【2685】アダストリア/最終赤字予想ながら3Qまで好調、好財務活かし株主還元は高水準。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2685】アダストリア(東証1部) OP


現在値 1,994円/100株 PER--.- PBR1.70 2月配当優待 8月配当

カジュアル衣料店をSC内軸に展開。グローバルワーク等ブランド多数。
配当金(実績ベース)は2月末・8月末の年2回で合計40円で、配当利回りは約2.01%となります。

アダストリアは株主優待制度を実施しており、単元株を保有する2月末の株主に対して、3,000円分のお買い物券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.51%となります。なお、2年超の長期保有で優待額が5,000円になるので、その場合の同利回りは約4.51%となります。

業績を確認していきます。 

■2017年2月期 売上高 2,036億円 営業利益 149億円 EPS 242.5円 
■2018年2月期 売上高 2,227億円 営業利益 50.0億円 EPS 18.3円 

■2019年2月期 売上高 2,262億円 営業利益 71.0億円 EPS 82.6円 

■2020年2月期 売上高 2,223億円 営業利益 128.0億円 EPS 135.1円 

■2021年2月期 売上高 1,890億円 営業利益▲10.0億円 EPS▲46.6円 ce修正
□2020年8月2Q 売上高 796億円 営業利益 ▲44.1億円 EPS▲52.2円

□2020年11月3Q 売上高 1,328億円 営業利益 11.0億円 EPS 26.1円(12/29)

2020年8月期の売上高は前年同期比26.9%減の796億円、営業利益は赤転の▲44.1億円となり、未定としていた期初予算との比較はないものの大幅な減収減益となりました。期初から新型肺炎の影響を受け、入居する商業施設の休業等により、4月・5月と休業や大幅な時短営業を強いられたものの、6月からは概ね平常通りの営業を再開し、上期の既存店売上高はおよそ7割水準となりました。出退店については、30店を出店する一方、15店を退店し、純増15店となりました。全社ではトップラインの減少が大きく響いたものの、家賃減免や人件費減、夏物仕入効率化等により損益悪化は会社側想定よりも軽度で済んだものとみられます。

 

2021年2月期通期の見通しは未定としていたものの、7月16日に公表に踏み切っており、売上高は前期比15.0%減の1,890億円、営業利益は同赤転の▲10.0億円を予想しています。去る12月25日に3Q決算が開示されていますが、売上高は前年同期比19.1%減の1,328億円、営業利益は同90.7%減の11.0億円と黒字転換しており、4Qでまた沈む可能性を考慮しても、概ね損益トントンを見込む通期見通しに対する進捗はまずまずとみられます。3Q単独の既存店売上高は、都心型店舗の多い「エレメントルール」店が弱含んだものの、既に売上高構成比の3割を占めるECが年率2割強ものスピードで伸びて穴埋めしているため、前年同期比95%水準まで大きく回復しています。

 

本来であれば今期は3年中計の最終年度の位置付けであり、営業利益率8%(1年目と2年目の実績は3.2%→5.8%)、ROEを15%(同7.5%→11.6%)というKPIの達成が十分視野に入っていましたが、今次新型肺炎の影響もあり、目標値を取り下げています。長らくの課題であった主要ブランドの顧客等再定義といったMD改革が奏功し、“トップライン目標を達成するための在庫投げ売り”に歯止めがかかって営業利益率が良化してきた矢先でしたが、最後に水を差された格好となりました。

 

4年先の2025年を目途にした定性的取組み(業績定量目標なし)を開示しており、①多ブランド化、②ECとコト消費強化、③海外強化、④飲食等外部提携戦略、の4点を注力事項としています。①については「LOWRYS FARM」や派生の「LEPSIM」を愛用していた当社女性顧客層の高齢化にともない、手薄だった40~50代女性向けブランドである「Elura」を開発しています。従来よりかなり鮮明にターゲティングを実行したこともあり、極めて好調に推移しており、EC店も併せて10店展開まで成長しているほか、足許では60代女性向けに「Utao:」も開発しており、中高齢層の取込に注力しています。②については、新型肺炎禍でECは既に売上高構成比の3割を占めるまで成長しており、引き続き自社サイトである「.st(ドットエスティ)」の強化と店舗を絡めたオムニチャネル化の推進により、中抜きされるZOZO等の外部サイトからの顧客吸引で好採算化を図ります。

 

財務の状況については、当社は無借金経営を継続しており(※主力4行に300億円のコミラインを設定済)、足許時点で192億円の現金を丸抱えする好財務のため、自己資本比率も52.9%をキープしており、資金繰りには全く問題がない状況です。そのため、従業員給与も減額せずに支払っているほか、今次公表された配当予想についても10円の減配となるものの、最終赤字予想ながら年40円と高水準を維持しています。また、これとは別に発行済株式の4%強に相当する36.7億円分の自社株買いを実行していることから、会社側の還元政策からはかなりの余裕も見受けられます。

 

*参考記事① 2020-01-16 2,381円 OP

【2685】アダストリア/暖冬懸念あるが今期は逃げ切りか、改めて増配期待。

 

*参考記事② 2019-07-05 2,276円 OP

業績復調と、のれん償却負担剥落で大増勢か・アダストリア(2685)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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