【8892】日本エスコン/傘下REITがPO実施で1Q高進捗、通期予算を据置き逃げ切り気配。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8892】日本エスコン (東証1部)  OP

現在値 731円/100株 PER5.89  PBR1.35 6月株主優待 12月配当

京阪神を中心に分譲マンションを展開。09年に事業再生ADRを終結。
配当金は12月末一括の38円の配当で、配当利回りは5.20%となります。

日本エスコンは株主優待制度を導入しており、10単元以上を1年以上保有する6月末株主に対して、1,000円相当のクオカードを進呈しておりますので、配当と合計した配当優待利回りは約5.33%となります。また2年以上の継続保有で進呈額が3,000円となる長期優遇制度も導入しており、その場合の同利回りは約5.60%となります(※いずれも10単元保有時)。

業績を確認していきます。
■2016年12月期 売上高 343億円、経常利益 35億円 EPS 58.7円
■2017年12月期 売上高 447億円、経常利益 59億円 EPS 81.7円 

■2018年12月期 売上高 543億円、経常利益 104億円 EPS 105.9円 

■2019年12月期 売上高 721億円、経常利益 118億円 EPS 119.1円 

■2020年12月期 売上高 860億円、経常利益 123億円 EPS 124.1円 ce

□2020年3月1Q 売上高 421億円、経常利益 93億円 EPS 94.0円(4/28)
□2020年6月2Q 売上高 540億円、経常利益 90億円 EPS 90.5円 ce


2019年12月期の売上高は前期比32.7%増の721億円、経常利益は同12.5%増の118億円となり、売上高は未達となったものの、利益は超過しました。主力の分譲事業において、前期を200戸超上回る759戸の引渡し計画に対して堺新金岡(204戸)、高槻古曽部(181戸)など計648戸を引渡しまし、100戸超の完成在庫を持ち越す結果となりました。ただ分譲事業以外において、好採算の開発型のホテルを3棟(南船場Ⅰ65億円、長堀駅前21億円、淡路町40億円)を売却したほか、2019年2月に上場した傘下REITである「エスコンジャパンリート投資法人」への物件供給を実行しました。供給物件は北名古屋商業(46億円)、あすみが丘商業(32億円)、おゆみ野商業(27億円)など計137億円であり、22億円の売却益を実現しています。要は分譲事業以外で十分な利益が作れたため、分譲事業の売却を調整したものとみられます。


進行期である2020年12月期の予算については、売上高が19.3%増となる860億円、経常利益は4.1%増の123億円を予想しています。主力の分譲事業については、枚方樟葉(47戸)、甲東園(49戸)、高槻宮野町(99戸)、西宮北口(94戸)など実績期を100戸程度上回る計765戸を計画しています。また、分譲以外ではホテル2棟(博多中州・西心斎橋)や兵庫東条の物流施設等の売却を予定しているほか、傘下REIT及び中電不動産に対して6物件合計200億円の物件拠出を計画しています。既に傘下REITについては、本年1月のPOで約52億円分のエクイティ調達しており、当社は大和高田商業(41億円)、美木多商業(35億円)など計103億円分の物件拠出を済ませています。そのため、4月28日に開示済の1Qは異例の高進捗をマークしたほか、新型肺炎渦にも拘らず通期の予算と配当予想も据え置いており、会社側は今期予算については逃げ切り可能、と捉えている可能性が高そうです。


実績期は3ヵ年中計の最終年度であり、当初計画では売上高343→600億円(CAGR20%)、経常利益は35→72億円(CAGR26%)を目指していたものの、1年前倒し達成してしまったことから途中で数字を積み増し、終わってみれば売上高721億円(CAGR28%)、経常利益118億円(CAGR50%)と破竹の高成長を遂げました。また、今期を初年度とする新中計では、3年後の2022年12月期の定量目標として、売上高721→1,100億円(CAGR15%)、営業利益129→152億円(CAGR5%)を目指すこととしています。

 

中計の具体的な取り組みについては、①事業多角化、②ストック資産の積み上げによる賃貸収入増加③中電との連携強化、④REITの外部成長が事業方針の軸に挙げられています。主力の分譲事業については、本中計期間で年1,200戸程の供給体制の確立を目標としていますが、素地の仕込みについては来期分が100%完了、再来期分も50%が完了している状況であり、こちらに関しては順調と言えそうです。

 

懸念事項としては、上述のとおり傘下REITが上場後初のPOを無事に成功させているものの、公募価格は@124,000円程であり、足許株価が@95,000円程であることを考慮すると、次回のPOが見通せる状況にないことです。またIPO時株価である@101,000円をも割り込んで、余裕のNAV割れとなっているため、中電不動産にウェアハウジングを受けて貰えるとしても、商業施設の要求CAPレートが当初よりも切り上がる可能性があることから、REIT絡みの数字はこれまでのようにアテに出来ないと思われ、REIT市況の低迷が最大のリスク要因となります。

 

財務面については、中部電力の傘下入りにともない企業クレジットが一段と良化傾向にあり、調達金利がどんどん落ちて0.9%まで削減出来ており、自己資本比率も3割弱まで良化してきたので、当面は問題ないものと考えられます。また、株主還元に関しては「減配しない」累進的配当政策が踏襲されることとなっており、配当性向30%をメドに2円増配の年38円を予想しています。

 

*参考記事① 2019-04-17 775円 OP

REIT株価堅調で、早くも来期予算に熱視線・日本エスコン(8892)。

 

*参考記事② 2019-04-17 775円 OP

REIT上場で成長モメンタムは維持される公算、日本エスコン(8892)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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