---------------------------------------------------覚悟--------------------------------------------------------
そうだ
白虎機は敵の潜んでいたゲリラ如きに不意を突かれた
傭兵として生きていく上では、油断はそいつの落ち度。犠牲は止むを得ないのが当たり前だった
だが違った。上手く表現が出来なかったが、その常識は通らなかった
爆風が少し止んだ
まず俺の目に飛び込んできたのは、他の迷彩カラーのWAPと違い、全身黒光りの光沢を放つWAPだった
機種はゼニス
ジェイドメタル・ライマンが開発した、OCUでは比較的に流通、その素性のよさから、多くのパイロットに好まれるWAPである
そのため、性能は少なくともうちのWAPよりも劣っていた
とりわけ白虎のヴァーサは、接近戦用の長刀、キーンセイバーに、右手にはウィニーRR、現在の技術では最高クラスの武装だ
おまけにバーニアを二個取り付けて機動性も十二分にアップしている
だが転がっていたのは、ヴァーサだった
操縦席周辺の部分を残して、他は動きそうに無かった
油断というファクターもあった
だが一瞬でこうもやられるとは…
白虎も歴戦の傭兵である。だがその狙撃の名手にも避けられる隙を与えない箇所を精密に弾丸は貫いていた
この様な奴がいるとは…
全くもって想像の外だった。
だが俺は隊長の職分として、感傷に浸る合間は無く、指令を下す立場にあったのだから、そこは経歴が生きたといえよう
あり得ないほど冷静だった
一瞬で爆風の残りを利用し、アンノウン機の後ろにジェットBPを使って回り込んだ
ジェットを使うと、普通は空中に浮き、攻撃が避けにくくなるのだが、今回はそれが上手い煙幕になった
すべて計算の上
そして自分の腕より長いロッドを胴体に突きつけ、無線で交信を試みた
その間に桜花と柳葉がリペアBPで修復、炎砲のWAPが武装を捨て、ヴァーサを運搬する
麗帝は俺と一緒にアンノウン機に警戒
このサインを俺は一瞬でやってのけた。全て緊急暗号で
「お前…どこの所属だ。名乗って武器を捨てろ…」怒りに震える心を全力で蓋をしているはずだが、溢れ出ていたのが自分でも分かった
数秒後、返事が戻ってきた
「いやぁ降参だ! まさかこんなに手馴れとはねぇ…」笑い交じりで聞こえてきたのは、若い男の声だった
俺は妥協はしなかった
「所属を名乗れと言っている。それともこのまま残骸になるか?」普段隊員には見せない表情をしていた
「あぃ分かった、俺はホセ、反政府「ガリラヤ」の2番隊隊長だ」ホセと名乗る男は、案外とあっさり自供し始めた
「何故そんな簡単に話せるんだ?」当然の疑問符を返した
桜花から白虎機の収容が完了したとのサインを受けつつ、返事を聞く
決してそれを悟られないように
「おいおい、その物突きつけてきたのはあんただろ? 俺だって命までかけてこの戦争に望んでいる訳じゃないからな。大義なんてありゃしないよ」中々ひょうきんな奴だ
だが俺は一切警戒心を抜くことが無かった
「では、何故全滅したと言うのにお前だけ5番機に攻撃を仕掛け、あまつさえ撃破したんだ?」元々傲岸ともいえる口調が、さらに強くなっていた
「そうだな…格好良く言うなら、因縁と言ったところかな。別にお前さん達に攻撃する気は無かったんだ。他の4機に比べてあいつだけが少し鈍かったからな」
ホセがそう口にした瞬間
「そうですか…私をやったのは…道理であの太刀筋…」聞こえてきたのは、憔悴しきった白虎の声だった
たった1撃で白虎のメンタルを消沈させるとは…
どうやら浅からぬ因縁がある
俺は少なくともそう思った
「そうだな…よし、お前さんの基地に案内してくれ、侘びは弾むさ」成程、金蔓だったか
当然のごとく、未だに警戒心を解いてはいけないシーンなのだが、この場面で最早恒例ともなった双子の緊張感の無さが発動した
「え? お金くれるの? じゃあいいよ~」馬鹿だ、紛れも無い馬鹿だった
絶対にこいつはお菓子に釣られて誘拐されるタイプだろうと思った
空気が気まずくなった。とてもじゃないが俺はこのまま殴り倒す気分にはなれなかった
それもそうだ、懇願の眼差しで後方からの目線が装甲越しに突き刺っている
このままこいつを真っ二つにしたら、俺が文句なしに真っ二つだろう
自分の甘さに肩を落とし、溜息をつきながら返答をした
「良いだろう、但し、逃げ出そうとするなら…」念を押すまでも無い
そうして全機は、白虎機を捕虜1機を回収し、基地まで撤退した