【7816】スノーピーク/トップライン好伸も、MSワラントの希薄化も壮絶。 | なちゅの市川綜合研究所

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【7816】スノーピーク(東証1部)  OP

現在値 772円/100株 PER18.9 PBR1.56 12月配当 株主優待あり

キャンプ用品、アパレル製造販売。高級品強い。卸主体だが、小売りも強化中。
配当は12月末一括の12.5円配で、配当利回りは約1.62%となります。

 

スノーピークは株主優待制度を実施しており、12月末現在1年以上保有を継続する単元株主に対して、当社製品の購入割引券(15%割引)を1枚進呈しています。

業績を確認していきます。
■2016年12月期 売上高 92.2億円、営業利益 8.5億円 EPS 34.7円 
■2017年12月期 売上高 99.1億円、営業利益▲1.4億円 EPS▲18.0円 

■2018年12月期 売上高 120億円、営業利益 9.2億円 EPS 33.6円 

■2019年12月期 売上高 142億円、営業利益 9.2億円 EPS 26.9円(2/13訂)

■2020年12月期 売上高 160億円、営業利益 10.0億円 EPS 39.6円 ce
□2020年6月中間 売上高 78.5億円、営業利益 4.9億円 EPS 19.2円 四e

2019年12月期の売上高は前期比18.1%増の142億円、営業利益は同0.4%増の9.2億円となり、連続で大幅増収となったほか、利益も計画未達ながら前期並みの水準を確保しました。主力の国内事業において、前期末に投入した初心者向け新商品(エントリー2ルーム/寝室機能付テント商品)等が好調に推移したほか、初心者向け拡充による新規顧客の獲得の取り込みが進捗したことで会員が順調に増加し、直営・EC・EC向け卸・インストア・ディーラー卸の全5販路で増収となりました。一方、海外事業については、台湾が新規顧客の取り込みに苦戦し大幅に後退したものの、日本に次いで売上構成比の高い韓国については、日韓関係悪化の逆風下で9%の増収を確保したことは特筆に値する成果となりました。


進行期である2020年12月期の予算については、売上高が15.7%増の165億円、営業利益は8.2%増の10.0億円を予想しています。主力の国内事業については、白馬に大型店を出店するほか、原宿・嵐山・中京・関西の計5店の直営店を出店する計画となっています。既存店についても、初心者の新規顧客の取り込みが順調なため、予算前提の売上高を104%水準でセットとしているほか、中でもアパレル商品は商品拡充で46%もの増収を見込んでいます。海外事業については、米国のテコ入れを進めるべく本年6月にポートランドに大型拠点を開設し、この米国事業が牽引する形で海外売上高の構成比を14.9→17.7%に向上させる計画です。但し、新型肺炎による影響が汎地球的にみられ、内外を問わず外出自粛状態となっていることから、表記の期初予算の達成は難しいものと考えています。

 

当社は進行中の3年中計を今期を期初とする新3年中計にロールしており、最終年度の2022年12月期の数値目標を売上高142→230億円(CAGR17%)、営業利益9.2→28億円(CAGR45%)に置き換えています。但し、トップライン成長は据え置いたものの、利益達成を1年後ろ倒しにしているため、事実上の減額ローリングになっています。基本戦略としては初心者の取り込みが軸であり、新規顧客は一度当社のテントとタープ等のエントリー商品を購入すると、向こう3年間は当社製品への高い購買意欲が継続するとされているため、システムデザインにより調和性が取られた椅子・テーブル・調理器具といったファニチャー類をクロスセルさせていく戦略です。特に当社はブランド力が強いことから、かつてのSONYがそうであったように「スノーピークしか買わない」高ロイヤリティー客を育成していく方針です。

 

その他の成長ドライバーとしては、米国のポートランド本部に三条市同様の体験型の一大拠点を設立して、本邦同様のブランド育成を図るほか、本年1月には韓国でアパレル・スポーツ用品の製造・販売を営むVIRTUALTEK(KOSDAQ上場)の第三者割当増資を約3億円分引き受けるとともに、ライセンサーである当社が販売に応じたロイヤリティを収受することになっています。また、昨年は釣具用品に強い同業卸のティムコ(7501)の株式に約2億円を投じて持分の13.7%を取得し、同社の筆頭株主となっており、親和性が高いと目される釣り具への本格進出と業容拡大が期待されます。

 

懸念事項は流行り廃りや在庫リスクの高いアパレル事業であり、今期より社長に就任した創業家三代目の山井梨沙氏(32歳)の出身畑であり肝入りの事業となっているため、(撤退・縮小の判断が難しく)当該事業が当社成長のアキレス腱となる可能性があると見ています。


なお、こうした業容急拡大により財務的な手当が懸念されますが、2018年4月にSMBC日興証券を相手先に最大約33億円(希薄化率16.2%)を調達するMSワラントを発行したほか、2019年11月にも同相手先に最大約32億円(希薄化率16.5%)を調達するMSワラントを“おかわり”しています。条件決定時点より株価が軟調に推移しており、調達額はいずれの回も20億円前後に留まったとみられるものの、全権行使が完了しており、自己資本比率は6割に迫るような状況であるため、壮絶な希薄化にさえ目を瞑れば財務的な心配は不要と言えそうです。

 

*参考記事① 2019-04-11 1,494円 OP

同業ティムコの筆頭株主へ、業容急拡大で躍進気配・スノーピーク(7816)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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