【9602】東宝/大型タイトル剥落とシネマズ値上げで苦戦気味も、東京楽天地のTOBで穴埋めか。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9602】東宝(東証プライム) OP

現在値  4,779円/100株  P/E 21.3  P/B 1.81  2月配当株主優待 8月配当株主優待

阪急系。発祥は映画興行。邦画配給、興行収入で断トツ。映画跡地利用の不動産事業も。
配当は年2回・合計70円配当のため、配当利回りは約1.46%となります。


東宝は株主優待制度を実施しており、2月末・8月末の単元株主に対して、年2回2,000円相当の映画観賞券を進呈していますので、配当優待利回りは約2.30%となります。

 

■2022年2月期 売上高 2,283億円、営業利益 427億円 EPS 167.2円  

■2023年2月期 売上高 2,442億円、営業利益 448億円 EPS 190.3円

■2024年2月期 売上高 2,833億円、営業利益 592億円 EPS 259.5円  

■2025年2月期 売上高 2,800億円、営業利益 550億円 EPS 223.5円 ce

□2024年8月2Q 売上高 1,390億円、営業利益 285億円 EPS 117.6円 四e

 

2024年2月期の売上高はYoY+16.0%の2,833億円、営業利益はYoY+32.0%の592億円となり、中間の増額見通しを更に上回って着地しました。営業事業は“コナン 黒鉄の魚影”、“君たちはどう生きるか”、“ゴジラ-1.0”、“ハイキュー”がヒットしたほか、興行事業もこれら自社配給にくわえ、他社配給の“あの花”、“ガンダムSEED”が貢献したほか、4月のららぽーと門真開業による上乗せがありました。他方、不動産事業は2023年2月竣工の日比谷プロムナードビルがフル貢献したものの、償却費増で利益は実質横ばい圏止まりでした。


進行期である2025年2月期の予算については、売上高がYoY▲1.2%の2,800億円、営業利益はYoY▲7.2%の550億円を予想しています。営業事業はヒット継続の“コナン(同上)”に加え、“ゴジラvsコング”、“ウマ娘 新時代の扉”、“キングダム 大将軍の帰還”、“ヒロアカ ユアネクスト”の貢献が見込まれるものの、東宝東和の“スーパーマリオ”や“ミッション・インポッシブル”といった大型タイトル剥落が大きく、興行事業含め微減収の想定です。特に興行の5月月次がYoY60%と想定以上に悪く、1Q公表前ながら早くも弱含みの状況です。


当社は2022年4月に長計を公表しており、創立100周年となる2032年2月期までの都合10年間で、営業利益750~1,000億円水準&ROE8~10%を目指すこととし、重点事項として①成長投資、②人材確保・育成、③アニメを第4の収益源とすること、の3点を挙げています。短期軸の中期目標として、この2025年2月期に最高益(営業益528億円)&ROE8%を目標に据えており、進行期予算に照らせば超過ペースであるものの、足許興行映画のネームの弱さやTOHOシネマズの2,000円への値上げが受容されていない可能性もあり、達成はやや不透明な情勢です。

 

①の投資は、向こう3年で延べ1,100億円(コンテンツ:500億円、不動産:500億円、新規シネコン&海外展開:100億円)を投じる計画です。コンテンツの中でも③でも掲げるアニメ育成が最大の注力事項となっており、アニメIPの取得(制作委員会出資)を推進しています。“葬送のフリーレン”や“薬屋のひとりごと”のアニメクールは終了したものの、“ヒロアカ 第7期”、“呪術廻戦 死滅回遊”が控えているほか、本年6月にはアニメスタジオのサイエンスSARUの全株式を取得しており、製作機能を強化しています。

 

500億円を投じる不動産事業は、旧東宝不動産物件を中心に約120もの潤沢な物件を抱えているものの、築年数の古い物件が多いことから順次建替・再開発を推進しています。ツインタワービル建替の“日比谷プロムナードビル”が開業したほか、渋谷東宝ビル建替の“渋谷二丁目17地区”が今年竣工予定となっています。このほか、持分法適用で興行事業や不動産事業を手掛ける東京楽天地(8842)に230億円余りを投じて、上場廃止の上で子会社化しており、楽天地分の上乗せが見込まれます。

 

財務については自己資本比率は74.5%と盤石な状態であるほか、政策保有株約500億円にくわえ、賃貸不動産の含み益は4,000億円(推定)を考慮すれば、見かけ以上の好財務体質といえます。一方、株主還元は大変渋い状態が続いていましたが、今次中計では「配当性向30%+機動的な自社株買い」という還元ポリシーが示されており、進行期の配当ついては現段階で15円減配の年70円配当(配当性向31.3%)がガイドされています。


*参考記事① 2024-02-05  4,823円 OP

【9602】東宝/アニメは想定超の事業進捗がみられるが、翌期の配給パイプラインが弱い。

 

*参考記事② 2023-07-21 5,730円 OP

【9602】東宝/宮崎駿・マリオ・コナンなど自社配給作品が絶好調、1Qで通期増額もなお保守的。

 

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