【2685】アダストリア/通期での黒字確保は微妙だが、好財務を原資に有配か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2685】アダストリア(東証1部) OP


現在値 1,493円/100株 PER--.- PBR1.35 2月配当優待 8月配当

カジュアル衣料店をSC内軸に展開。グローバルワーク等ブランド多数。
配当金(実績ベース)は2月末・8月末の年2回で合計50円で、配当利回りは約3.34%となります。

アダストリアは株主優待制度を実施しており、単元株を保有する2月末の株主に対して、3,000円分のお買い物券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約5.35%となります。なお、2年超の長期保有で優待額が5,000円になるので、その場合の同利回りは約6.69%となります。

業績を確認していきます。 

■2017年2月期 売上高 2,036億円 営業利益 149億円 EPS 242.5円 
■2018年2月期 売上高 2,227億円 営業利益 50.0億円 EPS 18.3円 

■2019年2月期 売上高 2,262億円 営業利益 71.0億円 EPS 82.6円 

■2020年2月期 売上高 2,223億円 営業利益 128.0億円 EPS 135.1円 

■2021年2月期 売上高 (未定)億円 営業利益 (未定)億円 EPS (未定)円 ce
□2020年5月1Q 売上高 332億円 営業利益▲47.5億円 EPS▲78.1円(6/30) 
□2020年8月2Q 売上高 850億円 営業利益 ▲40.0億円 EPS▲91.3円 四e

2020年8月期の売上高は前期比微減の2,223億円、営業利益は同79.2%増の128億円となり、期初予算及び3Qの増額予算をも上回って大増勢での着地となりました。主力の「GLOBAL WORK」や「LOWRYS FARM」といった従来の当社旗艦ブランド群が、リブランディングやターゲット見直し等によるMD改革が奏功して復調したほか、「niko and」「BAYFLOW」も堅調に推移しました。予算前提である既存店売上高は101.3%でしたが、101.1%と見込み通りの水準を確保し、連れて在庫削減のための値引販売が削減されたことにより、利益率が飛躍的に良化しました。なお、年22億円も営業利益にヒットしていた、旧トリニティーアーツの“のれん代”償却剥落による上乗せも少なからず増益寄与しています。

 

進行期である2021年2月期の通期予算については、新型肺炎により合理的な算出が出来ないことから、未定となっています。去る6月30日に既に1Qを公表済であり、売上高は前年同期比40.9%減の332億円、営業利益は同約100億円程悪化した▲47.5億円となっています。3月は約9割の店舗で時短営業、4月から5月末にかけて全店休業ないし一部店舗のみ営業を実施していたため、既存店売上高は3月75.8%、4月32.2%、5月55.2%の水準に留まりました。一方、ECについては5月に148.8%という記録的な伸びを確保しましたが、当社のEC化率(自社・他社合計)は2割程度ですので穴埋めは出来ませんでした。また、6月末の1Q公表時点でも通期予算を未定としていることから不透明な状況が続いており、通期での黒字確保は微妙な情勢と言えます。

 

本来であれば今期は3年中計の最終年度の位置付けであり、営業利益率8%(1年目と2年目の実績は3.2%→5.8%)、ROEを15%(同7.5%→11.6%)というKPIの達成が十分視野に入っていましたが、今次新型肺炎の影響もあり、この目標値を取り下げています。長らくの課題であった主要ブランドの顧客等再定義といったMD改革が奏功し、“トップライン目標を達成するための在庫投げ売り”に歯止めがかかって営業利益率が上向いてきた矢先でしたが、最後に水を差されたような格好となりました。

 

そのため今般、4年先の2025年を目途にした定性的取り組み(業績定量目標なし)を開示しており、①多ブランド化、②ECとコト消費強化、③海外強化、④飲食等外部提携戦略の4点をを注力事項として掲げ直しています。①については当社顧客層の高齢化にともない、手薄だった40~50代女性向けブランドである「Elura」を本年3月に船橋ららぽーとに初出店&今後は積極出店するほか、②については売上高構成比2割を占めるまでに成長していたEC販売において、自社サイトである「.st(ドットエスティ)」の強化と店舗を絡めたオムニチャネル化の推進により、ZOZO等の外部サイトからの顧客吸引を進める計画となっています。

 

今期の配当予想については、1Q時点でもなお未定とされていますが、当社は無借金で期末時点で263億円の現金を丸抱えする好財務状態のため、今次新型肺炎ショックの状況でも主力行から資金繰りのための追加融資は全く受けていません。そのため、たとえ通期の業績が赤字に転落することがあっても、無配ではなく減配に留める可能性が高いとみており、年20~30円程度の水準でタコ配してくる公算が高いものと考えています。

 

*参考記事① 2020-01-16 2,381円 OP

【2685】アダストリア/暖冬懸念あるが今期は逃げ切りか、改めて増配期待。

 

*参考記事② 2019-07-05 2,276円 OP

業績復調と、のれん償却負担剥落で大増勢か・アダストリア(2685)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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