【8591】オリックス/年間配当「76円+」水準が守られる蓋然性は高まったとみる。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8591】オリックス(東証一部) BY

現在値 1,383円/100株 PER--.- PBR0.59 3月配当優待 9月配当

総合リース首位。事業多角化、海外展開は業界では突出。MA積極的。
配当金(実績)は年2回・合計76円のため、配当利回りは約5.49%となります。

オリックスは株主優待制度を実施しており、3月末に単元以上を保有する株主に対して、5,000円分のカタログギフトを進呈しておりますので、配当優待利回りは約9.11%となります。なお、3年以上保有の場合は進呈額が倍になりますので、同利回りは約12.7%となります。また別途、当社施設等でのサービスが受けられる株主優待カードも進呈しています。

業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 26,786億円、最終利益 2,732億円 EPS 208円 

■2018年3月期 売上高 28,627億円、最終利益 3,131億円 EPS 244円 

■2019年3月期 売上高 24,248億円、最終利益 3,237億円 EPS 252円 

■2020年3月期 売上高 22,803億円、最終利益 3,027億円 EPS 237円 

■2021年3月期 売上高 22,070億円、最終利益 2,225億円 EPS 165円 con

□2021年6月1Q 売上高 5,376億円、最終利益 500億円 EPS 40.0円 (8/4) 

□2021年9月2Q 売上高 10,600億円、最終利益 1,300億円 EPS 64.1円 四e


2020年3月期の売上高は前期比6.3%減の2兆2,803億円、最終利益は同6.5%増の3,027億円で着地し、期初予想との比較はないものの、中間時点で開示した会社予想やコンセンサスとの比較では概ね予想通りの着地となりました。不動産事業における前期のREIT向け大型ホテル売却剥落、法人金融事業において経営者保険販売中止いうマイナス影響があったものの、完全子会社化した大京で増税前の駆け込み需要があったほか、大和証券Gへのオリックス・リビングの売却(推定500億円)や、事業投資のコンセッション収入が増加しました。また、これ以外にも新規投資先であるAvolonとNXT Capitalの通期業績寄与が始まったほか、フ―リハンやロべコの株式売却益計上を上乗せし、数字を仕上げた印象です。なお新型肺炎の影響は、株式評価損等で▲150~200億円計上したものの、子会社利益の取込タイムラグ等により限定的となりました。


進行期である2021年3月期の通期予算については、例年通り段階利益等の詳細を開示していないものの、コンセンサスによれば、売上高が2兆2,070億円、最終利益は2,225億円程度が現時点で見込まれています。新型肺炎によるコンセッション(関空等)、ホテル、航空機リース事業(主にAvolon)への影響については期を通してフルでマイナス寄与となる見込みです。関空の巡航利益は通年で400~500億円が見込まれ、当社は持分でその4割を取り込むものの、関空は売上3割減が損益分岐点のため赤字での取込が濃厚です。また、通年で600億円程度の巡航利益が見込まれるAvolonについても長期間の航空機リース契約を巻いているものの、半減程度まで減少することが想定されますが、去る8月4日に開示済の1Qによれば、最終利益は500億円(新型肺炎影響はうち▲240億円)で進捗しており、これらの大きなマイナスを織り込みつつも概ねコンセンサス水準で推移していることが確認されます。

 

当社は昨年10月に中期的方針を変更しており、従来は2021年3月期までの年間純益成長率「4~8%」、ROE「11%」、健全性基準としてレーティング「A格」の維持を目標に据えていましたが、大型投資案件への注力や景気の後退を理由に、年間純益成長率目標を取り下げました。また、ROE「11%」の達成時期も3年後ろ倒して2024年3月期としたほか、レーティング「A格」の維持も努力目標に変更しています。そして、本件変更から日が経っていないこともあり、新型肺炎禍でも内容をほぼ据え置いており、マーケットの反転を前提としつつも純利益4,000~5,000億円を目指すという大方針を堅持しています。

 

現状明らかになっている投資パイプラインはこれまで1.3兆円程であったものの、確度不明ながら検討中案件まで全て含めると2兆円まで確保している模様です。パイプラインで最大の投資となる米MGMや地元企業とのJVとなる大阪のMICE-IRへ延べ6,500億円を突っ込む計画であり、競合するギャラクシーとゲンティンが2社とも降りたため、事実上MGM-オリックス連合が単独で最有力候補になっています。然しながら新型肺炎禍のあおりで、大阪府による開業計画が27年~28年に延期される見通しとなったほか、肝心のMGMの経営状態が悪化していることから、当社持分ベースで年あたり500億円程ともされる利益寄与の可視性はかなり薄らいでいます。そんな状況もあってか、この9月にインドの大手再エネ企業のGreenko社の持分取得に約1,000億円を投じることを明らかにしており、新型肺炎下でもかような投資案件の積み上げを実行出来るかどうかが今後の焦点となりそうです。

 

そして当社における目下最大の投資論点である株主還元方針については、今期に限り配当性向を50%を暫定適用することとしているため、計算上は最終利益1,900億円程で据置の年76円配当が実現することとなります。上述のとおり、現時点では通期で2,000億円水準に届く進捗が確認されることや、最終的には株式売却等の一過性利益で辻褄を合わせるといった期待も残されていることから、新型肺炎禍下であっても「76円+」の配当が守られる蓋然性は高いものと考えています。

 

*参考記事① 2020-02-18  1,913円 BY

【8591】オリックス/MICE-IR注力で事実上の中計取り下げも、株主還元は一層充実か。

 

*参考記事② 2019-08-14 1,475円 BY

満を持しての「自社株買い発動」が待たれる状況・オリックス(8591)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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