【9832】オートバックスセブン/前年並み想定の会社予算は過大も、総還元性向100%は堅持か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9832】オートバックスセブン(東証一部)  OP

現在値 1,352円 PER19.6 PBR0.91 3月配当優待 9月配当優待

自動車用品の国内最大手。「オートバックス」中心に全国展開、海外も。
配当金は3月末・9月末合計60円のため、配当利回りは4.44%となります。

オートバックスセブンは株主優待制度を実施しており、単元株以上を1年以上保有する3月末・9月末株主に対して、年2回1,000円相当の商品券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約5.91%となります。なお、3単元を3年以上保有する場合が一番利回りが高く、同8.38%となります。

業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 2,040億円、営業利益 58.2億円 EPS 36.0円 

■2018年3月期 売上高 2,116億円、営業利益 72.8億円 EPS 65.5円
■2019年3月期 売上高 2,138億円、営業利益 74.7億円 EPS 66.6円
■2020年3月期 売上高 2,214億円、営業利益 75.8億円 EPS 47.1円
■2021年3月期 売上高 2,238億円、営業利益 76.0億円 EPS 68.8円 ce

□2021年9月中 売上高 1,000億円、営業利益 1.0億円 EPS 3.1円 四e

2020年3月期の売上高は前期比3.5%増の2,214億円、営業利益は同1.4%増の75.8億円と増収増益となったものの、期初予算比では多少の未達となりました。主力の国内オートバックス(AB)事業については、消費増税やタイヤメーカー値上げ前の仮需により上期は好調に推移したものの、下期は増税反動や記録的な暖冬により反落となり、ドライブレコーダーといった通年好調商品があったものの、既存店の売上高前提101.0%に対し、実績99.8%と若干届きませんでした。なお、AB事業については、販促費積み増しや店舗改装費で増収ながらも10億円強の減益となっているものの、ディーラー/B2B/ネット事業の子会社再編で赤字を10億円強縮小させて、全社ではオフセットして微増益圏まで浮上させています。


進行期である2021年3月期通期の予算については期初から開示されており、売上高は1.1%増の2,238億円、営業利益は0.2%増の76.0億円と微増ながら増収増益を予想しております。AB事業における既存店売上高の前提は上期で新型肺炎の影響を織り込むものの、通年で99.8%(上期89.3%、下期110.4%)で設定しています。昨年は暖冬により冬物タイヤが落ち込んだこともあり、下期にかけて一気に巻き返す計画となっていますが、既に開示されている1Q(4-6月)3か月間の月次売上高は89.4%と下振れ分のバッファを目一杯食ってしまっていることもあり、現時点ではやや過大感が否めない印象です。このほか、FC加盟店に対する支援策として、販促費を一部本部に寄せたりしていることから、売上の下振れ次第では採算性がより悪化する可能性があります。

当社は2024年3月期を最終年度とする中計「5ヵ年ローリングプラン」を策定しており、今期はその2年度目にあたります。ただ5年経過後の業績目標値のゴールは設定しておらず、単年都度予想となっており、唯一定めている数値指標は5年間累計の総還元性向を100%することのみとなります。定性取組方針としては、①国内AB事業効率化、②小売収益拡大、③実験業態見直し、④海外小売事業縮小、⑤IT・物流基盤再構築、の5点が掲げられていますが、いずれも漠っとした方針なので、具体的な施策がやや見えずらい印象です。

 

唯一、⑤のIT・物流基盤再構築については比較的進捗しており、年内にもABの新アプリのリリースを予定しているほか、ECサイト“オートバックスドットコム”も全面刷新の予定となっています。また、この5月には三菱商事系のカーフロンティアとオンラインタイヤ交換(購入・着脱予約)事業について業務提携を実施するなどしています。それでも国内自動車市場は“若者の車離れ”もあり趨勢減基調となっているため、構造的にトップライン成長させるのが難しく、昨年5月の正和自動車販売の子会社化や、本年5月の高森自動車整備工場の子会社化といった事例からわかるように、周辺事業の小粒な会社をMAで買収して、ジリ貧化を阻止しているとみられます。そのため、今後はそうした買収子会社も含めたシナジー創出で採算性を維持出来るかどうかが鍵となりそうです。

財務状況については、30億円程ある借金をネットしてなお250億円超もの現金がダブついている
ような状況であり、新型肺炎禍でありながら盤石の状況といえます。そのため、期初段階から予想を出している年60円配はほぼ確実に配当されるとみていますが、ボトムラインでの減損織り込みもあり、配当だけで5年中計記載の「総還元性向100%」に迫る状況なので、例年実施されている20~50億円規模の自社株買いについては見送られる公算が高いとみております。

 

*参考記事① 2017-01-18 1,758円 NT

業績ジリ貧で社長交代も、高水準の株主還元に期待・オートバックスセブン(9832)。

 

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