感謝しかない。 | 仕事のこと、日々の暮らし、趣味のことなど、何気ない日常の中にあるささやかな輝きを忘れないように。

仕事のこと、日々の暮らし、趣味のことなど、何気ない日常の中にあるささやかな輝きを忘れないように。

ピアノ調律師をしています。何気ない日常の中に密かに隠れている輝きを見つけたい、そんなことを考えながらつらつらと書いています。

「LINEでビデオ通話できますか?」


3年ぶりくらいに届いたメッセージはちょっとよそよそしかった。


もう、10年以上前からのお客様で、プライベートでもカラオケに行ったり、ご飯を食べにいったり、昔の僕の講演会にもきてくれた。彼が病気で入院したときはお見舞いにも駆けつけた。


「緩和ケア病棟から、自宅療養に切り替えたんですよ。」


久しぶりに見た彼の笑顔は、鼻に酸素マスクを付けていたこと以外は変わらない明るさだった。


何日間かのLINEのやり取りのあと、奥さんからのメッセージに変わった。


「最後まで、意識をしっかり保ち、もうこれ以上は何もできないと言った先生に「よくわかりました。ありがとうございました。」と、自らお礼を言いました。


穏やかな、そしてとてもかっこいい最後でした。」


人生の最期の自宅で過ごす貴重な時間を僕を思い出して、連絡してくれたんだ。


「感謝しかないですよー」


そう言って明るい笑顔で、僕を元気付けてくれた彼に


「感謝したいのは、僕の方です。」


と、言葉で伝えられなかったことが、


唯一、悔やまれる。