--------------------------------------------メールシュトローム------------------------------------------------------
俺たちはルソン島に着いた
しかし、そこは俺たちを歓迎してくれはいない
元々期待はしてなかった。元々穏便に到着できるとは思っていなかったが
ハッチを開けたその瞬間。俺らに数百発の弾丸が飛んできた。
即座に舵を切って回避したが、弾丸はとどまることなく飛んできている
こういう光景は年中体験済みだが、ここまで唐突にハッチを穴だらけにされたのは初めてだ
艦の修理費が俺の理性を切った
半ば自棄でF-5ハンドロッドを両手に
「全機! これが終わったら補給だ! 2個小隊を粉砕するぞ!」檄を飛ばした
派手な歓迎には派手に応えるのが道理だろう
いつもは寸分狂わぬ方陣を敷いて出陣する俺たちだが、生憎俺自身の理性が無いらしく、不恰好に上が尖った五角形を描いて突撃していった
「致し方の無いお方だこと…」白虎はいい加減に呆れてくる様相を見せた
「呉龍」と大きくロゴが入ったレイブンは、後続機を視界不良にする程の速度で敵文体に突っ込んでいく
轟音とも叫びとも想像つかぬ声の後、俺の目の前にいたはずの2機のガストは真っ二つに割れていた。
F-5ハンドロッドの威力もさることながら、WAPらしからぬ腕力を発揮したレイブン
搭乗者のメンタルは機体性能に比例するというが、その戯言をやっと信じる気になった
「そんじゃ、私たちも行こっか! これ終わったら温泉だって隊長言ってたし!」温泉など一言も言った覚えは無い。
こいつら…
とはいえ、相も変わらず言動に反した攻撃性は、何度見ても慣れるものでは無い。
彼女らが敵を倒す間に、瞬きの暇があるだろうか…
「隊長…お客さんが団体様でいらっしゃったぜ」
炎砲の言う通り、数十キロ先から2個中隊のWAP部隊がこちらに向かってくる
炎砲は早速照準を合わせ始めた。あえて指示はすまい
「んじゃ…灰になっちまっても恨むなよ!」全力で発射レバーを引いた
今度は絶対負けない。財布と名誉と自尊心のため。
唐突に怒号が横から聞こえてきた
「私たちは死の淵を潜ったんですよ! こんな額じゃ満足できるわけ無いでしょうが!」「でしょーが!」
左側の馬鹿はいいとして、麗帝の怒りは当分収まりそうに無い
「う…うむ、出来る限り努力する。3倍でどうだ?」司令は苦しそうに唇を開いた
麗帝はやっと首を縦に振った
流石に一国の重役にここまでの事を要求しているのは、気が引けると思ったのだろうか。
実を言うと、俺の財布が一番苦しい
あの3人に報酬を支払わなければいけないからだ
傭兵が元中隊とはいえ傭兵に報酬を出すというのも可笑しな話だが
これでは食費さえカバーしきれないだろう
WAPの整備費などに首を回している余裕があるのだろうか
しかし、前回の戦闘で、かなり機体は消耗してしまっている。
残弾はあってない様な量だ。1回の戦闘には到底耐えられないだろう。
頭の中を様々な考えが交錯する中、野太い声が響く
「みんなおはよう!」元凶登場
3人組のダル・スタッグス。随分と遅い起床だ。もう日は真上に来ているというのに…
「昨日は紹介できなかったから今紹介しよう! 左の無口なのがロッキーで、右のヤサ男がロズウェルだ」よく考えたら、本当に名前を知らないまま1日過ごしていた。
ロッキー・アーミテジ
ダル・スタッグスの中で、アタッカーをつとめていた人物である
その動きは桜花、柳葉と同等、もしくはその上を行く実力だ。
また、戦時中には1機でWAP大隊を壊滅させた武勇伝がある
そのどこか神秘的な風貌と、何かを秘めているような口調からは想像もつかない
ロズウェル・タラーナ
典型的なラテン気質の男で、ダル・スタッグスの中ではガンナーを勤めている
普段の軟派なヤサ男からは考えられないほどの正確射撃と、スナイパーとしての200mホールドショットも片目でこなすという、非常に秀逸なパイロットだ
「お嬢さん方、ご機嫌麗しゅう」早速うちの2人娘に絡んできた。
明らかに蛙を狙う蛇の目だ。下心で一杯なのは誰でもわかった
「あの…私たち、貴方に興味ないんですよ…」流石に2人でもこういう台詞は気が引けるというものだろう
「そんな事言わないで、一緒にランチにでも…」しぶとい男だ、麗帝なら蹴りをくれている
そんな俺の考えの前で、鈍い音が炸裂した。
「うちの2人娘になにしてくれてんのよ!」あまりに案の定
麗帝の右踵が、ロズウェルの額に直撃した。
彼は笑みを浮かべながら気絶した
横目に見ていると、滑稽でならない。
苦笑していると、トマスが俺に喋ってきた
「おい、お前さん金欠だろ?」馬鹿にているのかこいつ
「ああ…お前さんたちのせいで口座も財布も全球凍結してるよ」精一杯の皮肉でたたき返す俺
「まぁそう言うな。お前さんたちにいい話を持ってきた。」傭兵が金儲けの話を持ちかけるとは珍しい
「ここからずっと東に小さな島国がある。名前は日本」そのくらいは知っている。ジャパンには霧島重工やイグチ、さらにサカタ等の有名メーカーを有し、OCU圏内でも有数の先進国だ
「まさかOCUに戦争を吹っかける気か? 俺らの戦力では日本はおろかその前のフィリピンの軍でさえ突破できないだろう?」現実を突きつけてみた
そこで、トマスは指摘した。
「そこ! まさにそこだよ! 今フィリピンでは反政府ゲリラと政府軍が紛争状態にある。反政府軍の狙いは新型巡航ミサイル基地だ。しかもゲリラの後ろ盾を日本軍がやっている。」
大体トマスの考えが掴めてきた。
少し俺は考えて「つまり…反政府に加勢して日本軍から報酬を貰おうっていう算段か?」
「その通り。ここは早々に引き上げて、フィリピンに行け!」決断を迫ってきたトマス
確かに、現状ではこの熱帯で機体はかなり消耗し、いつショートしてもなんら不思議は無い。
細かい流砂は間接部分に入り、動きも鈍い。しかも塗装は剥げ、みすぼらしい機体になったものだ…
俺は考えなかった。いや考える必要は無い。熱射病も十二分にありえるこの体。壊してなるものか
「全員! 聞いてくれ! 俺たちは今からフィリピンに向かう。反政府軍の援護をやるぞ!」備え付けマイクで艦内に叫ぶ
「よかったですぅ…この暑さはお肌の天敵ですからね~」久しぶりに柳葉の乙女発言
フィリピンは同じような気候とはいえ、ここより温帯に属しており、何より日本軍の支援という重要なポイントがある。
皆納得してくれた。
「よし、俺らは帰るぞ! ロズウェル! ロッキー!」ダル・スタッグスは報酬を貰うと、艦から何処へと飛んでいった
「あ~のヤサ男! やっと消えてくれたよ」桜花の表情がやっと緩んだ
俺たちは一路、フィリピンのルソン島に向けて出発した…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー黄金の国ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

戦闘から丸1日が経った。
俺たちはブリーフィングルームで司令と報酬の交渉をしていた。珍しく桜花と麗帝が激しく怒っている。
無理も無い、彼女らはあの戦闘で地獄を見たのだ。それなりの見返るを求めるというのも、また当然至極だろう
俺はその事態を横目に見ながら白虎や炎砲、柳葉と一緒に麻雀をしていた
この3人には散々に叩きのめされた。総額3000$の負けだ。
「こいつら…なんで麻雀上手いんだよ…外人だろ?」心で毒づく俺
そうやって半ば空空とした気持ちで打っている。
負けるのも当たり前か…
柳葉が叫んだ「あ、隊長それロンです! 四暗刻単騎♪」毎回の如く巻き上げられた。
今度は任務の空き時間に麻雀講座でもしておこうと思う。