むぎめ va

君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ


の「若菜」は、七草のことだ、と新聞で読んだことがある。


おかかおにぎりたちは、旅立つ前に、春の七草を摘んで、七草がゆにすることにした。


せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ。

慣れない手つきで、土鍋でことこと。


これは、七草がゆになる前の七草たち。


むぎめ va

むぎめ va

たっぷりいただいて、おなかがくちくなったところに、青空の真ん中に黒い点がぽつりと見えた。

どんどん大きくなって、少し、左右にかしぎながら、とすん、と一行の前に降り立ったのは、飛行機乗りクマのノエルだ。


むぎめ va

おかかおにぎり

「ノエルさん、飛行記録を伸ばすのに成功したんですね」

飛行機乗りクマのノエル

「ええ。でも、クリスマスランドに着く予定だったのに、もうお正月なんですね」


むぎめ va


むぎめ va border=


2010年が明けた。広びろと開けた関東平野の向こうに、富士山の真っ白な頂がくっきり輝いている。


昇りたての太陽は、甘酸っぱく実った大粒のオレンジのよう。


お正月の島の一行は、いそいそと年始のあいさつを交わしあった。



今年のおせちは中華風あしらいがチャームポイント。きくらげ、春巻きの皿が彩りを添える。デザートには杏仁豆腐。定番、汁気たっぷりの分厚いだし巻き卵も欠かせない。



1日は実業団駅伝、2日と3日は楽しみにしていた箱根駅伝を観戦。


観戦の間も、めいめい、お正月の新聞の別刷り特集や、初売りチラシの吟味に忙しい。




むぎめ va border=


「元旦の食で福を招く、だって」


おかかおにぎりは、年末に配られたスーパーマーケットPrecceの広告を熱心に読んでいる。


「昆布巻は、『よろこぶ』にかけて、お祝いの食卓に欠かせないもの。健康長寿が得られるといわれています」


「黒豆。黒は、古代から邪気を払う色、1年の邪気を払い、『まめ』に働き、『まめ』に暮らせるようにとの願いが込められています」


「田作り。豊作を願い、小魚を田にまいたことから名付けられました。五穀豊穣の願いが込められています」


「なます。赤い人参と白い大根の紅白のなますは、水引なますとも呼ばれ、おめでたい正月料理には欠かせないものです」


「錦玉子。黄身と白身の2色の彩りを豪華な錦にたとえたおめでたいものです。錦は金銀財宝を意味しています」


「伊達巻。だてには『華やか』という意味があり、書画を書く巻物に似ていることから、文化発展を願う縁起があります」


「御蒲鉾。紅は『慶び』白は『神聖』を表しています。お重には紅白を互い違いにし両端には紅がくるように詰めます」


「栗きんとん。『金団』と書いて『きんとん』。黄金色に輝くその色から、今年も豊かな1年であるように、との願いが込められています」



音楽ウサギたち


「ふうん。知らなかったこともいっぱいだ」


「おせち、全部そろえてくれるとよかったのにねえ。お豆はいただいたから、まめに働いて、まめに暮らせそうだけど」




むぎめ va border=


おせちもいただいて、駅伝も見たので、そろそろ船出の時だが、海が荒れている。


お正月に配達された、山のような新聞とチラシが、海面を埋めて波立っているのだ。




むぎめ va border=


あっ、とんがった三角波。危ない、危ない。



波が収まるまで待ってから、旅立つことにした。




むぎめ va border=


荒れた海も、なんのその。


一行が潮待ちをするお正月の島に、山手七福神たちが、やってきた。


左から、


清正公で知られる覚林寺(かくりんじ)の毘沙門天、


白金妙見として知られる妙円寺の福禄寿尊、


目黒不動とよばれる滝泉寺(りゅうせんじ)の恵比寿神、


やはり妙円寺の養老人尊、


岩屋弁天がある蟠龍寺(ばんりゅうじ)の弁財天、


大円寺の大黒天、


瑞聖寺(ずいしょうじ)の布袋尊。



おかかおにぎり


「あけましておめでとうございます。七福神のこと、教えてくださいませんか」


山手七福神たち


「ここに、参詣のしおりがあるので、差し上げますね。


参詣のしおりによると、


七福神は、インド・中国・日本の福を授ける神仏を集めたもので、すべての人々が望む願いを聞き、ご利益を与えてくれます。


七福神信仰は室町時代の中頃から起こり、初めは恵比寿・大黒天が信仰され、江戸時代中期には今の形が定着しました。当時の庶民は、元旦から七草までの間に近くの七福神をめぐり歩き、1年間の家内安全・無病息災・商売繁盛などを祈願しました。


江戸最初・山手七福神は、、目黒の不動堂の参詣道筋に設置された、江戸時代から続く、江戸最初の七福神めぐりなんですよ」


むぎめ va

「パンの街つくば」のつくばエクスプレスは、クリスマスの飾りたちを乗せて発車し、

クリスマスのお客様を迎えに来た船乗りクマたちの小舟も、次々に岸を離れていった。

黄色い大海の中にぽつりと浮かんだ島は、急に静かになった。


クリスマスランドの後を拭き清めてから、島は、お正月の島に変わる。

お正月の島で過ごすために残ったのは、誰だろう。

船乗りクマたちの実習船に、ギリシアだかクロアチアだか出身の民族衣装の2人、お正月明けの配送に備えるファミマキティたちも、小枝も、さっちゃんと雪ちゃんもいる。


ギリシアだかクロアチアだか出身の民族衣装の2人

「実習船の船乗りクマさんたちも、ここで新年を迎えるといいますし、私たちも、日本のお正月を楽しんで、箱根駅伝までテレビで見てから、棚に戻ろうと思っているんですよ」

「幸い、私たちの棚は、みてくれている人がいるものですから」


船乗りクマのドーナツ、シンスケ、エド

「せっかくだから、箱根駅伝まで見てから行こうよ」


おかかおにぎりたちも、島で年を越すことにした。

島を拭き清める間、一行は、島の東側に降りて、沖まで潮が引いた干潟でひなたぼっこをした。


干潟は、ちょうど、クマたちが暮らすクマ海峡に面している。


むぎめ va


「おーーーい」

「おーーーい」

「よいお年をお迎えくださーーい」


クマ海峡のクマたちと、島から降りた一行は、あいさつを交わしあった。

「最新のニュースはありますか」


クマ海峡のクマたち

「円山動物園から来たホッキョクグマの双子を呼んでこよう。

ほら、係に連れられて、週に何回も銀座に行ってるからね」

「この辺りの島と海を管理してる自然保護係がいるんだけど、ほら、不法投棄物を回収したり、漂流物を拾ったりしてくれる。双子を連れて、よく銀座付近をぶらぶらしてるんだ」

「まだ小さいのに、この間は帰ってきたのが午前3時だったよ」

「あんなに小さい子たちを、遅くまで連れまわすなんてねえ」


むぎめ va


ホッキョクグマの双子、イコロとキロル

「こんにちは」

「こんにちは」

「おそくかえってくるとき、かえりみちで、とうきょうたわーに、2009ってあかりがついてたよ」

「うん、きれいだったね」

「おしょうがつまえだから、つきじにかいものにくるひとがたくさんいるよ」

むぎめ va

島はきれいに拭き清められて、お正月の歳神さまを迎える準備ができた。

花を飾って、来年の干支、寅も鏡餅の上にちょこんと座って。


むぎめ va

新年も、よろしくお願いします。


追伸。

朝紫を炊きしめた赤飯のおにぎりは、おやつにすることにしました。

旅立つ前に、またつくろうっと。


むぎめ va