貸出競合激しく、当面は低位安定状態か・アサックス(8772)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8772】アサックス(東証1部)  NT

現在値 610円/100株 PER7.8 PBR0.57 3月配当優待 9月配当

不動産担保ローン専業。独特のノウハウで貸倒率低い。首都圏に店舗集中化。
配当は3月末の年1回15円配当のため、配当優待利回りは2.46%となります。

アサックスは株主優待制度を導入しており、3末時点の単元株主に対して、2千円相当

のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約5.73%となります。

業績を確認していきます。 

■2016年3月期 売上高 61.2億円、経常利益 40.9億円、EPS 77.8円 

■2017年3月期 売上高 62.6億円、経常利益 42.3億円、EPS 83.1円 

■2018年3月期 売上高 60.6億円、経常利益 42.6億円、EPS 83.4円 

■2019年3月期 売上高 60.0億円、経常利益 42.6億円、EPS 83.8円 

■2020年3月期 売上高 58.0億円、経常利益 39.8億円、EPS 77.4円 ce
□2019年6月1Q 売上高 13.9億円、経常利益 9.1億円、EPS 18.0 円(7/26) 

□2019年9月2Q 売上高 28.5億円、経常利益 19.3億円、EPS 38.2円 ce 

2019年3月期の売上高は前期比1.1%減の60.0億円、経常利益は同微増の42.6億円と

なり、減収微増益となったものの、2桁の減益を予想していた期初予算を大きく上回って

着地しました。柱の不動産融資事業は、信金・信組・地銀などとの競合が激しく、貸出

金利が潰されたほか、スルガ銀行やTATERUの問題を受け、融資を厳選実行した結果、

期末の営業貸付金残高は前期比0.5%減の678億円となり減収となりました。その一方、

利益面に関しては、空前の低金利を背景に平均調達金利を1.03%→0.88%まで15bp.改

善させることが出来たため、スプレッドはいくらか潰されたものの、(当社の)有利子負債

残高の削減効果も相俟って、首の皮一枚で増益を確保出来た形となりました。

 

進行期である2020年3月期の予算は、売上高が4.7%減の57.1億円、経常利益は7.8%減

の39.8億円を予想しています。不動産融資事業は、依然として競合環境が激しいほか、

不動産市況の変調に備えて債権の健全性を重視し、コンサバに融資実行をしていく方

針とはしているものの、足許の市況は依然として好調であることから、営業貸付金の期

末残高については5.1%増の712億円を見込んでいます。ただし、貸出金利が相変わらず

潰されていることから、表記のように貸付金残高を積み増しても減収となる見込であり、

調達金利の方の低下もある程度期待出来るものの、スプレッドは削られる公算が高く、

株主優待制度復活による費用増加もおよそ4千万円程度見込まれることから、減収幅

より減益幅の方が大きくなるものとみられます。なお、7月26日に1Qが開示されていま

すが、前年同期比で約1割の減収、同17%の減益となっており、ビハインドしています。

 

当社は中長期的な経営計画を開示しておらず、これといった成長ストーリーを持ってい

る感じはありません。ほぼ単一の事業ドメインである不動産融資事業を軸に、せいぜい

派生的に(不動産を担保にとった)事業性資金の貸出しをしたり、その取り組みにかかる

新規提携先を開拓するといったレベルに留まっています。会社側としては、不動産市況

が好調な今のうちに“成り行き”で稼げるだけ稼いで、借金をガンガン返していく方針と

しているようであり、ここ数期は財務CFのマイナスが続いているほか、自己資本比率も

この4期で【40.8%→44.0%→45.5%→49.2%】と改善の一途を辿っています。調達金利が

安いので、本来的にはそこまで借金を返さなくても良いのですが、継続的にスプレッド

が潰されている状況であるため、財務を良化させつつも少しでも利益率を改善させた

という意図が透けて見えます。

 

そのため、自己資本の積み上がりが早いものの、必要以上に株主還元に回す意図が

無いものと考えられ、配当金は長らく年15円配を据え置いています。配当性向は2割に

も満たない水準ですが、今年より株主優待制度を復活させたこともあり、会社側はこれ

以上何か追加で還元策を打ってくるとは到底考えずらく、業績ともども硬直しきった状態

が続くものと予想しています。

 

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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