【4432】ウイングアーク1st/先行投資で減益予想、まずはトップライン成長を確認したい。 | なちゅの市川綜合研究所

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【4432】ウイングアーク1st(東証プライム) OP

現在値 1,629円/100株  P/E 16.0  P/B 1.81 2月・8月配当 株主優待なし

帳票・文書管理ソフトと企業内データ活用支援の2本柱。間接販売が主。MBOで再上場。


配当は2月・8月の年2回、合計42円60銭のため、配当利回りは2.62%となります。
ウイングアーク1stは株主優待制度を導入していません(※再上場前はクオカード優待が存在)。

業績を確認していきます。 当社は2021年のIPO銘柄となります。

■2019年2月期 売上高 172億円、営業利益 48.8億円、EPS 105.6円 

■2020年2月期 売上高 186億円、営業利益 56.8億円、EPS 130.7円 

■2021年2月期 売上高 182億円、営業利益 32.0億円、EPS 79.5円  

■2022年2月期 売上高 198億円、営業利益 59.8億円、EPS 132.2円  

■2023年2月期 売上高 210億円、営業利益 47.5億円、EPS 101.8円 ce 
□2022年8月2Q 売上高 102億円、営業利益 23.0億円、EPS 21.3円 四e 

2022年2月期の売上高はYoY+8.5%の198億円、営業利益はYoY+86.7%の59.8億円となり、対前期・対予算ともに増収増益となりました。帳票・文書管理のBDS事業(SVF/SPA)が電帳法改正、在宅勤務増加によるペーパレス需要を幅広く取り込み同+7.2%となったほか、データ活用のDE事業も主力のSalesforce以外にHACCP関連やOEM提供を強化したため+11.1%と好伸しました。なお各種KPIについては、ストック比率は微減の61.4%、クラウド成長率は+21.1%、保守継続率は93.2%と良好な推移を示しました。


進行期である2023年2月期の通期予算は、売上高がYoY+5.9%の210億円、営業利益がYoY▲20.6%の47.5億円を見込んでいます。BDS事業については、帳票管理製品のSPAをInvoice Agentに統合し、対応期限の迫る電帳法改正とインボイス制度需要の取込を図ります。DE事業については、単なるデータ活用PF提供に留まらず、継続的なコンサルティングによるノウハウ提供と付加価値の創出に取り組みます。増収を見込む一方、2割もの減益となるのは、セミナーや広告宣伝、ブランディングといった認知度向上のための戦略投資に18億円を投じることに由り、“なかりせば”YoY+6%程度の増益となる計画となっています。

 

当社は2021年のIPO銘柄ですが、2013年に現会長の内野氏とオリックスによるMBOで非公開化した1stホールディングスの再上場案件です。途中でスポンサーがオリックスからカーライルへと変わり、カーライルはIPO時に当社株の多くを手放したものの、伊藤忠とCTCの合弁会社が筆頭株主(22.2%)となっているほか、東芝デジタルS(13.5%)、PKSHATechnology(3.4%)、Sansan(2.3%)といった、本邦DX関連でネームが強い株主が大株主に名を連ねています。

 

年初に開示した中計では、約5年後の2027年2月期に①クラウド成長率CAGR40%(全社売上高198億円→320億円)、②リカーリング比率75%、③調整後EBITDAを73億円→120億円に引き上げる計画としています。但し、向こう3年で先行投資に55億円(営業人員と広告費に24億円、ブランディングに15億円、開発に12億)を投じることとしており、CAPEXでは無く殆どが費用性投資のため、中計序盤の3年間は営業利益が年18億円押し下げられる計算となるため、当面は利益面のインプレッションが悪い展開が予想されます。

 

会社側アナウンスによれば、電帳法改正やインボイス関連の受注・引き合いは依然旺盛とみられ、電帳法の宥恕期間に当たる今年と来年で一気に刈り取る方針としており、そのための先行投資が膨らむ構図となります。そのため利益は“二の次”となり、トップラインの順調な伸長が確認されることが主な投資論点となりそうです。最近の取組事例としては、同根の伊藤忠系である戦略コンサルのシグマクシス、および辻・本郷税理士法人と提携したほか、既存顧客であるりそなHDのデジタル子会社に出資するなどしており、提携先のウイングは順調に拡大しています。

 

なお、株主還元については、2022年2月期の配当を向こう3年の下限としているため、年42円60銭(配当性向42.2%)が据え置かれる見通しです。なお、通常の配当性向は30%基準であり、ボトムラインの純利益で43.5億円を超えた場合は増配可能性も残りますが、かなりハードルが高いものと解されます。

 

*参考記事① 2022-01-19 1,562円 BY

【4432】ウイングアーク1st/3度目の正直で再上場、DX潮流と伊藤忠支援も翌期は減益公算か。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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