十方衆生のなかに、浄土教を信受する機あり、信受せざる機あり。
いかんとならば、『大経』のなかに説くがごとく、
過去の宿善あつきものは今生にこの教にあうてまさに信楽す。
宿福なきものはこの教にあふといへども
念持せざればまたあはざるがごとし。
「欲知過去因」の文のごとく、
今生のありさまにて宿善の有無あきらかにしりぬべし。
『口伝鈔 第二章』
十方衆生のなかに、浄土教を信受する機あり、信受せざる機あり。
覚如上人はここで、私達を
「浄土教を信受する機」と「信受せざる機」
とに区別され、
いかんとならば、『大経』のなかに説くがごとく、
その根拠として、以下の大経の説を用いられている。
過去の宿善あつきものは
今生にこの教にあうてまさに信楽す。
宿福なきものはこの教にあふといへども
念持せざればまたあはざるがごとし。
過去の宿善あつい人は、
今生に獲信する。
宿福のない人は、
今生では獲信できない。
宿善があつい人か、宿福のない人か、
「過去の宿善」によって「今生に獲信するか否か」の差が生じる
との仰せである。
言い換えれば、
「今生に獲信した人か、できなかった人か」という
「今生のありさま」によって
「宿善の有無」が明らかということ。
今生で獲信した人は、宿善があつかった人であり、
今生で獲信できなかった人は、それに比べて
宿善が薄かった、あるいは無かったということ。
今生のありさまにて宿善の有無あきらかにしりぬべし。
覚如上人の明言である。
飛雲氏の説は、
> 宿善の機とは、「浄土教を信受する機」
これは正しいが、それを
> 法然聖人、親鸞聖人、覚如上人、蓮如上人の
> 教えられたことを受け入れられる人
と言うが、これが間違い。文証もない。
これでは、今生で獲信しない人が含まれてしまう。
そこに飛雲氏の間違いがある。
覚如上人は、
「浄土教を信受する機」とは、
「今生で獲信する人」と仰せであり、
それを「過去の宿善あつきもの」と仰っているのであって、
「浄土教を受け入れられる人」という表現ではない。
事実、
”まことに違いない” ”十八願に救われたい”と
浄土教を信じて聞き求めている人の中にも、
「今生で獲信できる人」 （浄土教を信受する機）と、
「今生では獲信できない人」 （浄土教を信受せざる機）
とがあり、それが、宿善によるのである。
飛雲氏の主張と、覚如上人の教えとは、明確に異なり、
飛雲氏の誤読は明白。
誤った自説に、無理に合わせて読むから間違えるのであろう。
逆に覚如上人が、その誤りを見事に浮き彫りになされている。
浄土教を信受せざる機も、やがて、宿善が厚くなり、
浄土教を信受する機となる。
これが、覚如上人の教えであり、
宿善は、浄土教を信受（獲信）する善因縁、との教説である。
願わくば、まことの宿善開発あらんことを。
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