【1605】INPEX(国際石油開発帝石)/油価反転で一気に好転、配当性向引上げで追加増配も。 | なちゅの市川綜合研究所

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【1605】国際石油開発帝石(現INPEX/東証一部) BY

現在値 735円/100株  P/E 11.2 P/B 0.41  12月配当優待 6月配当

原油・ガス開発生産国内最大手。政府が黄金株保有。豪州でLNG案件(イクシス)操業。
今期予想配当金は年2回・合計27円のため、配当利回りは約3.67%となります。

国際石油開発帝石は株主優待制度を実施しており、12月末に4単元を保有する株主に対して1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、4単元保有時における配当優待利回りは約4.01%となります。なお、2年以上保有の場合は進呈額が2倍、3年以上保有の場合は3倍となりますので、同利回りはそれぞれ約4.35%、約4.69%となります。

業績を確認していきます。

■2018年3月期 売上高 9,337億円、最終利益 403億円 EPS 27.6円 

■2019年3月期 売上高 9,713億円、最終利益 961億円 EPS 65.8円 

■2019年12月変 売上高 10,000億円、最終利益 1,235億円 EPS 84.6円

■2020年12月期 売上高 7,710億円、最終利益▲1,116億円 EPS▲76.5円(2/10)

■2021年12月期 売上高 8,830億円、最終利益 1,000億円 EPS 68.4円 ce(2/10)

★2021年12月期 売上高 9,941億円、最終利益 1,302億円 EPS 89.1円 cons.

□2021年6月2Q 売上高 4,200億円、最終利益 380億円 EPS 26.0円 四e

 

2020年12月期の売上高は前年同期間比34.2%減の7,710億円、最終利益は▲1,116億円で着地し、期初予算からは大きく下方乖離したものの、3Q修正予算に対しては上振れて尻上がりで落着しました。各種指標の前提については、当初想定油価はバレル60$、為替(¥/$)は110円で設定していましたが、世界的な新型肺炎拡大による石油需要の減少が大きく響いて通期実績はバレル43.2$、為替(¥/$)は106.7円と何れも不利方向に振れました。2019年に出荷を開始した”イクシス”が順調な生産増を続けているほか、“プレリュード”のランプアップや、米州シェールガスの“イーグルフォード”の生産増も加わり、原油換算したネット生産量(日量)は前年同期間比0.3%増の57.3万バレルまで増加したものの、件の油価安が大きく響いた格好となります。なお、“イクシス”については通期で400億円程度の貢献があった模様です。

 

進行期である2021年12月期の予算については、売上高が14.5%増の8,830億円、最終利益は黒転の1,000億円を見込んでおり、通期の油価前提はバレル53$、為替(¥/$)は103円で設定しています。V字回復となるのは実績期の低油価と減損といった一過性損失剥落による損益改善効果が主因であり、そこだけで1,600億円の損益が良化するほか、昨年実施したコスト削減効果の通期貢献、越サオバンガス田の引当金戻入益110億円が寄与します。なお、“イクシス”単独では通期600億円程度の利益貢献を見込んでいます。足許の油価は新型肺炎禍前の水準であるバレル60$近辺で推移しており、当時よりも生産コストが削減していることを考慮すれば、現時点では対予算で強含みで推移していると判断されます。

 

今期は5ヵ年中計の4年度目となっており、最終年度の2022年12月期に売上高9,337億円→13,000億円、最終利益403億円→1,500億円(前提油価バレル60$、為替(¥/$)110円)を目指しています。本中計最大の目標であり、20余年の歳月と4兆円の総事業費を投じた豪州沖・大型LNGプロジェクトである“イクシス”については、2019年に完工しています。“イクシス”は足許時点においても順調な生産が出来ており、今後1~2年でフル生産となることから、バレル60$前提であればほぼこの“イクシス”等のいくつかの大型プロジェクトだけで最終利益目標は達成可能な目算となっており、現時点の油価水準(60$)を考慮すれば、中計の目標水準に手が届く蓋然性が再び高まってきたような状況です。

 

“イクシス”については、周辺に18つの探鉱鉱区を保有し、目下では“クラウン”“ラセタ”“ミセタ”“バーンサイド”など9つの鉱区のガス構造の発見が進んでおり、今後は“イクシス”の既存施設を利用して生産を進めることが期待されています。また同様に大型PJである“アバディ”についても、2019年10月にインドネシア政府と締結している生産分与契約を従来の2025年期限から2055年に延長したほか、2020年2月にはインドネシア国営電力会社、国営肥料会社との間で国内向けLNG・天然ガスの供給契約を締結していますが、本格的な収益寄与は2020年台後半となる見込みです。

 

このように低油価局面を脱し、業績の先行き的には大分明るさを取り戻してきたものの、一向に株価バリュエーションが改善しないのは、ひとえに炭素銘柄としての位置付けが大きいからとみられます。会社側でもそれは重々認識しており、本年早々にCO2純ゼロ(Scope1+2)、再エネ、水素事業、カーボンリサイクルといった事業に年間200~300億円を投じることを公表しています。元より当社はMSCIの環境格付でAAAを受けており石油他社比では先行しているものの、今後天然ガスを水素とCO2を分離し、CO2を地下貯留することでカーボンフリー水素の供給を目指すほか、アブダビでのグリーンアンモニア事業の検討を開始するなど、足許で更にESG周りの取組を強化しています。

 

株主還元方針については、本中計期間では配当性向30%水準&年24円を下限配当としているものの、期初時点から3円増配となる年27円を予想しています。この増配は案外であり、計算上の配当性向は39.4%となるため、もしこのまま油価が堅調に推移すれば年30円を軽く超えることとなり、更に増配の期待がかかります。

 

*参考記事①  2020-11-13  557円  OP

【1605】国際石油開発帝石/劇的な油価安の影響大きいが、最悪期は脱しつつあるか。

 

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