
この前石器を探していると、山頂から営林署の車が下がって来て私のそばでUターンし再び戻って行きました。
ここは私有地で、林野庁の管轄外ですから何も問題は無いはずです。
後から考えると、黒い服装で斜面に蹲っている私が、熊に見えたのではと思いました。
狩猟シーズンも始まりましたから、熊に間違えられてはたまりません。

それ以降、私は目立つ服装に、明るい帽子も被ることにしました。
この地域でも、昔は全く見なかった熊や鹿などが、最近は時々出没する様になりました。
ただ、ここは東北とはいえ深山では有りませんから、私はまだ熊は見たことは有りません。
私が怖いのは、獣と一緒に広がっているダニや感染症です。

冬になって繁っていた草木が枯れて、虫や蛇の恐れが無くなりました。
いよいよ、これまで杉の根などが積み重って足を踏み入れなかった処を探す事にしました。
南向きの山の斜面ですから、「棄て場」の様な処が見つかるかもとの期待が有ったのです。
ただ、地表は木の根などで覆われていますから、探せるのはそのすき間です。
遺物は発見出来たものの、思ったほどでは有りませんでした。
数千年も昔のものですから、遺物が有るとしても、やはり地中なのでしょうか。

磨石や敲き石、剥片などは見つかりましたが、明確な石鏃や尖頭器などは見つかりません。
ただ、石斧と思われるものを幾つか見つけました。
一つは板状の礫を、敲打により整形したもの。
片方の先端が折損していて、石斧の刃が欠けたものに見えますが、板状の石棒が折れたものにも見えます。

もう一つは楕円の礫を、分割して作られた簡素な石斧です。
側面に原礫面が残り、一般的な石斧とは少し違う形ですが、円刃の刃先には使用した痕や、赤く焼けた痕も見えます。

私は石斧は、斧や鍬の様に木の柄に装着されて使われるものばかりと思っていたのですが、中には直接手に持って使用したものも有った様です。
そうすると、手近に在った扁平な礫をそのまま使用したり、簡単に分割しただけのものも有ったかもしれません。

この石器を見て感心したのは、礫を3度割れば簡単に完成し、一つの礫から複数作ることも可能なことです。
偶然なのかもしれませんが、石斧ならば効率的な形と言えます。
ただ簡易な作りでも、必ずしも古い時代のものと言えないのが石器の難しいところです。

今回も古い時代の石器に似たものを幾つか見つけたのですが、これらが単なる剥片なのか、偽石器なのか、難しいので判断できません。
ただ、ここで最初に鉄鏃や陶磁器を見つけた様に、出て来た遺物が全て同じ時代のものとは限らないのです。

ここは、二つの河川の合流付近にある山地の平坦部ですから、食糧や石器の材料も得やすく、昔から人が住むには最適な場所だったと思われます。
これまで確認した遺物から縄文時代は間違いないものと思いますが、それ以外の時代にも人々が住んでいた可能性は高いのではないかと思っています。