【9728】日本管財/価格転嫁で採算性良化も、資本政策の“踏む込み不足”は明らか。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9728】日本管財 (東証1部) UP

現在値 2,749円/100株 P/E 18.3  P/B 1.82 3月配当優待 9月配当優待

ビルの設備・警備・清掃を中心とした総合管理会社。再開発物件に強み。
配当金は3月末・9月末の合計54円配当のため、配当利回りは1.96%となります。

日本管財は株主優待を導入しており、3月末・9月末の単元株主に対して、各回2千円相当のカタログギフトを進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.41%となります。なお3年以上の長期保有により株主優待が3千円分にグレードアップし、その場合の配当優待利回りは約4.14%となります。

業績を確認していきます。

■2018年3月期 売上高 964億円、経常利益 63.7億円 EPS 129円
■2019年3月期 売上高 979億円、経常利益 67.6億円 EPS 125円 

■2020年3月期 売上高 1,063億円、経常利益 73.2億円 EPS 117円 

■2021年3月期 売上高 1,041億円、経常利益 81.2億円 EPS 141円 

■2022年3月期 売上高 1,060億円、経常利益 83.0億円 EPS 149円 ce

□2021年6月1Q 売上高 236億円、経常利益 18.0億円 EPS 30.0円(8/3)
□2021年9月2Q 売上高 510億円、経常利益 37.0億円 EPS 66.8円 ce

2021年3月期の売上高は前期比2.0%減の1,060億円、経常利益は同12.4%増の81.2億円となり、期初予算を上回って着地しました。主力のBM事業において、新型肺炎禍により大規模修繕工事を含めた工事受注が減少したことによりトップラインが減少したものの、人件費・外注費といった原価の増加を理由に顧客へ料金改定を進めため、採算性改善が進みました。住宅管理事業についても同様に工事売上が減少したものの、契約更新と新規受注が順調に推移したほか、環境施設管理事業においてもごみ焼却施設等施設の新規受託と改定が進んだため、主要セグメントは全て5%超の増益と堅調な結果に終わりました。

進行期である2022年3月期の予算については、売上高が1.8%増の1,060億円、経常利益は2.1%増の83.0億円を予想しています。新型肺炎禍で主要都市部における空室率がやや上昇傾向にあり、家主のコスト削減意識が働きやすい状況下ではあるものの、当社としても全社でコスト削減を図り増益を目指します。他方、管理受託元からのスポット工事受注については、新型肺炎による中止や後ろ倒し案件の顕在化が期待されることから、復元増が見込まれます。なお、8月3日に開示済の1Qについては売上高236億円&経常利益18.0億円とで進捗しており、計画比では若干のビハインドとみられますが、工事案件次第で取り戻せる範囲にあるものと考えています。


当社は中長期的な業績の定量目標を掲げていないものの、基本戦略としてはPFIやPPPといった制度を活用して、公共系のFM受託を増やしていく方針であり、自治体の所有する公共施設の包括管理(いわゆる群管理)受注を狙っていく方針です。当社は上下水道管理施設やごみ焼却施設等の管理で多くの実績を有しており、独自の施設管理システムが高いコスト競争力を保持しているため、今後もコンスタントな受注の積み上がりが期待されます。既に沼田市(123施設)・筑西市(65施設)・湖西市(80施設)・明石市(158施設)・芦屋市(53施設)・浦添市(3施設)といった多くの地方自治体で採用されており、当該分野では業界首位となっています。

 

また、注力中の海外事業については、持分法で抱える加州KPPM社(50%)や、豪州PICA社(50%)といった海外の管理会社の業績が順調に推移しているほか、KPPM社は2019年に米同業のキーストーン社(年商25億円程度)を買収するなど、独自の業容拡大が進んでいます。また当社単体でも昨年にハワイ州最大の区分所有物件住宅管理シェアを持つハワイアナ社(年商30億円程度)の50%持分を取得するなどしており、海外については国内以上に順調な印象です。特に国内上場REIT(さくら総合リート)のAM事業については、運用会社ともどもスターアジアに取られてしまったことを踏まえると、その好対照ぶりは鮮明です。今後は国内事業でもDX化による遠隔コントロールや共有アプリ等によりコスト削減と生産性向上を図る方針であり、売上を伸ばさずとも採算性向上によりオーガニックな利益成長が出来るかどうかが注目点と言えそうです。

財務面については、有利子負債を差し引いたネット現金で約300億円を保有しているほか、約145億円の有価証券も保有しているため、じゃぶじゃぶの財務状態となっています(自己資本比率は68.3%)。他方、配当については2円増配の年54円配当を予想しているものの、配当性向は36.0%に過ぎず、財務体質を鑑みれば還元不足は明らかです。会社側はCG対応として、投資有価証券の入替と非営業目的の持合解消を進めているようですが、横ばいで推移する有価証券残高を見れば踏み込み不足は明らかであり、この辺の資本政策の見直しこそが最大の投資論点と考えています。

 

*参考記事① 2020-07-16 1,945円 OP

【9728】日本管財/さくらREIT取られるも、国内外ともに順調増で安心感。

 

*参考記事② 2018-06-22 2,254円 OP

業績底堅いが、好財務を活かした一層の株主還元に期待・日本管財(9728)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

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