【8772】アサックス(東証1部) NT
現在値 699円/100株 PER9.2 PBR0.61 3月配当優待 9月配当
不動産担保ローン専業。独特のノウハウで貸倒率低い。首都圏に店舗集中化。
配当は3月末の年1回15円配当のため、配当優待利回りは2.15%となります。
アサックスは株主優待制度を導入しており、3末時点の単元株主に対して、2千円相当のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約5.00%となります。
業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 62.6億円、経常利益 42.3億円、EPS 83.1円
■2018年3月期 売上高 60.6億円、経常利益 42.6億円、EPS 83.4円
■2019年3月期 売上高 60.0億円、経常利益 42.6億円、EPS 83.8円
■2020年3月期 売上高 58.2億円、経常利益 40.5億円、EPS 79.5円
■2021年3月期 売上高 56.9億円、経常利益 38.4億円、EPS 75.9円 ce(7/29)
□2020年6月1Q 売上高 15.4億円、経常利益 10.6億円、EPS 20.8円(7/29)
□2020年9月2Q 売上高 29.1億円、経常利益 19.7億円、EPS 39.2円 ce修正(7/29)
2020年3月期の売上高は前期比3.0%減の58.2億円、経常利益は同5.1%減の40.5億円となり、減収微増益となったものの、期初予算を上回って着地しました。柱の不動産融資事業については、信金・信組・地銀などとの競合はやや緩和され、中小企業や個人事業者の景況感の改善から期末の営業貸付金残高は同6.5%増の722億円と順調に増加しました。一方、利益面に関しては、空前の低金利を背景に平均調達金利を0.88%→0.73まで10bp.改善させることが出来たものの、期初から貸付上限金利を引き下げたこともあり、平均貸出金利は6.24%→5.84%に40bp.も低下し、スプレッドが一気に潰され、貸付残高増も利益減となりました。
進行期である2021年3月期の予算は、期初は非開示だったものの、1Q時点で開示しており、売上高が2.2%減の56.9億円、経常利益は5.0%減の38.4億円を予想しています。不動産融資事業は新型肺炎の影響で新規獲得営業の停滞が懸念されるほか、廃業や事業休止により返済が増加する可能性がある状況です。営業貸付金の期末残高については3.8%増の750億円と増加を見込んでいるものの、貸出金利の方が潰されていることからスプレッドが潰されて、表記のように貸付金残高を積み増しても減収となる見込みです。なお、7月29日に1Qが開示されており、6月末時点の貸付金残高は減少したものの、3ヵ月平均残高が増加しため、前年同期比で約1割の増収・同16%の増益と数字自体は仕上がっていますが、通期で大きく上振れるような水準にはないとみられます。
当社は中長期的な経営計画を開示しておらず、ほぼ単一の事業ドメインである不動産融資事業を軸に、せいぜい派生的に(不動産を担保にとった)事業性資金の貸出をしたり、その取り組みにかかる新規提携先を開拓するといった内容に留まっています。会社側としては、不動産市況が好調なうちに借金をガンガン返して、ここ数期は財務CFマイナスを続けていましたが、足許では再び借入を増加させており、その辺の財務良化への取組は一服させた模様です。結果として、直近5期における自己資本率も【40.8%→44.0%→45.5%→49.2%→49.1%】、と節目の50.0%を目の前に足踏みしています。
空前の金融緩和を背景に調達金利は確実に下がっているものの、それ以上に貸出金利が下がっており、他金融機関等との競争も激しいため、業容拡大のためには引受リスクゾーンを引き上げるほかない状況です。然しながら、新型肺炎の影響もあり主力取扱担保商品である居住用不動産の流動性や価格(担保価値)の動向が不透明な状況であることから、身動きがとりずらく、新型肺炎禍が落ち着くまでは現状維持のようなスタンスになるものと予想されます。
財務の状況については、上述のとおり自己資本がある程度拡充されてはいるものの、必要以上に株主還元に回す意図は無いものと考えられ、配当金は長らく年15円配を据え置いています。配当性向は2割にも満たない水準ですが、去年より株主優待制度を復活させたこともあり、会社側はこれ以上何か追加で還元策を打ってくるとは考えずらく、業績も株主還元も現状維持が続くとみています。
*参考記事① 2019-09-16 610円 NT
貸出競合激しく、当面は低位安定状態か・アサックス(8772)。
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