【4443】Sansan/名刺管理はアップセルで成長維持も、急成長する請求書管理の持続性が論点。 | なちゅの市川綜合研究所

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【4443】Sansan(東証プライム) OP

現在値  1,189円/100株  P/E --.- P/B 15.8  5月配当(無配) 株主優待なし

クラウド型名刺管理の法人向けサービス草分け。個人向けビジネスEightも展開。

 

配当基準日は5月末ですが、無配予想となっています。

Sansanは株主優待制度を導入していません。


業績は以下の通りとなります。

■2021年5月期 売上高 161億円、営業利益 7.3億円 EPS 5.9円 

■2022年5月期 売上高 204億円、調整営業益 7.3億円 EPS 6.8円 

■2023年5月期 売上高 255億円、調整営業益 9.4億円 EPS▲1.1円

■2024年5月期 売上高 326~336億円、調整営業益 12.4~18.5億円 EPS(非公表)ce

□2023年8月1Q 売上高 75.0億円、調整営業益 1.4億円 EPS▲0.2円(10/12)

□2023年11月2Q 売上高 160.0億円、営業利益 4.0億円 EPS 2.2円 四e

 

2023年5月期の売上高はYoY+24.9%の255億円、調整後営業利益はYoY+28.9%の9.4億円となり、予算レンジ内で落着しました。法人向けのSansanは同+15.0%、個人向けのEightは同+29.5%、ARRは同+28.3%の254億円に其々伸長しました。営業体制強化にでSansanが想定超の成長加速となったほか、解約率(OCC)も0.44%と過去最低となりました。注力中のBillOneも法令改正等でARRが目標の30億円→37億円に上振れし、他方、利益面については、広宣費・人件費・販管費を計37億円積み増し、微増益に留まりました。

 

進行期である2024年5月期の予算は売上高がYoY+28.0%~32.0%の326~336億円、(調整後)営業利益は同YoY+31.7%~96.6%の12.4億円~18.5億円を見込みます。Sansan/Eightはプロダクト刷新効果発現による成長基調維持を見込むほか、BillOneはインボイス導入と電帳法改正の“仮需”継続でARRを37億円→70億円以上まで引き上げる計画です。他方で利益面については、新規採用を400人以上積み増すほか、実開催イベントなど広告宣伝費に積極投資することから、黒字幅は抑制される見通しです。

 

当社は2025年5月期までの3ヵ年中計における売上高CAGRを「20%超」に下方修正していましたが、Sansanの成長率が足許でも然程落ちていないほか、Bill Oneのモメンタムが想定超となっていることから、「20%中盤以上」に再度引き上げています。他方で利益面については、人件費・広宣費を積極的に投じるものの、株式報酬とのれん等償却費を戻し入れた調整後営業利益ベースで、Sansan/Bill One両事業の合算で100億円超確保(Eightは黒字化と安定利益計上)を確保する目標としています。

 

今後の成長戦略については、Sansanが名刺管理市場で80%超の支配的シェアを握っているものの、全従業者ベースTAMの3%程に留まることから、開拓余地は依然大きい状況です。リモート増加で名刺交換機会自体は減少しているものの、従来の単純な名刺管理機能にGmailやOutlook等とのAPI連携により、メール接触まで可視化させた営業促進DX機能の実装を済ませています。この機能性向上により、既存顧客へのアップセルを推進し、ARPUの高単価化を図ります。

 

注力中のBillOneについては、電帳法改正とインボイス導入による“仮需”により成長モメンタムが想定超に膨らんでいる一方、需要一巡でブレーキがかかるリスクが想定されます。会社側では法改正への義務対応だけでなく、業務効率化といったBPO要素もあることから、足許で大量採用した営業マンの多くをBillOneに振り向けているものの、電帳法が改正される2024年1月以降の新規受注の可視性がまだ十分でない印象です。

 

以上から、顧客拡大フェーズの一巡で成長鈍化が予想されるSansanが、一転してアップセルで成長カーブを維持出来る目が出てきた一方、目下破竹の成長を遂げるBillOneは法改正の前後で急失速する可能性があることから、その動向を見極める状況に入ったものと考えています。なお、これらプロダクト以外の上乗せ要素として、資本業務提携済ながら連結前のUnipos(Fringe81)の貢献開始や、(成長力は未知数であるものの)契約総合管理の新プロダクト・ContractOneの存在が挙げられます。

 

なお財務面については、自己資本比率40.5%と高水準を維持しており、前受金控除後のネットキャッシュ120億円と盤石な状況です。他方でM&Aも中長期的な成長戦略の柱のひとつに据えていることから財務温存を優先するとみられ、初配については相当先になろうかと思います。

 

*参考記事① 2022-11-01  1,481円 NT

【4443】Sansan/インボイス追い風でBillOne引き合い増、高い成長モメンタムが続く。

 

*参考記事② 2021-10-08 2,525円 *分割遡及修正済

【4443】Sansan/名刺交換機会減少もARRは順調増、Fringe81を事実上の買収へ。

 

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