【1887】日本国土開発/減益基調続くも財務体質は依然良好、連続減配で還元物足りぬ。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_1642.jpg

【1887】日本国土開発(東証一部) OP

現在値 615円/100株 PER8.2 PBR0.79 5月配当 11月配当 株主優待なし

重機土木工事得意。東日本地震の復旧復興で実績。03年に会社更生手続が終結。
配当金は5月末・11月末の年2回の合計23円で、配当利回りは3.75%となります。

日本国土開発は株主優待制度を導入しておりません。

業績を確認していきます。
■2017年5月期 売上高 1,091億円、営業利益 74.6億円 EPS 41.1円 

■2018年5月期 売上高 1,175億円、営業利益 156.6億円 EPS 137.9円 

■2019年5月期 売上高 1,195億円、営業利益 145.7億円 EPS 140.0円

■2020年5月期 売上高 1,185億円、営業利益 103.6億円 EPS 91.3円

■2021年5月期 売上高 1,300億円、営業利益 95.0億円 EPS 75.0円 ce

□2020年11月2Q  売上高 650億円、営業利益 60.0億円 EPS 50.5円 四e

2020年5月期の売上高は前期比0.8%減の1,185億円、営業利益は同28.9%減の103.6億円となり、概ね予算通りの減益となりました。トップラインから沈んだのは、好採算の震災復興工事の減少により期初時点における受注繰越高が前期比4.5%減の1,432億円と低調だったことが要因です。主な引渡済工事については、土木事業では久慈市防災公園工事やK-SMFL延岡門川ソーラー、岩手県大槌町震災復興一体工事、建築事業ではプランテック・クリーンセンター、常盤町西街区建築物整備、熊谷パルシステム大型物流センター等がありました。一方、新規受注案件については、茂原ソーラーや、御堂筋タワマン、大和ハウス谷田部物流施設等があったものの、新型肺炎の影響で商談が後ろ倒しとなった結果、会社側想定まで届きませんでした。


進行期である2021年5月期の通期予算については、売上高が9.7%増の1,300億円、営業利益は同8.4%減の95.0億円を予想しています。上述のとおり実績期の受注高が低調だったため、期初時点での受注高は1年前より100億円近い少ない1,331億円に留まっているものの、期ズレした商談案件の受注顕在化によりトップライン自体は増加する見通しです。建築事業で名有りとなっている竣工予定工事は、WBFりんくうタウンホテル、シエリアタワーなんば、モントレー香椎浜サーフタワー

等があり、これら以外にも不動産事業で野村不動産とのJVにより先進的物流施設「Landport厚木愛川町」が巡航化稼働に入り、共有持分で年間約3億円の賃料収入を得る予定であるほか、自社開発メガソーラーである松島どんぐり太陽光発電所が今秋にも売電を開始する予定となっています。

 

当社は吉田茂首相の音頭で本邦の土木工事の機械化を推進するために設立された“国策企業”でしたが、バブル崩壊でリゾート開発やゴルフ場投資が仇となり、98年に会社更生法を申し立て、99年に上場廃止となりましたが、2018年に約20年振りの再上場を果たしています。再上場時には設備投資と太陽光発電事業の匿名組合への出資金に充当するため、公募で約58億円(@510円)を調達するとともに、上場時の長期ビジョンとして「時価総額1,000億円(足許では600億円)を目指す」ことを表明しています。

 

上場後最初の本決算時に3年中計を開示しており、最終年度となる翌2022年5月期に売上高1,195→1,350億円(CAGR5%)、営業利益は145→100億円(CAGR▲11%)という、マイナス成長を計画しています。これは上場前後に大型好採算案件の引渡しが多かったことや、東日本復興関連工事が売上の約6割を占めていたことから、こうした特需の剥落により構造的に業績が右肩下がりとなることに由ります。今後は当社の祖業である3way高性能重機“スクレーパ”の活用による工期短縮や、災害対策に親和性の高い“ツイスター(回転式破砕混合)工法”などを武器に、国土強靭化計画や緊急治水事業で予算化された約1.5兆円にも及ぶ治水等災害対策分野を中心に営業を強化していく方針です。このほか、既述の自社物である松島どんぐり太陽光発電所が、翌2022年5月期にも巡航稼働入りし、年20億円分の収入が見込まれることから、中計に掲げる営業利益100億円水準の達成蓋然性はかなり高いものとみています。

 

株主還元については、配当性向30%を基準に、今期は5円減配となる23円配当を予定しています。当社は2018年のIPO時の公募増資もあり実質無借金状態となっており、足許の自己資本比率も50%を超過しています。それでも一時は会社を“飛ばした”経緯があるため、保守的な資本政策が採られており、配当についても有価証券や固定資産の売却益、その他減損といったの一過性要素まで全て取り込んだ上できっちり性向30%水準が守られています。裏を返せば、最悪の場合でもなお100億円弱を保有する有価証券を売却してでも、ボトムラインの辻褄を合わせて配当してくれるということですが、さすがに自己資本の積み上がり方が過剰であるため、自社株買い発動など他の形での株主還元策が期待されるところではあります。

 

*参考記事① 2020-03-31  539円 OP

【1887】日本国土開発/震災工事は漸減だが、株主還元拡充に改めて期待。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村