【9722】藤田観光/創価学会への太閤園売却で財務ひと息、進行期予算はやや保守的か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9722】藤田観光(東証プライム) OP

現在値 2,656円/100株  P/E --.-  P/B 1.12 6月優待 12月無配・優待

椿山荘、太閤園を擁する高級宴会場名門。ワシントンホテル・小涌園も。
配当基準日は12月末ですが、無配に転落しており、配当予想も未定となっています。

藤田観光は株主優待制度を導入しており、6月末・12月末現在の単元株主に対し、椿山荘やワシントンホテルの宿泊50%・飲食20%が割引となる優待券を半期に10枚ずつ進呈しています。

業績を確認していきます。
■2018年12月期 売上高 692億円、営業利益 11.0億円 EPS 46.5円 

■2019年12月期 売上高 689億円、営業利益 2.8億円 EPS▲23.8円 
■2020年12月期 売上高 266億円、営業利益▲206億円 EPS▲1,872円 

■2021年12月期 売上高 284億円、営業利益▲158億円 EPS 1,058円 

■2022年12月期 売上高 398億円、営業利益▲60.0億円 EPS▲492.2円 ce

□2022年3月1Q 売上高 79.5億円、営業利益▲22.1億円 EPS▲109.8円(5/12)
□2022年6月2Q 売上高 166億円、営業利益▲46.0億円 EPS▲383.7円 ce

2021年12月期の売上高はYoY+6.7%の284億円、営業利益はYoY+48億円の▲158億円となり、予算比は無いものの赤字幅が縮小しました。主力のWHG事業は、長期滞在や東京五輪関連の報道関係者・来賓客が寄与した一方、インバウンド回復遅れが響き、ADRはYoY▲17.4%(RevPAR換算▲13.6%)に続落しました。同様にリゾート事業のADRはYoY▲3.7%(RevPAR換算同▲16.0%)となった一方、L&B事業は椿山荘の庭園演出企画「東京雲海」投入や、ペントアップによる宿泊・婚礼部門の大幅回復や、堅調なゴルフ需要に支えられて急回復しています。


進行期である2022年12月期の予算は、売上高がYoY+39.2%の398億円、営業利益はYoY+98億円の▲158億円を見込んでいます。全般的に上期までは新型肺炎禍の影響を織り込み、インバウンドは3Q以降緩やかな回復(2019年比1割)程度を見込みます。かような前提から、WHG事業は依然纏まった赤字計上を見込むものの、ADR上昇が顕著な箱根リゾート事業や、椿山荘の婚礼単価の回復がみられるL&B事業均衡圏への復帰を睨みます。また、昨年開業のタビノス京都、グレイスリー台北の通期稼働効果と、終わった期のリストラ効果54億円が利益貢献することなどを踏まえると、やや保守的な予算と解されます。


当社は2024年12月期を最終年度とする5年中計を走らせており、進行期はその中間年度となっています。計画5年間で売上高を689億円→790億円、営業利益を2億円→40億円に其々引き上げる目標ですが、新型肺炎禍に入ってからの計画ではあるものの実態の織り込みが甘く、数時間的に既に達成困難圏と解されます。そのため1年前に計画をマイナー変更し、取組事項を①構造改革推進、②事業ポートフォリオ見直し、③経営管理体制強化、の3点に絞り、当面は足許の体制立て直しに注力します。

①の構造改革については、700人規模の解雇、給与・賞与のカット、外注業務の内製化、人事制度改革により、既に従来比で年間50億円強の利益改善効果を発現させています。また②については、本中計期間の新規開業施設を抜本的に見直しています。計画期間序盤のHT浅草(278室)・HT京都(190室)、HG台北(248室)、小涌園三河屋旅館(25室)こそ既に開業済みとなっているものの、“名有り”だったHT御徒町、HT東日本橋、HT浅草橋の開業を中止したほか、2023年以降開業“名無し”の5物件も全て白紙撤回しています。他方、昨年8月に小涌園(150室)で新設に着手したほか、ユネッサンの更新も予定しており、好調な箱根エリアには経営資源を割り振る方針です。

 

当社は財務体質改善のため、昨年主要施設の一角である大阪・太閤園(7,600坪)を創価学会に390億円で売却し、特別利益329億円を計上し、債務超過を免れています。また、9月には政投銀の“DBJ飲食・宿泊支援ファンド”に150億円のA種優先株式を発行し、年4%の利払い負担はあるものの、資本性資金を大幅に積み上げることに成功しており、足許の自己資本比率を26.0%まで劇的に回復させています。また、税金考慮後でも推定含み益300億円以上が見込まれる椿山荘(15,000坪)の不動産価値はあまりに大きく、インバウンドは今後は回復基調にあると見込まれるものの、最悪の場合でも「あと一手」が残る形となります。

 

*参考記事① 2018-04-28 3,320円 OP

中計大幅減額も、椿山荘の含み資産は莫大・藤田観光(9722)。

 

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