、高い枝越しに、6つの人影がマイクを握っているのが見える。

今年のクリスマスツリー紹介の司会を務めるのは、愉快な万能エンターテイナー「SHINHWAオーナメンツ」だ。


SHINHWAオーナメンツの6人

「挨拶しましょう。1、2、3。私たちは、シナオーナメンツです」

SHINHWAオーナメンツのヘソン

「ミヌさん、今年のツリーのテーマは何ですか」

SHINHWAオーナメンツのミヌ

「テーマがいくつかありますね。1つは、まさに、SHINHWAです。6人がそろって舞台に立つ日が早く来ることを願って、ファンが、私たちSHINHWAオーナメンツをツリーに飾ってくれたんです。みなさん、愛してます」

SHINHWAオーナメンツのヘソン

「わー、ファンの気持ちは本当にありがたいですね。では、エリックさん、次のテーマを紹介してください」

SHINHWAオーナメンツのエリック

「次のテーマは、工夫・整頓・忘れないで、私たちがいることを!です」

SHINHWAオーナメンツのヘソン

「よくわからないテーマですね」

SHINHWAオーナメンツのエリック

「私もよくわからないのですが、原稿にそう書いてあります」

SHINHWAオーナメンツの6人

「…」

SHINHWAオーナメンツのドンワン

「さあ、初めに紹介するのは子犬のみなさんです。ツリーから降りてきて挨拶してください」


むぎめ va

元気なビーズの子犬たち6匹が、しっぽを振って拍手にこたえた。


SHINHWAオーナメンツのドンワン

「さあ、後ろ脚でうまく立てなかったら、わきのアールグレー紅茶の筒によりかかってくださいね。続けて紹介します。キティのみなさん」


むぎめ va

むぎめ va

SHINHWAオーナメンツのドンワン

「クリスマスの靴下に入ったキティさん、白鳥の王子なのか王女なのか魔法にかかったキティさん、そして、この方たちだけにしかない魅力であふれています。自己紹介をお願いします」


「ご当地キティを代表して来ました。宮崎の日向夏キティです」

「佐賀のムツゴロウキティです」

「四国の讃岐うどんキティです」


むぎめ va

SHINHWAオーナメンツのエンディ

「今年のツリーの記録係を務めてくださっているのも、キティさんなんですよ。呼んでみましょうか。シャープペンシルのチャームになった、新潟の柿の種キティさーーん」


おかかおにぎりは、夕張メロンの夕ちゃんが話していた食べ物サミットのことを思い出した。


おかかおにぎり

「みなさん、食べ物サミットに参加していただけないでしょうか」

佐賀のムツゴロウキティ

「私も、大丈夫かなあ。佐賀には、ムツゴロウの郷土料理があるのだけど」


むぎめ va


SHINHWAオーナメンツのドンワン

「続いて、ホクトのキノコのみなさんです」

SHINHWAオーナメンツのヘソン

「おい、今日のメインの司会は僕じゃなかったの」

SHINHWAオーナメンツのドンワン

「ははは。ヘソンさん、キノコのみなさんを紹介してください」

SHINHWAオーナメンツのヘソン

「左から、エリンギさん、ホクトくん、マイタケさん、ブナピーさん、ブナシメジさんです。

さあ、続いては、チーム・シン・ヘソンのみなさんです」


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SHINHWAオーナメンツのチョンジン

「ヘソン兄さん、1人だけ何なの」

SHINHWAオーナメンツのヘソン

「ファンが飾ってくれたんだよー」


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SHINHWAオーナメンツのチョンジン

「続いては、生茶パンダのみなさん、ゆきだるまさん、そして…あっ、おかかおにぎりさんにメッセージが届いていますね。旅の途中で、お茶犬にパスポートを届けてください。ツリーに飾られていたのは、お茶犬さんのパスポートだったんですね」


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SHINHWAオーナメンツのミヌ

「最後に紹介するのは、札幌の大通公園で12月に開かれるクリスマスミュンヘン市の屋台から、今年、仲間入りしたみなさんです。

クリスマスが終わると、みんな、それぞれの住むところや旅で離ればなれになるけれど、来年のクリスマスに会いましょう。合言葉は、来年のクリスマスですよ。わかりましたかー」

クリスマスの25日が過ぎて、今年のクリスマスランドは終わりましたが、これは、その前に、おかかおにぎりたちが、クリスマスランドで出会った物語。


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まあるいチーズケーキ、月のように真ん丸な白いチーズ、鮭フライ、タンシチュー、メンチカツ、チキン、つけあわせにジャガイモ、麻婆豆腐、豚肉のみそ焼き、五目ひじき、花園のように盛り付けられた野菜サラダ、ごまだれをかけたうどん、まだまだある。


クリスマスランドを訪れた一行のために、ごちそうがたっぷりとふるまわれた。


おなかいっぱいになったおかかおにぎりは、大きなクリスマスツリーをもっとよく眺めようと、張り出した枝の下にやってきた。


「イタリアでは、クリスマスツリーも飾るけれど、キリスト生誕の場面を人形で再現した『プレセピオ』を飾るのが伝統なんですよ」


教えてくれたのは、幼子イエスを抱いてロバに乗ったマリアを守るように先に立って歩いているヨセフ。


おかかおにぎり

「みなさん、イタリアからいらしたんですか」



ヨセフとマリアとロバと幼子イエスと生まれたばかりのイエス

「ええ。もう、15年前になるでしょうか。イタリアでは、12月になると、私たちの仲間が、至るところに工夫を凝らして飾られていました。やわらかい光に照らし出されて、心にほうっとあたたかい灯がともるようでした。


こちらに来てからも、クリスマスになるといつも以上に、あったかい気持ちが私たちを包んでくれます」


「今、普段は、山女さんと岩魚さん、宝箱さんと一緒に住んでいるんですよ。クリスマス前に、船乗りクマさんたちが迎えに来て、クリスマスランドに連れてきてくれました」


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あれ、ツリーの根元でショパンの夜想曲を奏でているのは、誰でしょう。


それは、華やかな細工を施されたのぞきめがね。


胴体のオルゴールのねじを自分できりきりと巻いて、終わりかけた夜想曲を、また初めから演奏させてから、優雅にお辞儀した。

のぞきめがね

「上から私をのぞきこむと、小樽のガラスの花がきらきら回転する万華鏡。下から私を通して遠い夜の空をのぞきこむと、宝石のような二重星や、ぼんやり輝く星雲を拡大して見られる天体望遠鏡。さあ、どうぞ」


おかかおにぎりが上からのぞきこむと、空色や金色、藍色、珊瑚色のかけらが、くるくると花の形になった。


のぞきめがね
「夜にもいらっしゃい。オリオンの帯の間に、大星雲が見えるよ」


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おかかおにぎり

「お2人は、船乗りクマさんたちの実習船で、いらっしゃったお客様ですね」


「クロアチアだったか、ギリシアだったか、ふるさとを出て、もう、5年になるかなあ」


「そう。ふるさとでは、にぎやかに暮らしていたので、大勢が集まる機会には、必ず顔を出すようにしているんですよ。棚住まいだと、なかなか新しいかたと会えないですから」


2人は、辺りを包む浮き立つ音楽にあわせて、つま先でうきうきとステップを踏んだ。


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カドリールの次はポルカを踊るよ、いつもと違うペアをつくって。


その次は、よさこいでも、ポーレチケでも、花笠音頭でも、早い者勝ち。


踊らない人は、奥にお茶を用意してあるよ、体をあっためて。


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おかかおにぎりは、ちょっとだけ、拍子にあわせてころころと転がってからお茶をいただいて、ツリーの見学を再開した。


おかかおにぎり

「小枝さん、こんにちは。私たち、なんだか顔が似ているみたいです」


小枝
「ほんとですね。私は、月桂樹の小枝です。このクリスマスに、代々木上原からこちらに来たばかりなんです。クリスマスが終わったら、石と木の実のガーデンに就職することになっているんですよ」