<謹賀新年>
明けましておめでとうございます。
今年もみなさまにとっていい年でありますよう心よりお祈り申し上げます。
昨年は、自然災害が多かった年でした。台風、大雨、火山噴火、竜巻、大雪、地震などすべての自然災害があったように感じます。
災害があった時は、備えをしておかなければと思うのですが、時が立つといつの間にか忘れてしまい、災害が起こって後悔することが多いです。
現在は、何が起こってもおかしくない状況にあるのかもしれないので、日ごろから備えをしておかなければと肝に銘じている次第です。
ともあれ今年は、自然災害のない、平穏な年でありますよう祈るばかりです。
<相続こぼれ話>「遺言 独身編」
ある日、か細い女性の声で電話がかかってきました。
「相続のことで相談したい。自分は末期がんでいま家に帰ってきている。しかし、体が思うようにいかないので自宅に来てほしい。」と。
早速自宅マンションを訪れました。
彼女は、体つきは痩せて、一見弱々しい感じでしたが、お話をしてみるとしっかりした口調で話をしてくれました。
まずは、今の自分の病状を。
肺がんで入退院を数年前から繰り返していたが、現在は末期の状態にあり、医者からはそんなに長くはないと言われている。
亡くなる前にいろいろ整理をしておかなくてはと思って連絡したとのこと。
そして、家族関係や 今までの人生を振り返ってのお話し。
自分は78歳の独身で、結婚経験はなく、一人で頑張ってきた。30年ほど前に近くで建物を借り、居酒屋を始め、2年前まで経営してきた。たくさんのお客さんが来てくれて、たいへん繁盛し、それなりに儲かり、そこそこ資産を遺すことができた。
家族については、100歳でなくなった母親を数年前まで世話をしてきた。たいへんだった。ほかの兄弟姉妹は、特に援助してくれたことはなかったが、自分は長女だから世話をするのが当然だと思ってやってきた。
自分には6人の兄弟姉妹がおり、弟3人妹3人なのでけど、自分のすぐ下の妹は、嫁いだ先が商売をしていたこともあり、苦しくなると無心に来たので相当援助してきた。それでもまだ家のものを勝手にもっていたりしていたので、私が亡くなった時、この妹が財産を取っていくのではないかと心配になってきた。最近も私が退院してきてから妹は夕飯を持ってきてくれるようになり、その時盛んに財産のことを話題にするので、私の財産を狙っていると直感した。
財産内容を伺うと、たくさん持っていた。
自宅マンションのほか、不動産は貸家が2軒、賃貸マンション2室、貸駐車場1か所。そして預金が1億円超。
商売で儲けたお金を、地道にコツコツと蓄えてきたとのこと。
そこで、自分が亡くなっていく上で、やっておかなければならないことは何があるかと考えたとき、自分が遺した財産のせいで兄弟姉妹が争いを起こしては困るということが頭にピンときた。今も兄弟姉妹は、お世辞にも仲がいいとは言えないので、争いになるのが目に見えてくるというのです。
そこで、私は、遺言書を作成することをお勧めしました。
彼女の考えている財産分配の大まかな内容は、先祖のお墓、そしてその中に入る自分のお骨を守っていってくれる長男に不動産すべてを、すぐ下の妹には、いままでいろいろ援助してきたので預金を少し、残った財産は残りの兄弟姉妹に平等になるように配分するというものです。
兄弟姉妹間の金額の差異は大きいものでした。兄弟姉妹には、“遺留分”がありませんので、遺言通りに配分されます。
しかし、このままでは、財産を多くもらいたいと狙っているすぐ下の妹が反発して、今以上に兄弟姉妹関係が悪化するのではないかと心配になります。
そこで、切り札の“付言事項”を書くことにしました。
まず、兄弟姉妹への感謝の気持ち。弟である長男にお墓守りをお願いすること。そして、すぐ下の妹になぜこのような遺言内容にしたのか、つまりあなたには生前一生懸命援助してきた、そしていつもあなたのことを気にかけていたことなどを綴ってくれました。
長女としての責任感がヒシヒシと感じる、そして暖かい内容のものでした。
そして、公証役場で公正証書として遺言を作成しました。
彼女は、公証役場から出るとき、晴れ晴れとしたお顔をしていらっしゃいました。
それから数か月したある日、弟である長男から彼女が亡くなったとの連絡がありました。
早速ご仏前にご焼香に伺いました。弟さんに亡くなられたときのことをお聞きしますと、非常に安らかなお顔をしていらっしゃったとのことでした。最後の言葉が「ありがとう」だったと。
それからしばらくしたある日曜日、彼女の自宅で相続人である兄弟姉妹全員に集まってもらって“遺言書披露”を行いました。
彼女が遺していった遺言書を、相続人全員の前で読み上げて、故人の遺志を伝えるのです。
第1条不動産について、第2条金融資産について、読み進めていくうちに、私の隣で聞いていたあのすぐ下の妹からこのような言葉が漏れてきました。
「あら、あなたたくさん貰うのね。私なんか全然ない。」と、隣の妹に言っているのです。
私は、やはり彼女は不満を持っているなと思うとともに、遺言執行がスムーズにいくかどうか不安がよぎりました。
しかし、遺言の最後に残した“付言事項”を読み上げ始めたところ、途中から彼女が泣き始めました。そして読み終わった時言いました。
「お姉さんにはいろいろ世話になった。その上また財産をもらえると思っていた自分が恥ずかしい。私なんかは、財産など貰えないのに、預金をもらえるなんで感謝しなければならない。」と。
この“付言事項”のお蔭で、相続人みんなの協力も得て、遺言執行はスムーズに進めることができました。
後日長男に会ったときこのように言われました。「姉の遺言のお蔭で、兄弟姉妹で相続争いもなく財産の分配ができました。その上仲がおかしかった兄弟姉妹関係も円満になった。天国の姉に感謝しています。」と。
遺言の力をあらためて感じた案件でした。