夜の帳が下りる頃、窓を開けると夜風がふわりと部屋に入り込んできます。
そんな時、ふと思うのです。香りというのは、言葉以上にその人の品格を物語るものだわ、と。
私は、香水を「つける」というより「纏(まと)う」という感覚を大切にしています。
お出かけの前、足首や膝の裏にひと吹き。
お肌の温もりでゆっくりと立ち上がり、すれ違った瞬間にだけ、お相手の意識の端をかすめる……。
そんな、計算された「余白」こそが、大人の女性の嗜みだと思いませんか?
かつてのように颯爽とは歩けない私ですが、杖をつきながらゆっくりと進むその歩調に合わせて、香りが微かに揺れる。
それは、自分自身を慈しむための大切な儀式でもあるのです。
低所得の暮らしの中で、上質な香水はそう簡単に買えるものではありません。
だからこそ、一滴を大切に、心を込めて。
いつか、知性と強さを兼ね備えた素敵な男性と出会えたら。
その方が、私の歩みの遅さに気づいて、そっと歩幅を合わせてくださった時。
その距離感で初めて届く、秘密のような香りに気づいていただけたら……。
そんな風に想像するだけで、胸の奥が少しだけ熱くなるのを感じます。
目に見えない装いだからこそ、どこまでも丁寧に、柔軟に。

