【8953】日本リテールファンド投資法人/負ののれん積み上がり、分配金下限4,500円は盤石か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8953】日本リテールファンド投資法人(東証REIT) NT


現在値 178,600円/1株 PER17.6  P/NAV0.81  2月分配 8月分配

三菱商事とUBSとスポンサーとする商業施設特化型で、セクターでは最大規模。MMIと合併へ。

予想分配金は2月末・8月末の年2回合計9,072円配で、分配金利回りは約5.07%となります。

業績を確認していきます。なお第39期からはMMIとの合併のため投資口が1:2で分割されます。
■2019年8月期_第35期 営業収益 354億円、経常利益 128億円 DPU 4,430円 

■2020年2月期_第36期 営業収益 320億円、経常利益 128億円 DPU 4,500円

■2020年8月期_第37期 営業収益 308億円、経常利益 121億円 DPU 4,500円 

■2021年2月期_第38期 営業収益 298億円、経常利益 107億円 DPU 4,500円 ce

■2021年8月期_第39期 営業収益 396億円、経常利益 145億円 DPU 2,286円* ce

 

2020年8月期_第37期については、営業収益が前期比3.6%減の308億円、経常利益は同5.3%減の121億円で着地し、期初予算を下回る水準で推移したものの、分配金については前期並びに期初予想据置となる4,500円を維持しました。新型肺炎禍の本格化により、PF全体の館売上高は、4月に前年同月比46%、5月に同55%まで落ち込んだものの、6月以降は同83%水準を上回るなど回復がみられたほか、退店テナントも僅少に留まった模様です(但し減額要望のあったテナントのうち7割は減額に応諾)。新型肺炎による金額影響で▲13億円あったものの、大森・代官山2の期中取得や、川崎ルフロンの改装開業効果、ヨーカ堂錦町(持分40%)の売却益18億円による上積みで粗方カバーし、事業環境は悪いものの、仕上がり自体はかなり健闘した印象です。

 

進行期である2021年2月期_第38期の予算については、営業収益は第37期比1.3%減の316億円、経常利益は同4.3%減の122億円と減収減益を予想している一方、分配金も据置の4,500円を見込んでいます。川崎ルフロン改装効果の巡航化や、新型肺炎による減収影響が▲8億円まで縮小する見通しのためこれらが増収要素ではあるものの、第37期のヨーカ堂の錦町売却益18億円の剥落影響が大きくトップラインから減収となります。尚、既存物件については、6~8月頃に館売上高が85%(住宅地100%、郊外モール/GMS90%、都心60%)まで回復して、その後ある程度順調に戻して賃料減額交渉が無くなることを前提としているので、足許の新型肺炎のぶり返し状況を鑑みるとリスクの織り込みが弱い可能性がありますが、10億円を取り崩す予定の内部留保を増額する可能性や、足許でイオンモール大和の売却(第38期・第39期に50%ずつ)を公表しているため、分配金をキープする公算が高いとみられます。

 

当法人は本年8月28日に同一運用会社の総合型REITであるMCUBS Midcity(MMI)を吸収合併することを発表し、3月1日付で日本都市ファンド(JMF)に衣替えする予定です。合併比率は1:0.5であり、単元未満端数を出さないように当法人が2月末に1:2で株式分割を実施します。当法人、MMIとも引き続きNAV割れ状態のため、足許の株価水準であっても200億円ほどの負ののれんが一時差異等調整積立金(いわゆるRTA)として計上されるため、内部留保が一段と増加します。合併後のアセット種別は商業施設71%、オフィス16%、複合・ホテル等が13%となり、今後は郊外型商業施設の処分を進め、都心型に入れ替えるほか、オフィスを中心とした複合型の取得を進め、最終的には商業施設割合を半分程度まで落とす方針のようです。

 

なお統合初年度となる、2021年8月期_第39期の予算については、営業収益は第38期比32.7%増の396億円、経常利益は同35.8%増の145億円を予想しており、分配金については2口当たり4,572円と72円の増配を見込んでいます。新型肺炎影響がなくなる前提であるほか、MMI物件評価替えにともなう減価償却費や販管費・融資費用の減少が見込まれるため、運用会社に支払う合併報酬と合併コストが併せて▲13.5億円を飲み込んで増配を予定しています。新型肺炎影響ゼロは見立てが強いと考えられるものの、第39期にもイオンモール大和(残り50%)の譲渡益が12億円程立つ見通しとなったので、こちらの公表分配金も守られる公算が高そうです。

 

当法人は分配金目線の下限を4,500円(分割後2,250円)に置いていることは明らかですが、当面PO出来ないであろうことを踏まえると、今後は既にある分と足して300億円を超える内部留保を活かした分配金の安定と、物件入替による外部成長施策が注目点と考えます。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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