お正月の朝。
部屋の空気がひんやりしていて、
布団から抜け出すと、素肌に触れる冷たさがやけに刺激的だった。
鏡を見ると、寝起きの少しゆるんだ表情。
「誰かがいてくれたら、もう少しちゃんとするんだけどな…」
そんな言い訳みたいな独り言をつぶやきながら、
湯を沸かす音に耳を澄ませる。
実家には帰らなかった。
理由はいくつかあるけど、正直なところは…
“誰もいない静かな部屋の寂しさに、自分がどう反応するのか”
それを確かめてみたかったから。
昼前、近くの神社へ初詣に行ったら、
夫婦や家族連れのあいだをすり抜けるたび、
背中に小さな風が通り抜けるみたいで、なんだかむずがゆかった。
帰り道、参道で見かけたひとりの男性。
マフラーを直す仕草が妙に色っぽくて、
その横顔を見ただけで胸の奥がじわっと熱を帯びた。
別に知り合いでもないのに、
あの落ち着いた雰囲気に、
「ああ…こんな人と並んで初詣に来られたら」
なんて、ありえない妄想が勝手に動き出す。
家に戻って、熱いお雑煮の湯気に包まれながら、
ひとりで食べるその温かさが、かえって切なくなる。
この時期、外は冷たいのに、
心のなかばかりが火照って仕方がない。
お正月って、不思議。
静かで、凛としていて、
なのにちょっとだけ…欲が顔を出す。
ひとり暮らし。
新しい年の初めに、
こんなふうに“誰かのぬくもり”を想像してしまうなんて。
でも、これも悪くない。
寒い夜ほど、人肌の温度を思い出すから。
