OXF-077は耐性菌の阻止だけではなく、
薬剤耐性をも破ってしまう!
細菌の抗菌薬に対する耐性を防ぎ、
さらには耐性をすでに獲得した細菌
の耐性も破壊する化合物を
イギリス オックスフォード大学
のチームが生み出した1,2)。
抗菌薬が手に負えない細菌
(薬剤耐性菌)
薬剤耐性菌が世界で増えていることは、
人類の健康や発展を脅かす一大事。
よくある感染症の多くが
ますます治療が難しくなっていて
薬剤耐性菌のせいで
年間127万例が死亡3)。
間接的なものも含めると
その数は4倍ほどの495万例に。
新たな抗菌薬を開発しないことには
薬剤耐性菌を発端とする死亡例は
増加の一途をたどります。
細菌が抗菌薬に抵抗力を獲得する仕組み
(耐性)
の1つは、
それら細菌の遺伝配列に
新たな変異が生じること。
シプロフロキサシン、レボフロキサシン
といったニューキノロン系
(フルオロキノロン)
と呼ばれる抗菌薬は
細菌のDNAを傷つけることで
細菌を殺します。
DNAが傷つけられた細菌は
その傷を修復して
変異を増やす経路を発動。
皮膚の傷が化膿してくるのは
皮膚の上にいる※黄色ブドウ球菌という菌が
傷から大量に侵入してくるから。
(傷がなければ、皮膚の防御バリアの
働きをしてくれています)
いろいろな抗菌薬が効きますが、
抗生剤を漫然と使っていると
抗菌薬に耐性を獲得した菌が発生。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
(MRSA)
MRSAを用いた研究によると
細菌が傷を修復してDNAの変異を増やし
薬剤耐性を獲得する経路は
ほとんどの細菌が持っている。
この経路に似た遺伝子配列は
哺乳類には見つかっていないので、
これを阻害する物質は
ヒトへの影響は少ない
と考えられています。
この経路の阻害薬はすでに
いくつか見つかっていて、
2019年に発見が報告された
IMP-1700
という化合物の加工品を
オックスフォード大学のチームが
いろいろと実験。
DNA損傷を促進しつつ
シプロフロキサシン耐性出現を阻害
する化合物OXF-077を発見。
シプロフロキサシンやその他の抗菌薬
とOXF-077を組み合わせると、
それらの抗菌薬は
より少ない量でMRSAの増殖を阻害。
また、シプロフロキサシンとOXF-077
の組み合わせは
耐性出現を有意に抑制し、
OXF-077は耐性抑制にとどまらず、
耐性をすでに獲得してしまっている細菌への
抗菌薬の効果をも復活させた4)。
薬剤耐性菌の世界的な脅威に対抗
できる薬剤の開発が進んで行くと思われます。
【引用文献】
1)Bradbury JD, et al. Chemical Science. 2024 May 16. [Epub ahead of print]
2)New molecule found to suppress bacterial antibiotic resistance evolution / University of Oxford
3)Antimicrobial Resistance Collaborators. Lancet. 2022;399:629-655
4)
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