【9513】電源開発/豪州石炭事業の市況沈静化で大幅減益も、年100円配当を下限設定。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9513】電源開発 (東証プライム) OP

 

現在値 2,425円/100株  P/E 10.5  P/B 0.35  3月配当 9月配当

 

04年に政府が民営化で株放出。電力卸が主。電源は石炭火力と水力中心。

 

配当は3月末・9月末合計年100円予想のため、配当利回りは約4.12%となります。

電源開発は株主優待制度を導入しておりません。

 

業績を確認していきます。

■2022年3月期 売上高 10,846億円、経常利益 728億円、EPS 380円 

■2023年3月期 売上高 18,419億円、経常利益 1,707億円、EPS 621円

■2024年3月期 売上高 12,579億円、経常利益 1,185億円、EPS 425円 

■2025年3月期 売上高 15,500億円、経常利益 620億円、EPS 229円 ce

□2024年6月1Q 売上高 2,590億円、経常利益 350億円、EPS 139円(7/31)

□2024年9月2Q 売上高 6,200億円、経常利益 390億円、EPS 136円 四e

 

2024年3月期の売上高はYoY▲31.7%の12,579億円、経常利益はYoY▲30.6%の1,185億円となり、3割の減収減益ながら利益は当初計画・見通しを上振れました。海外は米ジャクソン火力の通期稼働効果があったものの、国内に関しては水力発電は横ばい、計画・非計画の検査停止が多かった火力発電の稼働率が低下が痛打となり、電気事業全体の販売量は計画714億kWh→実績603億kWhとなったほか、エネルギー原価一服にによる単価も下落も響きました。

 

進行期である2025年3月期通期予算については、売上高がYoY▲8.2%の11,550億円、経常利益がYoY▲47.7%の620億円を見込んでいます。電気事業全体の販売量前提については、橘火力1号機の設備トラブルによる停止・修繕影響を織り込み、国内販売量計画はYoY+8.7%の656億kHhを見込みます。利益面では期ズレ分の修繕費が増加するほか、石炭価格の低迷で好採算の豪州石炭事業が大幅減益となることから、全社では実に5割弱の減益予想となります。7月31日に開示済の1Qは売上高2,590億円&経常益350億円と強含みながらも、期ズレ修繕費が未だ入っておらず、やや割引く必要がありそうです。

 

当社は終わった2024年3月期を最終年度とする3年中計で、経常益900億円に引き上げる計画は大幅な過達で終了しています。また、この中計とは別にカーボンニュートラルを志向した「BLUE MISSION2050」という超長計において2030年までに再エネ開発等に7,000億円を投資する計画であり、①再生可能エネルギーや原子力によるCo2フリー電源の拡大、②Co2フリー水素の製造と発電等による排出ゼロ化、③電力ネットワークの安定化と増強の3点に取り組む計画です。

 

今般公表の新3年中計(~2026年3月)では、直近2ヵ年の石炭価格高騰による豪州炭鉱権益からの大幅な一過性利益が剥落することを理由に、終期経常利益900億円を見込んでおり、従来中計の目標水準をそのまま据え置いています。なお最懸案事項であり、Co2フリー発電の中核となる大間原発(1.3GW)の安全強化対策工事の終了見込み時期は2029年頃であり、周辺自治体・住民とも協議中のため、業績寄与は2030年以降となります。

 

今次中計期間の投資額は3,000億円を計画しており、再エネを中心に東西連携送電網増強、GENESIS松島、火力発電トランジション(アンモニア・水素)、原子力に投資します。

石炭火力(約9GW)への依存度が高く、非効率石炭火力(約2.7GW/高砂1・2号機0.5GW、竹原3号機0.7GW、松島1号機0.5GW、松浦1号機1.0GW)を2030年までに休廃止ないしは建替することとし、他はアンモニアや水素・CCSにトランジションしていく方針です。

 

他の再エネとしては、国内事業者2位となる風力発電の出力は内外合計755MW(建設中等を含む)であり、事前調査中の拠点が800MW程存在することから、現行規模の2倍弱のパイプラインを有しており、拡大させる方針です。他方、太陽光については、現状の出力は内外合計40MW弱に過ぎず、本年に稼働開始する米レヒュージオも持分換算100MWに過ぎないことから、売却も含めた検討をしている模様です。

 

財務状況については、自己資本比率は35.0%まで更に改善しており、目標としていた30%水準を既に超過しています。今次中計における株主還元ポリシーについては「配当性向30%、年100円下限、上振れで追加還元」としており、配当は10円増配となる年100円配当(配当性向43.5%)を予想しています。なお会社側では大間の稼働開始後は、これ以上の財務改善は不要とする見方を示しているため、2030年以降は更に還元余資が生まれるものと解されます。
 

*参考記事① 2023-10-11 2,326円 OP

【9513】電源開発/エネルギー価格一服で後退、株主還元の強化が次なる投資論点。

 

*参考記事② 2023-02-27  2,144円 NT

【9513】電源開発/豪州石炭事業と米ジャクソン火力が牽引、予想配当性向13%で再増配の公算。

 

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