運動誘発性ホルモンが

アルツハイマー病の抑制

 

 

運動中に分泌されるホルモンを用いた治療法が、

アルツハイマー病に対する

次の最先端治療となるかもしれない。

 

筋肉からホルモンのことを

マイオカインと言います。

 

たくさんの種類が見つかっています。

 

今回は去年書いた記事の焼き直しです。

 

 

運動により骨格筋から分泌される

イリシン(irisin)が、

アルツハイマー病の特徴である

アミロイドβの蓄積を減少させる可能性。

 

アメリカ、マサチューセッツ総合病院発

 

 


運動がアミロイドβの蓄積を減少させることは、

アルツハイマー病モデルマウスを用いた

研究によりすでに示されています。

 

 

しかし、そのメカニズムは不明でした。

 

 

 

 

運動をすると、骨格筋からの

イリシン分泌が促されて、血中濃度が上昇。

 

 

 

イリシンには脂肪組織中の

糖と脂質の代謝を調節し、

 

通常の内臓脂肪の白色脂肪組織を

体温産生など代謝の盛んな褐色脂肪

変化を促すことで、

 

エネルギー消費量を増大させます。

 

 

 

過去の研究で、イリシン

ヒトやマウスの脳に存在しますが、

 

アルツハイマー病患者や

アルツハイマー病モデルマウスでは

イリシンが低下していることが

報告されています。

 

 

研究部ループはイリシン

脳内のアミロイドβ

の蓄積に及ぼす影響について検討。



私たちの脳は1000億個以上のニューロンと、

その10倍以上ものグリア細胞

から成り立っています。

 

 

グリア細胞は、

神経細胞の生存や発達機能発現のための

脳内環境の維持と代謝的支援を行っています。

 

 

グリア細胞には神経伝達速度を上げるための

ミエリン鞘を作る「オリゴデンドロサイト」、

 

中枢系の免疫担当である「ミクログリア」。

 

 

近年注目を集めているのが

グリア細胞の中で最も数が多い

「アストロサイト」

 

 

星のような外見から命名された

アストロサイトは、

 

実は細胞体からスポンジのように

複雑な形の突起を伸ばして、

脳の空間を満たしています。

 

 

 

アストロサイトの役割は、

神経細胞に栄養を与えたり、

過剰なイオンや神経伝達物質

を速やかに除去することにより、

神経細胞の生存と働きを助けています。

 

 

脳を有害物質から守る

血液脳関門をつくっているのも、

アストロサイトです。

 

 

 

歌舞伎、文楽ぶんらくに登場する

黒木綿もめんの詰めそでの着物を着て、

黒頭巾ずきんをかぶって舞台に出て、

 

俳優の演技や劇の進行の介添えをする

雑用係を「黒衣くろこ」と呼びます。

 

 

 

 

発見から100年もの間、

アストロサイトをはじめとするグリア細胞は、

神経細胞の働きを支える

「黒衣」であると考えられてきました。

 

神経細胞のように、活動電位を発しない、

サイレントな細胞だと思われたからです。

 

 

 

しかし近年、アストロサイトが

シナプス伝達効率や局所脳血流の制御という、

脳機能にとって本質的な役割も果たしている

ことも明らかになってきました。

 

 

 

睡眠時に脳から有害物質を取り除くのも、

アストロサイトの働き

 

ということも分かり始めています。

 

 

 

このようにアストロサイトは、

たった一つの細胞で

神経の生存環境の維持から

神経伝達・脳血流の制御まで行う、

驚くほど多機能な細胞です。

 

 

イリシンを投与することで、

脳のグリア細胞である

アストロサイトから分泌される

アミロイドβ分解酵素

ネプリライシン濃度と活性化が上昇し、

 

アミロイドβレベルが

著しく低下することが明らかに。

 



マウスで、血流に注入された

イリシンが脳内に到達。

 

このことは、イリシンは治療薬となる

可能性を示唆します。

 

 

 

筆者らは

アルツハイマー病の予防法や治療法の開発において、

イリシンとネプリライシンに関わる経路が

新たなターゲットとなり得ると述べています。

 

【引用文献】

イリシンは、ERK-STAT3シグナル伝達の下方制御に続いてアストロサイトからのネプリライシンの放出を誘導することにより、アミロイドβを減少させます(仮邦題)

Irisin reduces amyloid-β by inducing the release of neprilysin from astrocytes following downregulation of ERK-STAT3 signaling.

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

過去のブログから