【3175】エー・ピーカンパニー/「つかだ食堂」への注力で、新卒採用戦略への影響を懸念。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3175】エー・ピーカンパニー(東証マザーズ)  NT

現在値 416円 PER--.- PBR2.05 3月無配 株主優待あり

都内中心に居酒屋『塚田農場』等を展開。自社農場で地鶏を育成。
配当金の支払い実績はなく、今期も無配予想となっています。

エーピーカンパニー株主優待を実施しており、3月末に単元株を保有する株主に対して3,000円分の株主優待食事券を贈呈しておりますので、優待利回りは約7.21%となります。

業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 259億円、経常利益 5.2億円、EPS 17.3円 

■2018年3月期 売上高 257億円、経常利益 5.5億円、EPS▲35.0円 

■2019年3月期 売上高 245億円、経常利益▲0.9億円、EPS▲281.6円

■2020年3月期 売上高 230億円、経常利益 0.1億円、EPS 16.3円 

■2021年3月期 売上高(未定)億円、経常利益(未定)億円、EPS(未定)円 ce
□2020年9月中 売上高 81億円、経常利益▲2.5億円、EPS▲30.5円 四e

2020年3月期の売上高は前期比6.1%減の230億円、経常利益は黒転の0.1億円となり、黒字転換こそ果たしたものの対予算では大幅な未達となりました。買収したリアルテイスト(当初15店)の通期寄与による上乗せがあったものの、前期に主力の「塚田農場」の不振店を10店舗超退店したことによるマイナス寄与と、予算前提である既存店売上高は98.5%に対し、年明け2月・3月からの新型肺炎による時短・休業の影響で実績は94.5%で着地しました。また、出退店については一部新業態の出店があったものの、不採算の「塚田農場」を追加で21店退店させた結果、国内の外食店舗数は前期比17店もの純減となり、期末の国内総店舗数は183店となりました。

 

進行期である2021年3月期の予算については、新型肺炎の影響を合理的に算出できないことから、期初段階から未定としています。当社4月2日より、5月末までほぼ全ての店舗をクローズしていたこともあり、1Q(4-6月)は殆ど売上が立たないものとみられますが、月次売上高の公表も取りやめてしまったので、6月の立ち上がりの状況についても確認出来ない状況です。1Q期間では家主への賃料交渉や、イオン系のまいばすけっとへの他社就労による“出稼ぎ”、テイクアウト・デリバリー・ECによる中食展開等の様々な手打ちを実施しており、これは外食企業の中ではかなり対策が進んでいるるものの、当社店舗は住宅街よりもオフィス街や商業地の店舗が圧倒的に多く、賃料が高い上に客足の戻りが極めて悪いため、今期は大赤字圏に沈む公算が高そうです。

 

本来であれば今期は2022年3月期を最終年度とする3年中計の2年度目にあたり、売上高290億円(CAGR6%)、営業利益13億円(16億円良化)を定量目標として掲げ直していましたが、既に棚上げされてしまっているものとみられます。主力業態である「塚田農場」が、大量出店による陳腐化と接客品質の低下にくわえ、“地鶏”の虚偽表示による景表法違反で苦戦が続いていたものの、客離れにやや底入れの兆しが見えたこともあり、これまでのオフィス街や商業地ではなく、ファミリー向けの住宅街フォーマットで本格展開しようとした矢先に、新型肺炎禍に襲われた格好となります。

 

また、「塚田農場」のブランドが回復途上ということもあり、客単価4,500円~5,500円のアッパーミドル帯である中目黒の焼鳥「つかだ」や、新宿「魚米」、神楽坂「なきざかな」、などの「塚田農場」のネームを冠さない業態を開発し、実際にこれらはそこそこうまくいっていたのですが、こちらも出端を挫かれる格好となりました。そのため、「つかだ食堂」という大戸屋の居酒屋版みたいな食事も可能な食堂業態を新たに開発し、ランチ・ディナーの二毛作で稼ぐ方向性に向かっているようですが、それは高級化から一転して廉価化を進めるということでもあり、「塚田農場」で培った当社のブランド価値がまた右往左往することとなるため、ハイリスクな方針転換と考えています。また、食堂業態に注力することにより、外食業界内では優秀で接客能力が高いとの定評のある新卒社員の採用は難しくなり、中長期的には人材の質の低下が競争力の低下に繋がる可能性があるとみています。

 

なお株主還元については今期も無配を予想しております。期末時点の自己資本比率は14.5%であり、足許時点では更に悪化しているものとみられます。追加の借入等のリリースも特段開示されていないため、資金繰りの状況については別途注意が必要か状況と思われます。

 

*参考記事① 2019-08-09 525円 OP

「塚田農場」底入れ気配で、最悪期は脱出か。エー・ピーカンパニー(3175)。

 

*参考記事② 2018-09-11 566円 OP

覚悟の減収減益予算も、足許ではさらに苦戦か。エー・ピーカンパニー(3175)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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