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no movie no life

・・・映画を見て思ったことをツラツラと。ネタバレです。

かなり昔に書いたのも。

終わってみれば、オトコが不在の映画。男性の監督にこれほどオンナの映画と言うものを見せられると逆に気持ちがいい。監督がゲイって言うのもあるのかな。


4年前に母を亡くしたライムンダ(ペネロペ・クルス)は久しぶりに故郷に住む伯母の家に向かう。思いのほかボケてしまった伯母が心配なライムンダだったが、とうとう伯母が亡くなったと連絡が入り・・・ぺドロ・アルモドヴァル監督の「女性讃歌3部作」最終作品。


母、娘、女。女はいろんな言葉で語られるけれど、ライムンダはどれも当てはまる。月並みな言葉だけれど、「女ならではの強さ」がほとばしっていた。自分の身に起きた悲劇、母親のこと、娘のこと・・・女たちは「血」「地」に縛られつつも、それらを捨てずに濃厚に結びついている。男たちの犯した「血」「地」のタブーが、女たちによって修復されてゆく。それが「帰郷」なのかもしれない。


ペネロペ・クルスにはオカンの風格が漂う。なんだかどっしりしたスタイルになって、彼女ももう若くはないのね・・・と思うとちょっと寂しいが、演技の幅が広がったかな。料理するシーンが好きです。
「亡くなった母」のシーンはちょっとびっくり。最初「何がジェーンに起こったか」のジェーンみたいで正直怖かった。女性の髪形って言うのはやっぱり大事なんだね。ライムンダの姉ソーレが美容師なのも意味深だ。


しかし、スペイン映画って言うのはホントまばゆいぐらいの原色の世界。この監督の作品で言えば「Bad Education」が衝撃的だったな。また見たくなりました。


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タイトルはシュールだけど、中身はもっとその上を行く。


交通事故で急死した和合夫妻の葬式の日、女優を目指して上京していた長女(佐藤江梨子)が戻ってきた。平穏に暮らしていた長男(永瀬正敏)、その嫁(永作博美)、次女(佐津川愛美)たちに、緊張感が走る。本谷有希子の戯曲の映画化。


女たちのキャラクターがとにかく際立っている。


大胆不敵、自己中、過激、奔放、高い自尊心、そして女優の実力がある勘違いしている女。自分に都合の悪いことは全部他人のせい。しかし、抜群のプロポーションと美貌。
彼女の登場シーンは息を呑む。田舎の村に全くそぐわない。彼女の服、髪、化粧、言動。いや、存在そのものが。とっても浮いていて、目が痛くなる。こんな人間は狭い閉鎖的な土地にいるべきではない。村中の男が彼女に狂わされる。まるで羽衣伝説の天女のような地球外生物だ。「私は絶対女優になるの!」しかし、彼女は戻ってきた。全身全霊で演じてるサトエリは見事。新境地を開いたのではないかな。あのプローションはホントに悪魔のようだ。


一方妹は、姉にことごとくいじめられながらも、全てマンガのネタにして投稿する強かさを持つ。姉の一挙一動に怯えながらも目が離せない。麻薬のように姉にハマる。いや、もしかしたら蜘蛛のように罠を張っているのかも。メガネの下に潜む大きな目はある意味、姉より怖い。


そして兄嫁は、天然ボケでお人好し、気を遣いすぎて自滅するタイプ。いじめられてもそれに気がつかない、これまた見ていて痛い存在。手にしたと思った幸せはするりと逃げ、最後まで哀れだ。


そんな目を背けたくなる人間関係の中で、弱い男は脱落してゆく。食って食われて、真に強いものが生き残る。なんせ刃物を振りかざして格闘するわけだから、こゆーいブラックだ。「やっぱお姉ちゃんは、最高に面白いよ。そんなに面白いのに、私の前に出てきたらダメだよ」「あんた、私をネタにするんなら、最後まで見なさいよ!」


だけど、それが観ていて面白い。人間は、神様のような一転の曇りも無い存在よりも、毒をもつ女王蜂が好きなのだ。強くて悪いものに振り回されたい。そして、人様の幸福よりも不幸が楽しいのだ。古来からヒトは喜劇よりもギリシアの悲劇やシェイクスピアに惹かれている。


・・・しかし、こんな強かな人間たちになれない。勘違いであれ、自分を信じ続ける力も、ない。
所詮、私はこういうモノを見て、自分自身を照らし合わせ反芻するしかない「腑抜け」にすぎないんだね。


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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫 も 48-1)/本谷 有希子
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女は憧れ、男は翻弄される、魔性の血筋。


昭和45年。羽衣伝説の「天女の羽衣」が代々伝わる叶家に、小夜子(鈴木杏)が美しく成長して12年ぶりに戻ってきた。土地の有力者である遠野家は小夜子と子息・暁(深水元基)との縁談を画策するが、小夜子の周りでは不可解な事件が頻発する。吉田秋生のマンガ作品を映画化。


吉田秋生の作品は独特の雰囲気があって好きだ。
この作品も、話は良くできてるんで、映画はキャストとその演技にかかってると思うんです。特に叶小夜子の役は・・・。が、結果から言えば、鈴木杏では幼くて、イメージではなかったかなぁ。まあ、17歳の妖艶な役は、難しいと思うんですけどね。わたしも他の誰がよいかと言うと思い浮かびません。一方、遠野家の暁と涼(勝地涼)は老けて見えて、やはり無理がある。(そう言えば勝地涼くんは役名も「涼」だね。)


旧家の息詰まるような重みや、一般人には理解しがたい伝統や、田舎の閉鎖的な雰囲気など、もっと見えればと思ったんですけど・・・なんだか2時間テレビドラマ的。奥行きが欲しかったな。


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「カワサキのカワって、どっちのカワ?三本線か、それとも『河童』の河?」
「じゃあ・・・カッパのカワ。」
「じゃあ、って(汗)」
今思えば、こんなやり取りにも伏線があった。


(ネタバレです!注意)

大学進学のため仙台に引っ越した椎名(濱田岳)は、アパートの奇妙な隣人(瑛太)と出くわす。彼は、椎名に「隣人の隣人のブータン人」のために、本屋に行って「広辞苑」を盗もうと言い出すが・・・


誰も自分のことを知らない土地、新しい友人・・・青年が単身で仙台にやってきて生活するシーンは、どこか期待と不安が入り混じった匂いがして、自分自身のことを思い出させる。椎名の歌うボブ・ディラン「風に吹かれて」が妙にマッチする。

河崎(瑛太)は、ブータン人・ドルジとその彼女・琴美の話を聞かせる。神様ボブ・ディラン、アヒルと鴨の違い、シャーロンとマーロンの話・・・椎名は河崎・ドルジ・琴美の3人の物語にすっかり入り込んでいた。


しかし・・・ドルジと琴美のモノクロシーンを観ているときに、なぜかズレてるような違和感を覚えたのだが、こんな結末だったのか。


仙台は、私にとっても懐かしい場所だ。山形市からは1時間もあれば仙台に着く。映画に登場する新幹線、仙台駅、バス停・・・郷愁にも似た気持ちだった。ところが、よそから来た人間にとっては全く違うものになる。東京からやってきた濱田もそうだが、特に、グータン人には言葉も通じない未知の土地。不安感の方が大きいかもしれない。そんななかでめぐり合った友人や恋人は、とっても重要な、文字通りかけがえのない存在なる。


でもそれが奪われてしまったら・・・?


瑛太には本当に驚かされた。すらりとした長い手足やよどみない日本語も、一気に外国人のように見えるから不思議だ。いや、そういう先入観を持ってすれば・・・そのように見えてしまうのか?自分自身、それが悲しかった。自分も、そういう「フィルター」を持って観ていたということに他ならないから。


大事な人を失い、復讐に生きる彼は、「河崎」になろうとした。その変貌は見事でぞっとする。そして、悲しい。
「外国人だってわかってたら、耳を貸さなかっただろう?」
よそ者であるがゆえに、ドルジはわかっていた。そして圧倒的な疎外感と絶望は悲しいほどに彼を変えた。


観終わったあと、身震いしてしまった。久しぶりにこんな秀作を観た。
登場する役者陣もスゴイ。瑛太はその声の張り方と言い、化け方と言い、彼でなかったらできなかったのではないかと思わせる。少ししか登場しない松田龍平も存在感は十分。濱田岳もずいぶんちっちゃい子だなと思ったが、彼の出す素朴さや面白みが生きている。「これ、広辞苑じゃないよ、広辞林だよ!」には、思わず声を出して笑ってしまった。この展開を原作ではどのように文章にされているのかも興味深い。


しかし・・・日本人の愚行が悲しくて、後味が寂しすぎて、やりきれない。
ヒトが死にすぎではないかな。


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「あんた、ツイてるね。」
このキャッチコピーに惹かれて行きました。ツイてる、ツイてない・・・日常でも良く使う言葉ですが、神様が憑くという意味で使ってる人は少ないでしょう。


時は幕末、才能はあるものの出世からは程遠い貧乏侍の別所彦四郎(妻夫木聡)は、誤って「三巡神社」に参拝してしまう。すると、翌日から、ツイてないことが・・・なんと彦四郎は貧乏神、疫病神、死神に取り憑かれてしまうというのだ。困った彦四郎は、貧乏神(西田敏行)から「宿がえ」により災厄を他人に転嫁させることが出来ると聞き・・・原作浅田次郎、監督降旗康男。


神様がそれぞれ己の役柄に合わず個性的。貧乏神は福福しく、疫病神は頑丈な相撲取り、そして死神には死と最も縁遠いところにいそうな女の子。そして憑かれた彦四郎の人柄に惹かれてゆく。


コミカルな話で終始するかと思いきや、終わってみれば幕末という時世の人の身の処し方も考えさせられる。才能やプライドはあれど、時代にそぐわず身をもてあましてしまう若者は、現代にも通じる。友人は新しい国作りに奔走する中、彦四郎はどうしたらいいかわからない。しかし死神に憑かれたとき、初めて自分の生き様、死に様を考えるようになる。どんなふうな気持ちを持って死んでいきたいか・・・人は、死を意識してはじめて、生きるということを真剣に考えるのかも知れない。


いまやテレビで目にしない日はないツマブキくん。映画も立て続けに出てますね。
脇を固めるベテランの役者陣が素晴らしい。貧乏神の西田敏行、ソバ屋に香川照之、主人公の兄に佐々木蔵乃介・・・さすがです。香川さんは「キサラギ」など最近見かけますが、シリアスな役からコミカルな役まで、カメレオン俳優ですね。竹中直人のような路線なのかなあ?
それから、子役。死神のあの子はJOMOのCMに出てるあの女の子だよねえ。子役は演技が上手い。


米米クラブの歌「御利益」が楽しかった。


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