2018年8月23日(木)午後0時4分 長野県駒ヶ根市


 路地へ入るように見て回りたい。所々レンガ舗装となっており、いい雰囲気を見せてくれる。
なぎ「…これ、店あるか?」
もも「なんかやってなさそう。」


 しかし軒並み、店が開いていない。確かに下調べはあまりしていなかったが、臨時休業ならばどうにもならない。
さく「他…、当たろうよ。まだ時間あるんだし。」
もも「そうよね?」


 国道153号の現道に出てきた。長野県内の交差点標識は市町村名も併記され、裏面は英語のみで表記されるのが多い。
めぐ「これもね…。」
もも「いいから店を探しなさい。」


 商工会議所にバスターミナルが隣接しており、各地への高速路線が発着する。後で調べれば市内循環バスは廃止されたといい、一般路線は実質的にないようなもの。


 それにしても店が開いていない。そればかりか、車はそこそこ走っていながら人を見かけない。こうなると、時間がなくなってくるだけ。
もも「また…、後で調べれば出てくるんだろうけどさ?」
さく「あれでまだ乗り続けるよりいいでしょ、気分転換。」


 インター通りと交差。文字どおり駒ヶ根インターが近く、店は多くなるはず。
なぎ「賭けるか…。」
もも「なかったらどうすんのよ。」


 結局ここもダメ。8月下旬の木曜日、特に行事があるわけではなさそうだ。
めぐ「なんとなくだけど、裏で何か合わせたような気がする。」
さく「もう、多分ないよ。」


 こうなれば駅に戻るしかないだろう。気づけば、駅からもそれなりに離れてしまっている。飯田線は総じて列車本数が少なく、1本でも逃せば挽回できないのが苦しい。
もも「ってかさ?こんな荷物も持ち歩いて。」
さく「するしかないよ、1時間半だけロッカーなんかもったいない。」
なぎ「…にしてもいないな。」


 駅前の『アルパ』にスーパーがあるので、探そうか…。
さく「これでいいじゃん。」
めぐ「でもなんでやってなかったかな…?」


 建物は2階以上が駒ヶ根市の公共施設を兼ねており、フリースペースに椅子とテーブルがあった。
さく「いいじゃん、ここで食べよう。」


(現)特製ソースかつ丼(マルトシ生鮮食品館) 税抜598円
 厚切りカツをソースに潜らせ、千切りキャベツを敷くのが駒ヶ根方式。味もさることながら、食べ応え十分。専門店などが軒並み休業状態だったので、かえって価格が抑えられたのは皮肉。
もも「…もっと思いつかない?」
さく「美味しいのって、案外形にしにくいんだよ。今更だけど。」
もも「本当、…ないもん。」


(現)健康ミネラルむぎ茶(伊藤園) 税抜74円
 同時に水分も"補給"しておいた。では小休憩と…。
めぐ「トイレいい?」
さく「あ、じゃあここで済ませてよ。」

 ここから先は状況も厳しくなってくる。トイレを済ませて、駅に戻ろう。
なぎ「結果オーライでよかったろ。」
めぐ「まあ、メモできてなかったのもあったし。」
もも「どういう理屈よ。」


 およそ20分を残し、駒ヶ根の駅に戻ってきた。残暑もあるので、これ以上出歩いても意味はないだろう。
さく「アイスあるけど。」
なぎ「ああ、じゃあもらおうか。」


(現)爽・冷凍みかん(ロッテ) 税抜85円
 大昔の鉄道旅行では冷凍みかんが定番だったという。意識したわけでなかったが、そもそも"シャーベット"なのだから"冷凍"されているのが前提のはず。時間が経過して少々緩まり、ソフローズンみたいになった。
めぐ「帰ったら調べ直すよ。」
もも「わかってるならいいの。」


34.駒ヶ根13:34発→飯田14:40着 普通214M/天竜峡行き クモハ313-3013
 飯田線北部の南下を再開しよう。来たのは同様の313系3000番台だが、ワンマン運転ではない列車。車内は空きが多い。
めぐ「…あれ、前乗ったっけ?」
なぎ「何、問題でも?」
めぐ「問題ないけど。」


 引き続き周囲が開けて、奥に山々のそびえる風景は続く。よく調べれば、過去に下山村から天竜峡まで乗っていた列車である。
めぐ「向こうって谷になってるのかな?」
さく「どうなんだろうね?」
もも「いや…、土地勘ないなら調べなさいって。帰ってからさ。」


 国道153号と並走しつつ、急勾配ときついカーブをゆっくり進む。南部(天竜峡から豊橋)と同様に私鉄(伊那電気鉄道)を国有化させたものであり、駅間距離の短さと共に飯田線の特徴となっている。


 15分ほどで飯島に停車。谷の向こうに山々がそびえるような景色となった。以後、また急な下り坂とカーブが続く。
なぎ「飽きないよな。」
めぐ「だから、忙しくて。」


 駅間の長い区間では、車掌が巡回して降車駅の乗車券等を回収。やがて車窓に、なだらかな農村風景が広がる。
さく「…見たっけ?」
もも「高速とは違うでしょ。」


 まだ標高は600mを越えている飯田線。山あり谷あり、ダイナミックな絶景だ。
もも「いいけど、そう簡単に絶景なんて連発してもどうよ?」
めぐ「…富士山五合目ぐらいじゃなきゃダメ?」
さく「他もあるでしょ。」


 313系はさらに段々と下っていく。自然の多い中、周囲に家も少ない。
めぐ「台地でよかったっけ?」
なぎ「わからんなら調べる。」


 視界は開けたり、木々に覆われたり。北部は北部で変化に富む飯田線。午後2時になり、車内は高校生らしき姿が多くなる。
さく「なんか一気に現実。」
もも「案外昔から、やってること変わんないでしょ。」
(つづく)