お仕事帰り、疲れ果てた身体でスーパーに立ち寄る時。
プラスチック容器に入った茶色いお惣菜を手に取りながら、
「今日も一日、よく頑張ったわね」と自分に語りかけます。
でも、そのまま食卓に出すことはいたしません。
・・・たまには、その辺りを端折ってしまう時もありますが。
家に帰ったら、お気に入りの和食器を一つ、棚から丁寧に取り出すのです。
それは、限られた手取りの中から、何ヶ月も迷って手に入れた大切な一枚。
そこに惣菜を移し、余白を活かして高めに盛り付ける……。
たったそれだけの手品で、質素な夕食が、料亭のような
「ご馳走」へと姿を変えるから不思議ですよね。
ベランダで育てた大葉を一房添えるだけで、
香りがふわりと立ち上がり、心まで解けていくようです。
たとえ生活は豊かではなくても、器を選ぶひと手間を惜しまない。
そんな風に、自分を「丁寧にもてなす」時間が、私にとっては明日への活力になるんですよ。
腰の痛みに杖を頼る生活の中で、できないことも増えました。
けれど、器の中に美しさを描き出す自由だけは、誰にも奪えません。
いつか、私のこの小さなこだわりを「愛おしい知性だね」と、穏やかな眼差しで認めてくださる……。
逞しい腕の中に優しさを秘めた、理想の男性と食卓を囲める日を夢見て。
今夜も、一粒の梅干しさえも愛でるように、大切に味わいたいと思います。
皆さまの夜が、ほんの少しの彩りで満たされますように。

