ピアノのアクションの中に、真珠のピアスがあった。
もう10年以上前、STAP細胞で一躍有名になった小保方晴子さんを思い出した。
「真珠の涙」というタイトルで撮られた写真と記事の切り抜きを、僕はまだ大事に持っている。
彼女の謝罪会見で身につけていたのが、それまで身につけていた、反体制的なパンクの代表的なブランドの、ビビアンウエストウッドの指輪ではなく、
保守的でシンプルな真珠のネックレスだった。
「真珠とは、貝の中に紛れ込んだ異物を無害に変えてできた真玉なのだが、
その生産過程になぞらえて「受難と痛みの中から生まれ出る輝き」という暗喩がある。
私にはその首飾りが、彼女の流した涙とともに
彼女自身に残された最後のメッセージのように思えたのであった。」
さんざんもてはやされ、担ぎ上げられ、宣伝塔のように使われたあと、
都合が悪くなった瞬間に、理研をはじめとする科学者業界とメディアから、地獄のような奈落の底へ突き落とされた彼女。
ピアノの中に紛れ込んだ真珠のピアスを拾い上げて、
長年見つからなかった「受難と痛みの中から生まれ出る輝き」を
取り戻してほしいという思いを込めて
お客様に手渡した。