昨日は、
藤沢周平さんのエッセイを引き合いにして記事を書きました。
書いているうち、、、
確か、池波正太郎さんにもタクシーにまつわるエッセイがあったことを思い出しました。
池波正太郎のエッセイも好きで、文庫本も数冊持っています。
そのなかの写真中央下の『男の作法』は愛読書の一つ。
いつ読んでもおもしろいです。
捉え方が具体的で普遍的なんですよね。
そして、ブレない。カッコつけない。
だから読んでいて安心します。
だって、、、
刺身の食べ方から、寿司屋や蕎麦屋での作法、そして親の敵のように食べろという「天ぷら」の話(笑)。
ちょっとだけ時代とのギャップはありますが、物事を捉える底辺のところで、日本人としてのDNAがくすぐられます。
その点、時代を超えて読み継がれていって欲しい本の一つです。
* * *
さて、タクシーと「品格」の話に戻りますと。。。
池波正太郎さんは、『男の作法』という本の中で、
「チップ」という題目でこのタクシーにまつわる話を語っています。
--- タクシーに乗って、
メーターが五百円だったら六百円やる。
「どうもご苦労さん。これは結構です……」
と、百円チップをやることによって、
やったほうも気分がいいし、
もらったほうも気分がいいんだよ。
もらったほうは、
自分はわりに親切でもないんだけど、
とにかくこの程度の運転をしていれば、
お客さんが百円余分にくれるんだなとわかるわけでしょう。 ---
池波さんは、これは大変なことなんだと言います。
池波さん自身も、、、
--- 運転手がイヤな奴だったら百円だってやらない…
(笑)
でも普通にある程度やってくれたら必ずやる。
昔からそうしてきたと。
それは、当時の大人たちがそうしていたからだと。
確かに、、、
ちょっと前は、千円札を出して”お釣りはいいよ”という先輩達が結構いたように思います。
今は、、、
何か気恥しさもあるのか、すたれてきた振る舞いのように思います。
--- 今度タクシーに乗ったときにだね、
やってごらんなさい。
運転手がたとえ百円でもうれしくなって、
「どうも済みません、ありがとうございます……」
と、こう言いますよ。
そして、こうも……
--- 「ありがとう」だけじゃ駄目なんだよ。
(中略)
そこへ身銭の百円を出すことによって、
ああ、この人はほんとに「ありがとう」といっているんだ、
ということがわかるワケなんだよ。
* * *
実は、この話。。。
タクシーから、チップへ、
チップから「品格」へ。
「品格」から「男みがき」の話へ。
そして「男みがき」から「小遣い」の話へと。
そんなエッセイの構成になっていて、上記はその一部の内容です。
もはや、、、
前記事の「タクシーメーター」からは完全に話がそれています(笑)。
* * *
私も、、、
時々、お話をしてくれたり、急ぎのお願いに応えてくれたタクシーの運転手さんには、一旦、お釣りを受け取ってから、自分の小銭とあわせて、缶コーヒーでもどうぞとお渡しすることをしています。
それは、毎々やみくもにではなく、
運転手さんに感謝を感じたとき、自然と湧く気分に従って行なっています。
書けば、なんか偉そうな感じになってしまいますが…
気持ちとしては、飲み物一本をお渡ししている感覚です。
最初したとき、、、
実はドキドキでした(苦笑)。
運転手さんによって、いろんな反応がありますが、総じて、軽い驚きはあるものの、悪いことになったことは幸いありません。
そう、
例えていうなら、電車で席をゆずる感覚に似ています。
確かに、たかが100円とか150円ですが、、、
カッコつけるのでもなく、過大なチップでもなく、
”次乗る人にも、気持ちよく接してあげてね”
みたいな、
そんなキモチが伝わったとしたなら、
小さな感謝で、世の中への大きな伝染になるかもしれません。
そう考えれば、サービスを受ける側が差し出す「チップ」って、物凄い意味と効果があるかと思います。
チップ用として小銭を持ち歩く文化っていうのは、、、
ある意味、”大人だなぁ~”と思います。
文化度が高いと感じます。
平凡サラリーマンの小生には、日常的にこんな振る舞いのシーンが多々あるわけではありませんが、
普段からそんな行為が自然とできるような「品格」を意識すること位はしていきたいと思います。
-END-